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「〝教えない〟性教育」考(その17)

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「〝教えない〟性教育」考(その17)

「〝教えない〟性教育」考(その17)

2023/11/22

11/6より教えない性教育をテーマに

記事を書き始め、本日分が17回目となりました。

 

(その5)からは、

〝教えない性教育〟を実践しようとする際に

わたしが推薦するに値すると考える

参考図書などの情報素材を紹介しています。

 

未読記事がある方は、末尾に付けた

過去記事リストや参考記事を

適宜参照の上で以下の記事をご覧ください。

 

途中、わたしが11/18から11/20朝まで上京し

いつもの生活パターンが変わって

次男の住まいに泊まったことをきっかけに

テーマからすこし外れたこともありましたが、

かといって全く無関係な記事を

書いたわけではありません。

 

昨日投稿した(その16)からは

本題というか、それまでの流れに戻って、

図書空間「坂本図書」の蔵書に含まれていた

三枝誠さんの著書

『性迷宮 身体に聞いたSEX学』の序章を

全文引用して紹介しました。

 

ちなみに、写真の右側にあった

『身体は何でも知っている』は、

『性迷宮』よりは入手しやすいですし、

三枝さんはその他にも、

『生体的生活術』『気の性格学』など

多数の書物を著されていて、

それらはいずれも

性の問題についても言及されているので、

ご覧になってみて下さい。

 

 

さて、今日の本題に入る前に、

これまで紹介してきたキーワードのひとつ

「包括的性教育」という言葉の

〝包括的〟の意味に少し触れておこうかと。

 

包括的性教育については、

以前紹介した記事のなかで触れられていましたが、

2022年8月に日本財団の有識者会議が発表した

「包括的性教育の推進に関する提言書」に

次のように定義されていました。

 

●セクシュアリティの認知的、感情的、身体的、社会的側面について、カリキュラムをベースにした教育と学習のプロセス
●以下の観点を重視した教育のこと
・人権をベースとした教育
・互いを尊重し、よりよい人間関係を築くことを目指す教育
・健康とウェルビーイング、尊厳を実現し、子どもや若者たちにエンパワーメントしうる知識、スキル、態度、価値観を身につけさせる教育

※『包括的性教育の推進に関する提言書』日本財団 性と妊娠にまつわる有識者会議より

 

つまり、包括的という言葉自体は、

部分的なものではなく、全体を大きく捉えるという

意味であるわけですが、

取り組む主体についても、

学校教育や家庭教育のみでなく、

社会教育のフィールドも含め、

様々な立場の人がそれぞれにできることを

実践するということ言っているように

わたし自身は受け止めています。

 

また、セクシュアリティというテーマには

さまざまな側面がありますから、

たとえば、三枝さんの場合は、

身体の側面から捉えているわけですし、

以前に紹介した渡辺京二さんの

『逝きし世の面影』という史料は、

歴史的な側面のものと言えます。

 

学問分野的に考えていくと、

大脳生理学的な側面もあれば、

社会学、心理学、倫理学、生物学、医学など

さまざまな立場から捉えることができ

また、同じ医学的な観点であっても、

感染症専門医からみたときと、

解剖学的な立場からみたときには、

異なった見解が生まれることもあるでしょう。

 

そこで今日は、同じ身体の観点であっても、

生物学の側面から性の問題を捉えた

団まりなさんの著作

『性と進化の秘密 思考する細胞たち』

ご紹介することにしました。

 

以下は、

第5章「身体ができる、そして雄と雌」から

 

(引用ここから)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

雄は作られた性
脊椎動物の元祖的存在のサカナでは、事情が少し違っています。種類によって、水槽の中に雌ばかりがいると、その中で、一番大きい魚が雄になったり、その逆のことも起こります。サカナは、ヒトのように発生過程で片方の生殖器官を消さないで、両方ともきちんと作り上げます。その上で状況を見て、「あれオスがいないぞ、じゃわたしがオスになるか」というので雌の器官のスイッチを消して雄になったり、また元に戻ったりするのです。そういうことが自在にできます。人間もそうなっていたら、日本人の男女比はどこに落ち着くだろうかと思うことが時々あります。

 

でも、人間を含めた大部分の脊椎動物は、後戻りができないようになっています。片方に専門化することによって、その片方により上手になることができます。ぐらぐらする仕方が少なくてすみます。つくりあげていく途中はともかく、できてしまえばヒトの性はもううごきません。

先ほどチラと触れましたが、脳のつくりも男女で少しだけ違いがあります。女としての個体を運営していく脳と、男としての個体を運営していく脳がまったく同じでは、困るからです。平均的には、男が女に引かれ、女が男に引かれるようでないと、生殖の機能が果たせません。しかし、その脳と身体がかもし出す、人間の資質としての女らしさ、男らしさとなると、大きな個体差が生じます。胎児の時代に受けた男性・女性ホルモンの割合やレベルの違い、母親の身体の状態、胎児と母親の個性、両者のずれの幅など、さまざまな要因が複合的にはたらくからです。まして、社会的な人間の女っぽさ、男っぽさとなると、個人差の上に社会的バイアスが加わって、何が本当かわからなくなってしまいます。人間の性のこの柔軟性が、さまざまなバリエーションを楽しむといったポジティブな方向にではなく、男女差別などのネガティブな方向に利用されていることは、浅ましく、悲しいことです。

 

最近の世情をつらつらながめていると、男の力の弱り方がとみに目につきます。「女は度胸、男は愛嬌」は、もはや冗談とはいえません。もちろん女も弱ってはいます。わたしの周囲の人を見渡しただけでも、子どもを産むことが昔に比べてはるかに大仕事になっています。しかし、男力の低下は女力の低下に比べて、はるかに多面的、かつ重度であるように見えます。

このことを意識するたびに、その原因の深いところに、男の性が作られたものであることがはたらいているのではないか、と考えさせられます。女がどっしりと足を地につけて生きているのに対し、男にはどこかふわふわとした不安定感があり、社会的な影響を受けやすいように見えるのは、男の身体が女の身体に上乗せしたものであり、足が地面にとどきにくいからではないのか。男の性転換願望が深く肉体的であるのに対し、女のそれは男装であり、社会的な色合いが濃いのも、同じ原因なのではないか。

 

私自身も若い頃は、さまざまな女性差別を感じるたびに、どうして女に生まれついてしまったのか、と悔しい思いを何度もしました。でも最近は全くちがいます。日本社会の混乱と堕落や世界規模の行き詰まりを目の当たりにするにつけ、一生を男社会のメカニズムから体よくはじき出されて暮らしてきたことで、少なくともズブには加害者側に立たないですんだ。女を踏みつけにした上で、〝ゆりかごから墓場まで〟手厚く保護される、そんな性の側に加担しないですんで、本当に助かった、という安堵をおぼえます。

この状況を打開するためには、すでに手遅れかもしれませんが、男が自分の弱さを認識しなければなりません。男は強くて有能であり、女は社会的能力が低く、けがらわしく、自分たちが支配してやらなければロクな知性も持てないものだ、などと虚勢をはらず、自己欺瞞を止めることです。自分の脆弱さを率直に受け入れ、女の力を計算に入れ、両者で協力し合っていくことです。その入口を導いてくれる手本は、海外に山ほどあります。女の力を理解できない社会という意味では、日本は世界屈指の位置につけているといえるでしょう。

 

目覚めよ、男たち!
真の協力者は、あなたの傍らにあるのです。

 

団まりな『性と進化の秘密 思考する細胞たち』(角川文庫)第5章 身体ができる、そして雄と雌 より

 

 

この続きはまた明日に!

 

【これまでの記事一覧】

「〝教えない〟性教育」考(その1)

「〝教えない〟性教育」考(その2)

「〝教えない〟性教育」考(その3)

「〝教えない〟性教育」考(その4)

「〝教えない〟性教育」考(その5)

「〝教えない〟性教育」考(その6)

「〝教えない〟性教育」考(その7)

「〝教えない〟性教育」考(その8)

「〝教えない〟性教育」考(その9)

「〝教えない〟性教育」考(その10)

「〝教えない〟性教育」考(その11)
「〝教えない〟性教育」考(その12)
「〝教えない〟性教育」考(その13)

「〝教えない〟性教育」考(その14)

「〝教えない〟性教育」考(その15)
「〝教えない〟性教育」考(その16)

 

【参考記事】

福澤諭吉ってどんな人?

なぜ「対幻想」は日本で生まれたのか?

なぜ「対幻想」は日本で生まれたのか?(その2)

なぜ「対幻想」は日本で生まれたのか?(その3)

内田樹『日本辺境論』より(今日の名言・その32)

教養とは何か(阿部謹也『大学論』より・その3)

地域通貨を通じての坂本さんとの関わり(坂本龍一・追悼)

9/24都内某所にOPENする「坂本図書」構想や新刊本のこと

図書空間「坂本図書」の予約が11/19取れました

 

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