寺子屋塾

「自己決定」「自己責任」って言葉の真意がなぜ伝わりにくいか(その7)

お問い合わせはこちら

「自己決定」「自己責任」って言葉の真意がなぜ伝わりにくいか(その7)

「自己決定」「自己責任」って言葉の真意がなぜ伝わりにくいか(その7)

2024/04/18

昨日投稿した記事の続きです。

 

本日の記事内容は、昨日ご紹介した

らくだメソッドの開発者・平井雷太さんが、

弁護士の鈴木利廣さんに

インタビューされた記事の続き2回目なので、

昨日の(その6)を読まれたうえで

本日分の記事をご覧いただければ、

わたしがなぜここに

このような投稿をしているのか、

目的や経緯などは概ねご理解戴けるとおもいます。

 

ただ、4/12から「自己決定」「自己責任」って

言葉の真意がなぜ伝わりにくいか

をテーマに書き始め、

この記事が7回目になっているので、

未読記事がある方は、そちらも併せてご覧ください。

「自己決定」「自己責任」って言葉の真意がなぜ伝わりにくいか(その1)

「自己決定」「自己責任」って言葉の真意がなぜ伝わりにくいか(その2)

「自己決定」「自己責任」って言葉の真意がなぜ伝わりにくいか(その3)

「自己決定」「自己責任」って言葉の真意がなぜ伝わりにくいか(その4)

「自己決定」「自己責任」って言葉の真意がなぜ伝わりにくいか(その5)

「自己決定」「自己責任」って言葉の真意がなぜ伝わりにくいか(その6)

 

 

それでは、弁護士・鈴木利廣さんへの

インタビュー記事2回目をどうぞ!


(引用ここから)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

●見えなかった問題が表面化する 

———鈴木さんが子どもへの関わり方を変えていくことは、無理なくスムーズにできたんですか?

鈴木 親なんだからこちらの言うことを聞け、みたいなことはやめようと思っても、 なかやめられないですね。今でもムカッとすることがあるわけですから。そんななかで、なんとか会話を成立させていこうと努力することになります。そんなエピソードは山ほどあるんですが……。女房との関係がこじれて、1984年の暮れから正月にかけて、1週間家に帰らなかったことがありました。

 

———家に帰らず、何をしていたんですか?

鈴木 ホテルに一人で泊まって家族というものを一生懸命考えていました。 

家を出るときに女房に「10年間いっしょに暮らしたと言ったって、そんなものは実にもろいものだね」と話すと、彼女はこう言ったんです。「あなたがもろいと言っている信頼関係の中身は何なの?信頼関係が崩れたんじゃなくて、そんなものは最初からなかったじゃない」―――ハッとしましたね。医者と患者の信頼関係というのは、自分の体のことをともに考え、情報と決断を共有していくということなんですが、彼女とぼくとの間ではどうだったのだろうかと考えてしまいました。 

 

———鈴木さんは鈴木さんなりに奥さんや子どもたちのことを考えていたと思っていたわけでしょ。しかし、現実はそうではなかったということですか?

鈴木 有利な立場にある人が、そうでない人に対して信頼関係を求めるというのは、 「おれを信用しろ」「黙っておれについてこい」ということなんです。それは信頼関係とは呼べない。被抑圧者や少数者に対して、強者の立場にいるままでは信頼関係は成立しないんです。同じ基盤でいっしょに悩みましょう、というのが本当の信頼関係なんです。

 

———自分に都合の悪いこともさらけだして、相手と情報を共有する。それをしない人が強者なんですね。 

鈴木 そうですね。さらけだすと何かが崩れてしまうと思ってしまうから、情報を外に出さない。 

 

———でもそんな人をふつうは強者とは考えないですね。 

鈴木 患者の権利宣言(案)を出したときに、ぼくはどういう局面で強者なのか、ぼくが強者だとすると弱者や被抑圧者はどこにいるのか、そして女房にとっての自己決定権とは何なのか、一時期すごく考えました。

 

———家庭のなかで具体的にはどんなことがあったんですか?

鈴木 当時のぼくは自分が何を考えているか女房には話さず、それでいて以心伝心を求めていた。自分を語らなくても信頼関係が築けるという空想がありました。 仕事上の悩みを家庭に持ち込まないというのは伝統的な日本の家庭論ですが、その価値観は、子どもたちに注射というつらいことはあらかじめ伝えないということと根は同じなんです。つらいことを伝えないでおいて、それを乗り越えるという図式は成り立つわけがない。 

インフォメーションが特に必要なのは、悲しいこと、危険なこと、不幸なことなんです。これこそが、専門家や大人の責任として、きちんと言わなければならない情報なんです。

 

———鈴木さんは仕事上の悩みをいっさい言わなかった?

鈴木 仕事を家庭に持ち込まないことはいいことだと思っていたんです。女房は女房で家庭や子どもの教育のことでいろいろ悩んでいるだろうから、それ以上ぼくの悩みを背負わせることはないのではないかと。 

でも、問題はこれだけではありませんでした。子どもへの関わり方をめぐって、そのころ女房とすごい論争をしていたからです。 

私が自己決定権ということを意識するようになったことで、子どもたちの言うことをきちんと聞いて、彼らの選択を尊重していくやり方でやっていこう、と提案しても彼女は納得しません。「あなたはそう言うけれど、実際にはそんなことは不可能よ。日常生活で子どものやり方を認めていたら、家のなかがメチャクチャになる。私は自分の時間を持とうとしてもできなくなる」って。 

 

———子どもが自己決定権を持つことで、奥さんと子どもたちとの関係にも波及し、今まで見えなかった問題が表面化してきたわけですね。

鈴木 子どもの自己決定権を認めていけば、子どもが自分の部屋を片づけるということは子どもの問題です。そうすると、女房にしてみれば、ゴチャゴチャした家のなかで黙って耐えているか、自分が手を出して片づけるか、そのどちらかしかなくなってしまう。そんなことを考えるより「片づけなさい」と命令したほうが簡単。それによって女房も自分の時間が確保できるし、家のなかもきれいになると考えるわけです。 しかし、彼女は自己決定できる立場にいなかったわけです。家のなかでは誰が何を決定するかというルールがなんとなく決まっていて、日常はパターナリスティック(父権温情主義的)な決定で成立していたわけです。それは自己決定というものではなかった。ぼくは日常子どもと話し合いをしているわけではないから、今まで子どもに自己決定させるということがどんなに大変なことかということを知らなかったんです。 

女房はそこを知っていますから、「子どもの意見を尊重していたらとても生活なんてできない」となる。そのことがつい最近、上の子(小6)と女房とのトラブルになりました。子どもが家事の手伝いをきちんとしない、と。 

ちょっと話がそれるんですが、女房はぼくの仕事を手伝うようになったんです。彼女とのやりとりのなかで、ぼくは女房が経済的に自立することがものすごく大事であるということに気づきました。彼女がぼくとの関係で受け身にならざるを得ないのは、ぼくが一家の主人で、ぼくの収入で家族が生活しているし、ぼくの健康が一家の大事になっているということがある。ですから、彼女の経済的自立が大事なんです。そういうことで女房が経済的自立をやればやるほどね、家のなかのことでも子どもの役割がすごく増えてくる。食事のあと片づけとか、朝ごはんを作るとか。そうすると子どもは忙しくなる。子どもは子どもでやりたいことがありますから、パターナリスティックな決定に従ってあと片づけをするといったことに異論を申し立てるわけです。自己決定という話だったのに、約束が違うじゃないか、と。それに対して女房は、「あんたなんか出て行きなさい」となるわけです。忙しさのなかで、コミュニケーションを破壊する言動が出て、子どもはものすごくグサッとくる。「私は出て行くところなんてないのにひどい」「私は愛されていないんだ」と子どもが部屋に鍵をかけて閉じこもるということがありました。 

 

———それを鈴木さんは黙ってみていたのですか。 

鈴木 ぼくはどういうふうに解決したらいいのかわからない。とにかくその日のうちに解決するのが大事だろうと、まず子どもと1時間ぐらい話をしました。女房とも「親とか子どもとかというのではなくて、1人の人間として子どもと接してみたほうがいいんじゃないか」と話して、夜遅くまで女房は子どもと話し合いました。夜10時らいまで。 

ですから、家庭のなかで自己決定ということを推進すればするほど、今までは平穏に、水面下で誰かが我慢してうまくいっていたことがうまくいかなくなるんです。でも、そのことによってまさに足元が固まってくる。そんな感じがしていましたね。家庭のなかで、自己決定に基づく新しいルールというのができつつあるという気がしますけど…….。 (続く)

 

『平井雷太インタビュー集 教育は越境する』(ニュースクール叢書3)より

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(引用ここまで)

 

外部リンクになるんですが、鈴木利廣さんの経歴は、

現在所属されている弁護士事務所

すずかけ法律事務所のこちらのページからどうぞ。

 

ちなみに、引用元の冊子

『平井雷太インタビュー集 教育は越境する』(ニュースクール叢書3)

平井雷太さんのネットワークに

関わるメンバーが編集し、

加藤哲夫さんの出版社カタツムリ社から発刊された

ニュースクール叢書シリーズ10冊のうちの1冊で、

3冊目にあたるこの冊子は、

平井さんのインタビュー記事や

平井さんが主催された集まりで話された講義録の

5名分が収められたものです。

 

このシリーズのブックレットが

どういう経緯でつくられたものかについては、

講演録『教えない教育、治さない医療』後半で、

平井雷太さんが紹介している箇所があるので、

関心のある方は次の記事をご覧ください。

講演録『教えない教育、治さない医療』(その8)

 

 

この続きは明日の記事にて紹介する予定です。(^^)/

 

※冒頭の画像は冊子の表紙、裏表紙に載っている

 鈴木利廣さんの似顔絵(作者は不明)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

●2021.9.1~2023.12.31記事タイトル一覧は

 こちらの記事(旧ブログ)からどうぞ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
☆寺子屋塾に関連するイベントのご案内☆

 4/21(日) 第22回 易経基礎講座
 5/3(金・祝) 寺子屋デイ2024①
 5/12(日) 第26回経営ゲーム塾Bコース

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◎らくだメソッド無料体験学習(1週間)

 詳細についてはこちらの記事をどうぞ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。