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宮本常一の父・善十郎が息子に語った10か条(今日の名言・その50)

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宮本常一の父・善十郎が息子に語った10か条(今日の名言・その50)

宮本常一の父・善十郎が息子に語った10か条(今日の名言・その50)

2022/12/26

 

 一、汽車へ乗ったら窓から外をよく見よ、田や畑に何が植えられているか、育ちがよいかわるいか、村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうこともよく見ることだ。駅へついたら人の乗りおりに注意せよ、そしてどういう服装をしているかに気をつけよ。また、駅の荷置場にどういう荷がおかれているかをよく見よ。そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、よく働くところかそうでないかよくわかる。

 

 二、村でも町でも新しくたずねていったところはかならず高いところへ上ってみよ、そして方向を知り、目立つものを見よ。峠の上で村を見おろすようなことがあったら、お宮の森やお寺や目につくものをまず見、家のあり方や田畑のあり方を見、周囲の山々を見ておけ、そして山の上で目をひいたものがあったら、そこへはかならずいって見ることだ。高いところでよく見ておいたら道にまようようなことはほとんどない。

 

 三、金があったら、その土地の名物や料理はたべておくのがよい。その土地の暮らしの高さがわかるものだ。

 

 四、時間のゆとりがあったら、できるだけ歩いてみることだ。いろいろのことを教えられる。

 

 五、金というものは儲けるのはそんなにむずかしくない。しかし使うのがむずかしい。それだけは忘れぬように。

 

 六、私はおまえを思うように勉強させてやることができない。だからおまえには何も注文しない。しかし身体は大切にせよ。三十歳まではおまえを勘当したつもりでいる。しかし三十すぎたら親のあることを思い出せ。

 

 七、ただし病気になったり、自分で解決のつかないようなことがあったら、郷里へ戻ってこい、親はいつでも待っている。

 

 八、これからさきは子が親に孝行する時代ではない。親が子に孝行する時代だ。そうしないと世の中はよくならぬ。

 

 九、自分でよいと思ったことはやってみよ、それで失敗したからといって、親は責めはしない。

 

 十、人の見残したものを見るようにせよ。その中にいつも大事なものがあるはずだ。あせることはない。自分のえらんだ道をしっかり歩いていくことだ。

 

※宮本善十郎(宮本常一の父)が息子に語った十か条〔『民俗学の旅』所収〕

※宮本常一(1907〜1981・山口県周防大島生まれの民俗学者・社会教育者)

 

 

『忘れられた日本人』などの著作で知られる

宮本常一は、二十代から亡くなる直前まで

日本各地を旅して民俗学の発展に大きな足跡を残した

稀代のフィールドワーカーというべき人物。


彼が15歳で初めて家を出て故郷を離れ、

大阪へ勉強しに行くという時に、

父親・善十郎が「これだけは忘れぬように」と

メモをとらせたと伝えられています。

 

善十郎は農家の生まれで、学校にはろくに行かず、

農家だけでは食べていけないので

出稼ぎをして方々に出かけ、

何とフィジー島にも行ったらしく、

そうした経験から生まれてきた言葉とのこと。

 

フィールドワーカーの先駆けのような父にして、

その子ありという感じですね。

 

常一は生涯この言葉を肝に銘じて

旅をしていたと伝えられています。

 

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