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他人を見捨てる「日本社会」なぜ助け合わないのか?(その1)

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他人を見捨てる「日本社会」なぜ助け合わないのか?(その1)

他人を見捨てる「日本社会」なぜ助け合わないのか?(その1)

2023/09/28

9/22に投稿した記事で、

文字起こしの実地練習を皆さんに提案するために、
宮台真司さんと波頭亮さんの対話動画を

2本紹介しました。

 

それで、YouTubeにアップされている

宮台真司さんと波頭亮さんの対話動画は、

実はもう1本あります。

 

【宮台真司】"他人を見捨てる"「日本社会」

なぜ助け合わないのか?

2023年5月19日に公開されているので、

3本のうちでは一番新しいものです。

 

9/22の記事に、

YouTubeの文字起こし機能は精度が高くなく、

半分以上デタラメだと書いたんですが、

動画から文字起こしされた

テキストデータを実際に覗いてみると、

少し前よりも機能がだいぶ向上していて、

8〜9割正確に表現されていました。

 

映像のなかに字幕やテロップも

丁寧につけてあったので、

聞き取る力をつけるための訓練には

あまりならないんですが、

このレベルだったら、それほど時間をかけずとも

文字起こし原稿ができるように感じたので、

今日と明日の2回に分けて、

この動画を文字起こししたテキストを

わたしの方で手を加え、読める講義録原稿にして

投稿しようとおもいたちました。

 

以下、動画の内容を文字起こししたデータから

わたしが手を加えて作成した講義録です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
波頭:本日のゲスト宮台真司さんです。もうこのRethinkでの対談は3度目で、社会現象だけではなくて、思想だったり、政治経済、あるいは文化芸術まで、社会学者としても特に守備範囲の広い方で、思想性の強いお話をして下さいます。安倍元首相の襲撃事件だったり、その後宮台さんご自身も学内でそういう暴行に遭われたりとか、かつて日本ではなかったような、その荒れた事件が多発してます。こういう中で日本ってこれからどうしていけばいいんだろうということを、今日いろいろとお話を伺おうと思ってます。私も楽しみにしてまいりました。

 

波頭:日本っていうのは、今まあ調子いい国とは誰も思ってないでしょうけれども、どれぐらい調子悪いかっていうと、もう本当に歴史的なレベルです。国連の加盟国・地域が190ある中で、25年から30年、「失われた30年」って言いますけれども、最も成長してないワースト5の1つです。この間、日本というのはどういう経済政策とってきたかっていうと法人税減税、富裕層減税をして、その分、消費税で国民からごっそり巻き上げてる。完全に植民地経済ですよね。

 

宮台:日本だけがなぜか産業構造改革ができない。その理由は、既得利益を動かせないからで、既得権益を動かさないその方向の一つが、いわば法人減税を消費税で穴埋めする、従来なら退場を迫られる重厚長大産業の正社員の地位を守るために、固定費を下げるべく、若年層からどんどん非正規化していくといったような、非常に反社会的な行動を、企業が軒並み取ることによって既得権益を動かさないということを達成した。所得の健全な分配が行われないので、国際、国内市場は縮小する。なにしろ日本は今でも内需8割ですからね、国内市場は。縮小すると。その中で利益を上げるためにはですね、固定費を下げるしかないし、そのためにはもちろん工場その他を移転するということもあるけど、非正規雇用を使うとか、まあ外国人を使うとかっていうことをやっていく。別にそれ悪いっていう風に言ってるわけじゃなくてですね、全体として、他の国と比べて相対的なバランスがかなり崩れている、極端になっているところにやっぱポイントがある。

 

波頭:その点ではね、私はね、日本の野党の責任がすごく大きいと思う。自民党の得票率って3割か4割なんですよ。それでこんだけ圧倒的に多数の議席を占めてるっていうのは、単純に野党の選挙戦略が稚拙なんですよね。現在の政治に対する批判票の受け皿に誰もなろうとしてない。

 

宮台:同感です。例えば、今回の中統一地方選では、国民民主党がもうほとんど存在がしなくなるぐらいまで壊滅しましたけど、国民民主党が分かれたのは、原発問題なんですよね。民主党政権下でさえですね、原発についてネガティブなことを民主党幹部が言うことが、なんとなくタブー感のもとで手控えられているっていう状態が長く続いていたのも、よく知っているわけですね。さらに、いわゆる集票母体である「連合」っていうのがありますよね。どうしても、その集票母体の意向を気にしたことしか言えないということが起こるんですね。いや、あの原発利権がどうあれ、原発をね、いついつまできっぱり止めると、すでにそれを表明した(ドイツの首相)メルケルのように言えば、票が取れて、票が取れるだけではなくて政権を維持でき、政権を維持できれば、そこから先のタイムスケジュールは、自分たちでコントロールにできるんだからっていう風に言ってきたんですけれど、それこそまさに空気の支配ですよね。「そんなこと言える空気じゃありません!」っていう風に、党幹部が言うような状態で、非常に恥ずかしいなと思いましたね。

 

波頭:勝つための政策とか、勝つためのメッセージっていうのは、全くないですね。

 

宮台:まったくなかったですね。民主集中制って、昔は「細胞」って言っていたようなスモールユニットで代表を選んで、それを上の隊に送り込んで、そこで代表を選んで、上のところに送り込んでって言うんだけど、結局、前任者や上からの推薦があって、それが非常に影響力を持つところで選ばれていくっていうものなので、残念ながら、民主集中制って民主制からは全くほど遠いんですね。

 

波頭:もう、全て権力の統治の・・・

 

宮台:その、仰るとおり。カエサル戦略なんですけれどもね。基本、上の方にいる人たちの意向で事実上すべて決まるんですよ。80年代を予告編として、90年代以降は激太の時代で、従来想定していなかったような様々な移民問題とか、テクノロジー問題とか、あるいは気候危機、地球環境問題とかいろんな問題が出てきている時に、そんな不破哲三さんの空気を読んでいるような、党幹部の集合知で、つまりその程度のしょぼいもので問題が解決できるはずなんて、まず科学的に考えてないんですよ。そうですよね。今僕たちが生きているような乱世においては、できるだけ多くの専門知、あるいは、ジェネラルな知見や知恵を集めて、いろんな問題について柔軟に対処していかないと、どうにもならないんですね。なのに、未だに日本共産党ってレーニンをマルクス主義として数えているでしょう?これは戦間期からの欧州マルクス主義、そして以降のユーロコミュニズムの流れから言えば、ちょっとありえないことなんですね。イタリア共産党、名前変えました。でこれは、しかし名前を変えればいいって問題ではなくて、従来の基幹決定第一主義をやめるって事が重要で、これからの新しい社会主義って呼んでもいいのかな、新しい本質を継続した運動っていうのは、要するにミュニシバリズム、共同体自治主義それぞれの地域はそれぞれの事情を抱えていて、それを知っているのはそこに住んでいる人たちで、その人たちが知恵を集めて、共同体自治を行う。その動きを基幹決定で封じてはいけない。むしろスモールユニットの民主制と、それを共和させるための工夫っていうやり方でですね、新しい、それも共産主義とは呼べないものだと思いますけどね。民衆のために政治をすることなのだとなったわけですよね。これは、いわゆる従来の中央集権的な社民主義、社会民主主義とは違う民主的社会主義っていうものなんですよね。中央集権的なものから単なる分権ということじゃなくて、共同体に自治的なものに市民が参加する分権ですね。こうしたものに移行していかないと、実はそのユーロコミュニズムの流れを見ても、完全にアウト・オブ・デートなんですね。

 

波頭:私はユーロコミュニズムのことがもう少し語られるべきだと思うんです。なぜかというと、戦後の資本主義体制がニッチもさっきも行かなくなって、1980年からフリードマン中心の新自由主義がザーッと世界に広がったかのように喧伝されてますけど、実は、1981年フランソワ・ミッテランですよね。フランスは新自由主義に乗らなかったんですよ、明らかに。まさにユーロコミュニズムの原点をあそこでフラッグを立てて、皆さんご存知のように、しょっちゅうストがあり、デモがありながらも、実は経済成長率は、ドイツと20年で見たらあんまり変わらない。イギリスと比べたら変わんないんですよ。だから、ちゃんとまさにコミュニズム的なあるいはコミュニティを重視する再分配と非中央集権型の社会を作ることによって、ちゃんとやっていけるっていうモデルがあるんだから、北欧が復活したのもそれですよね。圧倒的な再分配で生きていく心配をなくす幸福度ランキングというのがありますよね、日本ってそこでも50位60位70位で、日本ってのも全部から全くこう勝負になってない。その中の大きい一つが、現行の政策政権に対する対抗軸がないっていうことで、やっぱり民主主義じゃないですよね、対抗軸がないっていうこと自体が。発展のしようがない。

 

宮台:すごい一般的な話で言うと、例えば将来を、公共を国なら国が保証しますっていう風になっていたら我々は将来不安がない。例えば、子供の大学教育まで無償化します。ちなみにほとんどのヨーロッパの国と大学教育すごく安くて、僕のゼミからもね、留学したいってやつがいるとですね、「英語理解できるの?」「ちょっと、いやできない」と言ったら、「いやそれでもね、ドイツとかベルギーとかオランダ行けよ」と。無償のところじゃなくても、年間だいたい5万円ぐらいですよ。

 

波頭:ほぼ無償ですよね。大学院に行ったら給料まで出ますよね。

 

宮台:そうなんです。だから英語で学ぶにも、アメリカに行くんじゃなくてヨーロッパだよねっていう風に言う。つまり、簡単に言うと将来が不安だから、あるいは将来の教育費が不安だから、蓄財しなきゃいけないとか、投資しなきゃいけないとかっていうね、そういういわばストレスがたまるような心配をしなくていいんですよ。その幸福度に、この問題がまずすごく関係していると思いますよね。将来を保証する。「将来の心配をしなくていいから、お金を使ってください」っていう風に言えること、それが統治戦略としては、経済活性化と幸福度上昇の基本的な方向線なんですよね。なんで野党がそういう骨太な話ができないで、当たり前だけど、受給額を減らせば年金財政破綻しないのは当たり前で、それと同じ理屈ですけれど、要するに財政が破綻しないから、「だから何?」って問題なんですよ、財政が破綻しないと国民が幸せになるの?そうじゃなくてね、あの財政出動でも何でもいいけど、それを使って何するのってことが問題なんですよ。何するの。国民の将来不安を減らし、減らすためにはいろんな戦略があります。将来不安を減らし、その分は「どんどん使ってください」という風に言えばいいだけでしょ。これだけ国民が不安な状況で、たくさんの貯蓄額がね、貯蓄に回さなきゃいけない額がある中で、給料をちょっと上げて消費が良くなりましたとか、そういうレベルで話をしていいのか?このポンツクがっていう感じなんですよね、もう。

 

波頭:ハハハ。もう、ちょっと乱暴な言い方すると、財政破綻して、なんていうのかな構造改革、要するに、執着する既得権自体壊しちゃえば、もう1回ゼロスタートできるんで、ある種のその財政破綻から行く加速主義的な・・・

 

宮台:97年の韓国、そうでしょ?

 

波頭:韓国は、その後の立ち直り素晴らしかったですからね。それから破綻破綻って脅されて、それでますます富裕層は肥え太り、それで貧乏な人はますます削られっていうのって、あれ本当になんか脅しに屈してますよね。弱者がね、これを守ってあげなきゃいけないのは野党なんですよね。野党も一緒になってますからね。経済の側面だけじゃなくて、安倍さんの襲撃事件も含めて、国が荒れてきてるっていうのも、元々日本のいいところっていうのは、安心で安全、清潔っていうのが社会の財産だったの。それがすごく荒れてるのが心配です。いろんな賄賂だったり、汚職につながってるだろうということがわかっても、何も変わらない。統一教会の問題も明るみに出ても変わらない。それを国民全体が看過しちゃう国になっちゃってるっていうのは心配です。具体的には、今回あった統一地方選でも、政権構造に対して、批判はほとんどないですよね。
 

宮台:ぼくは社会学者なんですね。何事も社会の劣化が初めにあると考えるんですね。第一次第二次安倍政権でですね、非正規雇用の待遇がちょっと改善した。でそれは非正規雇用を増やしたから当たり前のことなんだけど、それで喜んで安倍政権に投票するといったような人たちが増えてくるとか、いろんな不全感を「こいつが敵だ!」みたいな言説によって絡め取られる形で投票行動を誘導されるとかっていう、非常に極端な民主制を支える民意の劣化がやっぱり生じていて、でそれ今回の統一地方選での低投票率によって象徴されることであるだけではなくて、そもそもこれも波頭さんと前回話しましたけれども、例えば統一地方選でね、地方議会のどこに投票したらいいのとか、どういう政策を重視したらいいのかってことについて、友達、家族、あるいは地域で、かつてのように、といってもだいぶかつてですよ、1970年代とかね80年代前半ぐらいまでのように、井戸端会議的に、特に床屋政談的に議論する機会が全くないんですね。
 

波頭:ないですね〜
 

宮台:昔は高校大学時代に僕ら喋ったんですよ。しゃべるような文化的プラットフォームがありました。多くの国ではアメリカでもあるし、ヨーロッパの国々でも、ほぼ例外なくこれはあります。コーヒーハウス的なもの。なぜ日本だけそれが全くないのか。皆さんがこれを識者の会話っていう風にあんまり聞いてほしくなくて、この程度の議論は、高校、大学、院生の人たちだったらできるはずなんですよ。で、「いや、そんな話は普段からしてるから」みたいに言って下さると、より先の話ができるんですけどねってことですね。統一地方選の後でもあるから重要だと思うんだけど、特に若い人がね、だいたい1996年以降、極端に政治的な話題を避けるようになったということ。福一の原発事故の後ですね、福島に行くと、福島大学のキャンパスではね、原発の話題はタブーなんですね。でそれは理由がはっきりしている。家族に原発関係の人がいるかもしれないということで、それを忖度斟酌して喋らないっていうことなんですけれども、表面上似てます、政治の話はしないんですでも、それは友達がいなくなった、あるいは友達の概念が変わっちゃったからなんですね。で、何でも悩みを話せるとか、本当に思ってることは話せるのが友達、特に親友だとすると、それがもうなくなって、事実上、KYを空気読めないってのを恐れてキャラを演じるだけっていう風に急転するんですね、若い人たちのコミュニケーションが。それで政治の話題と、性愛の話題と、本当に好きな趣味の話題は、96年あたりからタブーになって、ところが、ちょっと変わったかもしれないなっていうのは、コロナ禍におけるですね、まあ東日本での日本の徹底的な敗戦ってのが分かった状態で、やっぱり多くの人は何かおかしな国かもしれない確かにって気がついて、でまあ特に安倍首相死後ですね、五輪疑惑疑獄ですね、事実上の疑獄が噴出し、統一教会問題が噴出したところで、確かにこれはダメなのかもしれないなっていう風に、やっと若い人たちが気がついてると思います。なので、この1年っていうことで言えば、もうダメなのかもしれないっていう風に、なんか気がついているんですけれども、そこからまた反応が僕は興味深いです。単に無力感に落ちてるだけなんですよ。「もうその話題は聞きたくない!」みたいな形になるんです。「いや、何とかしなきゃ!」って話にならないんですよね。それはよくわかります。若い人の中にもともと連帯がない、政治的コミュニケーションがない。

 

※以下、講義録の後半は明日に!
 

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