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らくだメソッドにはなぜ、記録表があるのか?

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らくだメソッドにはなぜ、記録表があるのか?

らくだメソッドにはなぜ、記録表があるのか?

2023/03/27

らくだメソッド開発者である

平井雷太さんが1997年に出された著書に

『見えない学校 教えない教育』があるんですが、

3/20よりこのblogでは、

その本の「第2章 教えない教育」より、

らくだメソッドを生み出したプロセスや

全体の構成、特徴などを6回にわたって紹介し

井上のコメントも記してきました。

 

らくだメソッドはなぜ計算問題中心なのか?(その1)

らくだメソッドはなぜ計算問題中心なのか?(その2)

らくだメソッドはなぜ「わかる」より「できる」を重視したのか?(その1)

らくだメソッドはなぜ「わかる」より「できる」を重視したのか?(その2)
らくだメソッドはなぜ「わかる」より「できる」を重視したのか?(その3)

らくだメソッドはなぜ、時間を計ることが大事なのか?

らくだメソッドはなぜ、学習者が自分でマルつけするのか?

 

今日のテーマは、

「なぜ、記録表があるのか?」です。

 

(引用ここから)
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らくだメソッドで学習する場合、1人の生徒に1ヵ月につき1枚の学習記録表(冒頭の画像)を渡しています。その記録表には、1枚1枚のプリント毎にかかった時間とミスの数を記入できるようになっているのですが、その項目以外に、枚数・採点・訂正・記入・教材・記録表という項目がついています。


生徒が家に持って帰るプリントは指導者と相談の上、生徒自身が決めていますから、「どのプリントを何枚持って帰った」と、記録表の日付のところにその記録が書いてあるのですが、たとえば、「小1−6 6枚」と書いてあれば、翌週の同じ曜日に教室に来るときまでに、1日1枚で同じプリントを6枚やってくるという意味なのです。ですから、生徒が自分で決めた枚数のうち1枚でもやってこなければ、「枚数」の項目に指導者が○印をつけます。「枚数を自分で決めた通りにしなかった」という意味です。これは評価ではなく、何が欠けているのか、それが一目でわかるように事実を記しているだけです。


やったプリントは、その場ですぐに採点をし、間違いがあれば、それを訂正し、その結果を記録表に書くことにしていますから、1枚でも採点していないプリントがあれば「採点」の項目に、間違い直しをしていなければ「訂正」の項目に、記録表への記入を忘れていれば「記入」の項目に、○印をつけるのです。それ以外にもいくらプリントをやってあっても、そのプリントを家に忘れてきた場合には「教材」の項目に、記録表そのものを忘れていれば、新たな記録表を発行して「記録表」の項目に○印をつけるわけです。つまり、項目のどこにも○印がつかなければ、セルフラーニングが完璧にできていることになるわけです。したがって、この記録表を見るだけで、「セルフラーニングができているか」どうかが一目瞭然でわかるようになっているのです。


ですから、たとえば、生徒が翌週に来るつもりで、1日1枚のペースで6枚の宿題を持って帰ったとして、毎日1枚ずつやらずに、教室に来る前日にまとめて6枚やった場合、その通りに記録表に書いてきても、「なぜ毎日やらなかったのだ」とそのことをとがめたり、責めたりしません。そんなことをすれば、怒られないように、さも毎日やったように記録表にウソを書いてくるようになるだけだからです。私が責めなくても毎日やっているように書いてくる子もいますが、もちろん、そんな場合も「これはウソだろう?本当のことを書け!」と問い詰めたりすることも決してありません。本当のことを書いていないのを知っているのは本人なのですから、私がそのことを問題だと指摘しなくても、「どうして私はここにウソを書いているのだろう?」「どうして本当のことが書けないのだろう?」という問いが、その生徒に浮かべばいいのです。それはただ「自分で決めたことを自分でできない自分」を受け入れていないだけなのですから、事実をありのままにこの記録表に記入できるかどうかがその生徒の課題ということになります。


そのことがその生徒にとっての課題であることを、その生徒自身が自覚するためにも、「正しい事実を、そのまま記録表に書いていない現実」に意味があるわけですから、事実を記録表に書いていないことを、私は決して責めたりしないのです。時間が目安時間に遠く及ばなくても、記録表に目安時間でできたように書いたり、ミスがいくつあっても、記録表に0個と書いたりする生徒がときにはいるのですが、それが記録表に正しく記入されているかどうかで、「記録表に記入することの意味が自覚されているかどうか」のバロメータにもなっていますから、正しく記入されていないことも、それはそれでとても貴重なデータとなるのです。

 

子どもが自分の課題を自覚できる
そんなわけで、「プリントをやることよりも、この記録表に起きた現実をそのまま記入できるかどうかは、自分を否定せず、そのままの自分を受け入れているかどうか」ですから、そのことがどれだけ重要であるかを、生徒たちには折りを見て話しています。ですから、プリントをきちんとやっているにもかかわらず、記録表にその結果を毎日記入せずに、教室に来たときにその6枚分の記録を記録表に記入しようとする子がいると、教室で記入することはさせずに、「教室で記録表にやったプリントの結果を記入するのは『いけない』のだけど、どうしてだかわかる?」と聞いて、「わからない」と言った場合には、「本当はいつ記入するものなの?」「プリントをやって、採点し終わったらすぐ」「それはどうして?」とインタビューをしながら、プリントをやり終えてすぐに記録表に記入することの意味を一つひとつ確認していきます。


そんなことをしていくと、ときにはその生徒が自分がやったプリントの結果に対し、なんの関心も持っていないことが見えてきたりします。もし自分のやった結果に関心があれば、すぐに記録表に記録して、「昨日やった結果と比べて、今日はどうなったか? 明日はどうなるだろう?」と自然に自分を見つめるようになると思うからです。そこで、「この1週間は、毎日記録表に記入できなかったことに意味があるから、この1週間にやった分のプリントの具体的な数字を記録表に記入せず、そのところにただ『6枚!』と、やった枚数だけ書いておこう」と説明して、その子にとっての次週までの課題が「記録表に記入すること」であることが伝わるようにしたりするのです。


また、らくだメソッドを使った場合、生徒たちに「このプリントをやってきなさい」という指示を私が出さなくても、生徒が自分で自分のやるべき宿題を決めることができるのは、この記録表があるからです。私がその生徒の問題を「指摘」しなくても、記録表を見ていれば、その生徒の問題が浮き彫りになってきますから、生徒は自分で自分の問題を「自覚」できる仕組みになっています。この記録表にはやり終えたプリントの番号と時間とミスが書いてあるのですが、そのデータを見て、生徒は「自分でなんのプリントを何枚やれば、次のプリントにすすむことができる」と自分で判断できるようになっています。記録表がなければ、そんなことをするのは到底無理でしょう。生徒が1枚1枚のプリントに取り組みながら、たんたんとやっていけば、必ず合格していくという現実が、この記録表を見ているとわかるのです。それが見えるから、生徒は自分で決めたことを自分でやろうとするのです。


また、どんなにできない状態が続いていても、あるとき、突然にできるようになることがある現実を記録表をつけていると体験することもできます。まるで真っ暗な闇の中にいて、突然朝日がさしてくるような感覚ですから、このような体験から、「夜明け前の朝は最も暗い」というようなことまで伝えることができるのです。ですから、なかなか合格できないことはなんの問題でもなく、すぐに合格できないことで、かえってそんな体験から学ぶものがあるのです。

 

平井雷太『見えない学校 教えない教育』

 第2章 教えない教育

 6 なぜ、記録表があるのか? の前半部分より

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(引用ここまで)

 

この項についても、後半部分は、

平井雷太さんの教室すくーるらくだに在籍していた

生徒さんの話が続くので割愛します。

 

学習記録表は、ストップウォッチとともに、

セルフラーニングを可能にする

とても重要な役割を果たすツールなんですが、

学校の成績表とはまったく異なるものなので、

これまでにも何度か記事を投稿してきました。

 

自分の器を拡げるためにできること(その7)
学習記録表(通塾用)右側の欄は何のため?

現状把握ツールとしての学習記録表

目の前にある『はてしない物語』を読み解く(塾生Bさんのふりかえり文から)

 

結局、何事においても重要なことは、

「現状把握」に尽きるわけですが、

自分自身についての現状を正確に把握するために

特に大切なポイントは次の3点でしょう。

 

1.定点観測を継続して行うこと

2.事実以外のノイズを混ぜないこと

3.得られたデータを蓄積し可視化すること

 

今日の名言シリーズで

沖澤のどかさんのことばを取りあげた次の記事でも、

「外在化」という重要なキーワードを紹介して、

学習記録表が存在する重要さにも触れました。

沖澤のどか『自分と自分の音楽を分けて考えられるようになりました』(今日の名言・その36)

 

らくだメソッドと、

市販されているドリル教材との違いは

計算問題や、漢字の書き取り問題が並んでいる

プリントだけを見ると分かりづらいのですが、

「プリント」「ストップウォッチ」「学習記録表」

という3つの学習アイテムが

一定のルールに基づいて有機的につながり、

セルフラーニングというシステムを

形成しているところにあると言ってよいでしょう。

 

しかし、そのことをただ単に

アタマで理解したところで仕方ありません。

 

平井雷太さんはよく

「らくだメソッドは、大人になるための

プログラムなんだ」と言われていました。

 

「わたしは子どもか大人を年齢で区別していない。

〝自分で決めたことが自分の力で実現できる人〟

〝大人〟というんだ」と。

 

1日1枚のプリント学習という

非常にシンプルなプログラムではあるんですが、

それを1日24時間ある生活の中に

自ら位置づけ、やり続けようとする実践を通じて、

セルフラーニングという学習システムを

自分の中にしっかりインストールして

自ら体現できるようになったときには、

結果的に、「鬼に金棒」と言っていいほどの

頼もしい味方となってくれる相棒を、

自由自在に活用できるように

なっているのではないでしょうか。

 

コツコツ続けるのが苦手だったわたし自身が

この学習にどのように取り組み

セルフラーニング力をどのように身につけ、

どんなふうに活かしてきたかについては、

・自分の器を拡げるためにできること(その1)

から7回にわたって続けて書いた記事など

ご覧になってみてください。

 

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