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「考える」と「悩む」を混同しない

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「考える」と「悩む」を混同しない

「考える」と「悩む」を混同しない

2023/01/13

金曜は読書関連の話題を投稿しています。

 

昨日は「考える」がテーマの記事を書いたんですが、
2022年のふりかえり「年間読書ベスト24」
⑤に挙げた『知的戦闘力を高める 独学の技法』の

著者である山口周さんの

『外資系コンサルの知的生産術』
「考える」と「悩む」を混同しない

という話が書かれていたのをおもいだしたので、

今日はそのことについて。

 

昨年は山口周さんの本を10冊以上読んだことは

こちらの記事にも書きました。

 


『外資系コンサルの知的生産術』

2015年に光文社新書から出版された1冊で、

本書の内容についての説明が

カバーの袖に次のように書かれています。

 

筆者は、20代を広告代理店で、

30代を外資系のコンサルティングファームで

過ごしながら、これらの職場で研修トレーナーとして、

さらに30代半ば以降は、これにビジネススクールの

ファカルティという立場も加わって、

おおよそ2000人ほどのビジネスパーソンに対して

「知的生産の技術」を指導してきました。

この経験から痛いほどわかったのは、

どんなにピカピカの学歴を持った頭脳優秀な人材でも、

「動き方」を知らないとまったく知的成果を

生み出すことができない、ということです。

こういった人たちに対して何より必要なのは、

「思考技術」のトレーニングではなく、

具体的に手や足をどう動かすか?という「行動技術」、

つまりは「心得」のトレーニングなんですね。

(太字は井上)

 

この山口さんの書かれている話は、

教育の仕事に40年近く関わってきたわたしにも

まったく同感です。

 

たとえば、進学塾で小中学生に

算数・数学を教えていたとき、

単元の意味や問題の解き方を懇切丁寧に教えて、

その場はやり方をアタマで分かっても、

1週間後にそれを確認すると、

まったく問題が解けるようになっていない

多くの子どもたちを見て愕然とすることが

しばしばでした。

 

また、社会人を対象とする

マネジメントやファシリテーションを学ぶ講座の

ガイド役を務めるようになったり、

とくに、ここ10年ちょっとは、

寺子屋塾に入塾する人たちに

大人の人たちが多く占めるようになって以後は、

高学歴で優秀な能力をもち、

「思考技術」について書かれている書物も

一通りは読んでいるのに、それが現実には

ほとんど日常では使えていないという

大脳思考優位な社会人をたくさん見てきたからです。

 

世の中には「どうすればいいか」という

ノウハウを知りたがる人は少なくないのですが、

わたしがそのノウハウを教えたところで、

結局のところ、その通りにやれないというか、

ノウハウの単なるコレクターに

とどまってしまっているからでしょう。

 

問題解決ツールのコレクターになっていませんか?

(つぶやき考現学 No.59)

 

たとえば、ゴルフクラブをたくさん集めたところで、

ゴルフはうまくならないし、

水泳に関する本をどんなに読んで理解を深めても、

それだけで泳ぎ方が

うまくなるわけではありません。

 

結局ゴルフも水泳も、アタマをどんなに働かせても

実際に身体を動かして練習しなければ

上達しませんし、

実際に身体を動かしてやってみてはじめて

ゴルフクラブの違いやアタマの理解を

活かすことができるわけでしょうから。

 

 

皆さん、わかればできると

おもわれているのかもしれませんが、

じつは順序が逆で、

しかも、アタマで「わかる」ことと

カラダで「できる」こととの間には、

現実にとても大きな隔たりがあるわけです。

 

「考える」ということについても

水泳やゴルフとまったく同様であって、

たとえば、寺子屋塾で提供している

重要なプログラムのひとつ、未来デザイン考程は、

自分で問いを立てて、その問いに対し

自分のアタマで考えて答を出すというのは

具体的にどのようにすればできるのか、

自分の手を動かしてやってみる体験学習なんですが、

その考え方の骨子や意義、

具体的な手順などについて丁寧に教えても、

最後までやれる人と

途中で進めなくなってしまう人があります。

 

もちろん、後者に対しては、

何よりもガイド役であるわたし自身の

ファシリテート能力が足らないせいと考え、

毎回説明の仕方を変えたり工夫を重ねてきましたし、

もう20年以上もやっていますので、

ガイド役としての能力はたぶん、

当初の頃に比べれば格段に向上したことでしょう。

 

そういう中でも途中で進めなくなってしまう人が

ある一定の割合で存在していて、

そういう人をよく観察してみると、

単に知識を増やし、

ノウハウのコレクションするだけに止まっていて、

そうしたさまざまあるノウハウの本質について

掴もうとしない人や、

「悩むこと」が「考えること」だと

勘違いしている人が少なくないんですね。

 

たとえば、「考える」ということについて、

具体的にどんなプロセスをたどるのかに着目すれば、

「発散」局面と「収束」局面があるというのが、

昨日の記事に書いた話の骨子なんですが、

テーマを設定し、そのテーマに沿った必要な情報も

それなりに集まっているのに、

なかなか答が見えてこないという場合、

その人の思考力や思考する量について

人と比べて劣っていることはほとんどなく、

「問いの立て方」や「素材情報の集め方」に

課題があるんだと山口さんは書かれていて、

わたしもその通りだとおもうのです。

 

寺子屋塾で行っていることの中核は、

大脳思考優位な方にはなかなか伝わりにくいんですが、

らくだメソッドにしても、未来デザイン考程にしても、

経営ゲームにしても、

まさにアタマで「わかる」ことと

カラダで「できる」こととの間にある大きな隔たりを

具体的にどう縮めていけばいいかについて、

体験的に学べる場所とツールとチャンスの

提供なんですね。

 

よって、思考力をどう高めるかという

ノウハウレベルの話ではなく、

具体的にどう手や足を動かせばいいかが書いてある

この山口さんの本をこうしてオススメする次第です。

 

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