寺子屋塾

ハンス・ロスリング『ファクトフルネス』

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事実を見分ける練習のできる『ファクトフルネス』という本

事実を見分ける練習のできる『ファクトフルネス』という本

2022/08/05

ここしばらく、情報リテラシーについて、

とりわけ、事実と認識を区別することが

いかに大切であるかという話を続けて書いています。

 

8/1に書いたblog記事

ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』より

(今日の名言・その29)

では、20世紀最大の天才哲学者の言葉も

紹介しました。

 

とはいえ、この世の中に

事実と認識を区別できる思考回路を身につけようと、

難解な『論理哲学論考』を紐解いてみようと

おもわれるような物好きな御方が

たくさん居られるようにはおもえません。

 

それで、金曜は読書関連の話題を投稿しているので、

今日は、日本で100万部、全世界では300万部売れ

紀伊國屋書店の2020年書籍年間ベストセラーで

9位になった

ハンス・ロスリング『ファクトフルネス』

ご紹介しようとおもいます。

 

著者のハンス・ロスリングは、医師であり

公衆衛生の専門家でもありましたが、

本書の完成を見ずして2017年に亡くなり、

本書を仕上げ出版にこぎつけたのは、

妻のアンナと息子のオーラがいたからでした。

 

2014年にTEDでスピーチしている映像が

こちらにあるので、ご覧になってみて下さい。

 

副題に「10の思い込みを乗り越え、データを基に

世界を正しく見る習慣」とあるんですが、

本書のタイトルが「マインドフルネス」を

意識してつけられたものであると気づかれた方は

きっと少なくないことでしょう。

 

本書のイントロダクションには、つぎのように

「チンパンジークイズ」と称された
13の三択形式のクイズが載っています。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

質問①    現在低所得国に暮らす女性の何割が、初等教育を修了するでしょう?

A. 20%

B. 40%

C. 60%

 

質問②    世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?

A. 低所得国

B. 中所得国

C. 高所得国

 

質問③    世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?

A. 約二倍

B. あまり変わらない

C. 半分

 

質問④    世界の平均寿命はおよそ何歳でしょう?

A. 50歳

B. 60歳

C. 70歳

 

質問⑤    15歳未満の子どもは、現在世界に約20億人います。国連の予測によると、2100年に子どもの数は約何人になるでしょう?

A. 40億人

B. 30億人

C. 20億人

 

質問⑥    国連の予測によると、2100年には今より人口が40億人増えるとされています。その主な理由は何でしょう?

A. 子ども(15歳未満)が増えるから

B. 大人(15~74歳)が増えるから

C. 後期高齢者(75歳以上)が増えるから

 

質問⑦    自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどう変わったでしょう?

A. 二倍以上になった

B. あまり変わっていない

C. 半分以下になった

 

質問⑧    現在、世界には約70億人います。その内訳として正しいのはどれでしょう?

A. アジア30億人、欧州10億人、アフリカ10億人、アメリカ20億人

B. アジア30億人、欧州10億人、アフリカ20億人、アメリカ10億人

C. アジア40億人、欧州10億人、アフリカ10億人、アメリカ10億人

 

質問⑨    世界の1歳児の中で、何らかの病気に対して予防接種を受けている子どもはどのくらいいるでしょう?

A. 20%

B. 50%

C. 80%

 

質問⑩    世界中の30歳男性は、平均10年間の学校教育を受けています。同じ年の女性は何年間学校教育を受けているでしょう?

A. 9年

B. 6年

C. 3年

 

質問⑪    1996年には、トラ・ジャイアントパンダ・クロサイはいずれも絶滅危惧種として指定されていました。この3つのうち、当時よりも絶滅の危機にひんしている動物はいくついるでしょう?

A. 2つ

B. 1つ

C. 0

 

質問⑫    いくらかでも電気が使える人は、世界にはどれくらいいるでしょう?

A. 20%

B. 50%

C. 80%

 

質問⑬    グローバルな気候の専門家は、これからの100年で、地球の平均気温はどうなると考えているでしょう?

A. 暖かくなる

B. 変わらない

C. 寒くなる

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こちらのページをアクセスすると、最後の問題を除く

12問に応答できるようになっていますので、

ぜひやってみてください。

 

本書にはチンパンジー君に勝てた人は

全体の10%しかないとあるんですが、

あなたはいかがでしたか?

 

6/24のblogで紹介した

佐渡島庸平さんの『観察力の鍛え方』では、

「認知バイアス」という表現になっていましたが、

わたしたちは色眼鏡をかけてモノを見ているのに、

自分に見えているものがあたかも真実のように

おもいこんでいるわけですね。

 

また、本書は『ファクトフルネス』(事実)という

タイトルを付されていますが、

この本に載っていることが

すべて正しい事実であるかというと、

けっしてそういうわけではありません。

 

むしろ、この著者自身がさまざまな

認知バイアスに陥っていることがよく分かるので、

わたしはむしろ反面教師的に読んだんですが、

本書を繰り返し読むだけでは
事実と認識を区別できる思考回路を

身につけることは残念ながら期待できないでしょう。

 

頭で理解しているということと、

そのことが実際に実践できているというのは、

別のことですから。

 

わたしはよく売れた本については、

☆ひとつ、☆☆ふたつといった

低いレビューをよく見るようにしているんですが、

本書も低いレビューの方に

けっこう参考になる意見がたくさんあったので、

読んでみて下さい。

 

『ファクトフルネス』を訳された上杉さんが作られた

こちらのページには、本書に付された

7万字の脚注をもとに、本書に対する批判に対する

コメントも書かれているなど、

参考になる情報がいろいろ紹介されています。

 

結局、そうした思考回路を身につけるためには、
日々の生活のなかに、

事実と認識を区別する訓練を組み込んで

日常化していく工夫を実践しているかどうか

大事だからです。

 

詳しくはこちらの記事などをご覧頂きたいのですが、
何故、らくだメソッドの学習では、

1日1枚のプリント学習を

自ら決めて淡々と続けるスタイルになっているのか、

何故、学習記録表には、やったプリントの番号、

かかった時間、ミスの数という

「事実」のみを記入するようにしているのか、

そうしたことを、毎日行うようにすることで

どういう力が育つことが期待できるか

考えてみて頂ければ幸いです。

 

 

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