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主知主義と主意主義について(『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』より)

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主知主義と主意主義について(『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』より)

主知主義と主意主義について(『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』より)

2023/12/20

この寺子屋塾ブログでは昨日まで4回にわたって

12/9に名古屋で行われた

【性や恋愛の「なぜ」を考える】

哲学対話イベントに参加したことについて、

レポートを書いてきました。

(その1)

(その2)

(その3)

(その4)

 

それで、昨日の記事で予告したように、

今日からこのブログでは、

このレポートを書く前に書いていた一連の記事、

つまり、

為末さんの『熟達論』についての話と

哲学対話との関連性も意識しつつ、

なぜ、セルフラーニングの場を主宰するわたしが

二村ヒトシさんの著書に注目し、推薦しているのか、

そうした理由なども改めて確認し

記しておきたいとおもいます。

 

そして、11月に24回にわたって連投した

教えない性教育の話題との関連や、

そもそも、わたしが教えない性教育をテーマに

書き始めるきっかけとなった、

春画をテーマとして取りあげた映画を観た話にも

つなげていければと考えているんですが、

もう今年も残り10日足らずになっているので、

来年に持ち越すことになるかもしれません。

 

それで今日の本題は、タイトルに記した通り、

「主知主義と主意主義」についてなんですが、

今からちょうど5年前、

2018年12月に出版された

『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』

第4章 失われた身体を求めて の前半部で

二村さんが「主知主義と主意主義」について

語られている箇所をご紹介することにしました。

 

書かれている内容についてのコメントは

明日書くつもりでいるので、

今日はとりあえず引用のみです。

 

(引用ここから)

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変身する勇気がないと、傷つきから回復できない
二村 いままでの発言の繰り返しになってしまうけど、「傷つく」ことを理由に偶像を目につく場所から撤去させようとする人たちは、本当に傷ついているんだと僕は思うんですよ。それと、傷ついている人をバカにするような論調で批判する逆サイドの人たちも、あれも内心は相当傷ついているから、あんな言い方になるんだと思うんです。そして傷つい ている人たちに「ずっと怒っていても相手はあなたの言うことを聞かないですよ」と言うと、さらに怒られる。

 

千葉 そういう人たちは、自分の傷つきがどういうことなのかを吟味できない状態になっているんじゃないでしょうか。吟味できない状態になっていることを、「本当に」傷ついていると捉えるのかどうかは大きな問題だと思うんです。僕は、その人たちが「本当に」傷ついているのだと言い切るよりは、判断不能になっているというふうに距離を取ったほうがよいと思います。

 

二村 おっしゃるとおりだと思いますが、どんな言葉を使ってそのことを伝えようとして怒られるんですよ。

 

千葉 怒るでしょうね。「自分のことは自分にしかわからない」と思っているから。 

 

二村 人間は自分が信じている物語を生きているので、いま「苦しい」と感じている人は、その物語を書き換えることによってしか幸せになれない。
怒り狂っている人たちというのは、かつては怒ることすらできないくらい抑圧されていた人なんだと思う。それがある日「受けている扱いについて自分は怒ってもいいんだ。自分には怒る自由があるんだ」と気づいて、自分の物語を書き換えた。だから怒れるようになれたこと自体はいいことなんです。問題は、怒りという感情には中毒性があるということです。
宮台さんとの対談(『どうすれば愛しあえるの』)で、主知主義と主意主義の違いを教えてもらいました。主知主義とは、社会が良くなれば人は幸せになるという考えかた。ネトウヨもリベラルの人も、多くは主知主義者なんですね。世の中が悪いから自分は不幸である。だから敵を設定して、そいつらをやっつけて世の中を変えれば自分も幸せになれると思っている。
主意主義は、社会が良いか悪いかと、個人の内面の幸不幸(宮台さんに言わせると、特に愛情や性に関する充実度や苦しみ)は比例しないと考えます。たしかに世の中に、正すべき悪は沢山ある。みんなが楽しく生きられるために世の中のシステムは良くなったほうがいい。けれど世の中が良くなれば人は必ず幸せになれるのかといえば、そうではない。
自分自身が内発的に変わらなければ、世の中がどうあろうが本人は幸せにはなれないわけです。
いくら社会から男女差別がなくなっても、傷つきやすい人が性愛的に救われるわけではない。性愛的に救われるためには、自分で物語を書き換えないといけない。

 

千葉 厄介なのは、傷つきたくないはずなのに、傷ついている状態をまるでアイデンティティであるかのように思ってしまっている状態です。だから、その傷が回復してしまったら、自分じゃなくなるということになってしまう。
僕は『勉強の哲学』で、変身しなければ勉強することにならないと言っていますが、みんな変身したくないわけですよ。だから勉強したくないのと一緒で、自分は傷が癒えてしまったら、いまの自分の怒りというもの、そして、その怒りに基づいて社会と対峙していることの不幸な英雄性とでも言うべきものが失われることへの抵抗感があると思うんですね。

 

二村 『勉強の哲学』で書かれたように、周囲とノリが合わなくなる (キモくなる)勇気を持たないと、勉強はできない。それと同じように、変身する勇気がないと、傷つきから回復することもできない。

 

千葉 「勉強の哲学』は、二村さんの『すべてはモテるためである』から示唆を受けているんです。二村さんの本は、他者との関係の中で変身しなければ、愛し愛されることはできないという話ですよね。

 

二村 そもそもセックスもできないだろうと(笑)。でも、やはり、それをどのように語るかが難しい。「あなたは傷が深いから、変わりたくないんだよね」と言うと侮辱になってしまう。

 

千葉 それは、傷に基づくアイデンティティを認めているわけだから、侮辱というより、尊重だとも言えると思いますけどね。むしろ、「あなたは自分の傷がよくわからなくなっていますね?」と問うのが、残酷な言葉なんでしょう。そう言ったら激怒するのかな。

 

柴田 当然激怒もされますが、「話を逸らすな」と返されますよ。私はまさに千葉さんのいうような言い方をしてきて、そのたびに「お前は話をすり替えている」と言われ続けてますから。きっと、本人にとってクリティカルだからこそ、話がすり替わったことにしたいんです。そうすれば、傷ついたままでいられるから。一種の防衛戦略なんでしょうね。

 

二村 おそらく、そういうことは世界中で起きているよね。被害者に感情移入しすぎる正義の人も、被害者意識があるからこそ強がって差別する側につく人も、自分の感情を根拠にひたすら相手を攻撃する。でも、自分自身が変身することは考えない。

 

千葉 フランスの思想家ミシェル・フーコーは、晩年に、古代ギリシャやローマの人たちが、自己をどのように統御していたのか、ということを主題にした講義を行っています。そのなかでフーコーは、古代的な哲学の捉え方と、近代的な哲学の捉え方とを分けています。 古代の哲学では、魂を変えないと真理に到達できないという発想だったんですよ。だから、自己陶冶と認識の変化というのは必ず一体でした。ところが、近代になって自然科学が発達していくことで、自分自身の問題と認識の問題が分けられてしまう。そうすると、自分は変わらなくても、頭を使えば真理に到達できるという話になる。デカルトから先はそうなるわけです。それがまさに主知主義というもので、現代はますますそれが強くなっている。むろん、自分を変えようという自己啓発本も山ほどあるけれど、そういうものは あまりに表面的で、深いレベルの主体のあり方には届かないんですね。

 

柴田 自分が変わらないで、世界だけ革命できるというのは、ダメな革命家の発想ですよね。本当に革命するのであれば、自分まで革命されるわけだから。

 

千葉 そう。自分だけ別枠になっている。自分で自分は傷ついていると思っているのだか ら傷ついているのだ、ということは動かない。そして自分の傷に基づく権利主張によって、 公共性を組織していく方向に社会が大きく向かっている。だから、そこにツッコミを入れると、反公共的な態度だということになり、いろいろな意味で制裁を受ける方向に向かっている気がしますね。

 

千葉雅也・二村ヒトシ・柴田英里『欲望会議 超ポリコレ宣言』第4章 失われた身体を求めて(P.188〜193)より

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(引用ここまで)

 

ちなみに、冒頭の写真は単行本ですが、本書は

2021年12月に『欲望会議 性とポリコレの哲学』

と改題されて角川ソフィア文庫に入り、

入手しやすくなりました。

 

この続きはまた明日に!

 

【参考関連記事】

千葉雅也『勉強とは喪失することです』(今日の名言・その46)

 

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