寺子屋塾

改めて「書くこと」と「教えない教育」との関係について(その13)

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改めて「書くこと」と「教えない教育」との関係について(その13)

改めて「書くこと」と「教えない教育」との関係について(その13)

2023/06/18

昨日投稿した記事の続きです。

 

改めて、「書くこと」と「教えない教育」の

関係を明らかにするというテーマを設定して

書き始めたこの記事ですが、

今日で13回目となりました。

 

したがって、いきなりこの記事から読まれても

前提となっている話や

これまでのプロセスがある程度見えないと、

主旨が伝わりにくい点もあり、

記事の最後に貼り付けた

関連記事のリンク集を適宜アクセス下さると

ありがたいです。

 

 

さて、今日からしばらくは、

実際に塾生の皆さんが書いている

blog記事などを紹介しながら、

寺子屋塾ではどんな学習をしているのか、

文章(考現学)を書くことの位置づけや

関わりなどについて書いていくつもりです。

 

これまでの記事で書いてきたように、

開塾当初、平井雷太さんや加藤哲夫さんが

考現学を毎日書いていた時期には、

わたし自身が毎日考現学を書くのみならず、

「考現学コース」という形で、

らくだメソッドで学習するコースと別に

日々淡々と文章を書くこと自体を

寺子屋塾の学習コースとして

開設していたこともありました。

 

2001年春まではそれを続けていたんですが、

わたし自身が大きく体調を崩して、

毎日書くことができなくなってしまったことと、

インターネットやパソコンの普及、進化によって

毎日書いて発信するという環境が社会的に整い、

誰でも容易にできるようになった事情などもあって、

それ以後は、日々書くこと自体を

寺子屋塾の学習コースとして設けることはないまま

今日に至っています。

 

もちろん、次の記事に書いたように、

教室で、書くことについて相談を受けたり、

質問を受けることがあれば答えるんですが。。

井上さんが文章を書くときに気をつけていることは?

ネット上(blogやSNSなど)で文章を書く心得

 

 

したがって、現在の寺子屋塾において

blogを書いて発信すること自体はオプション学習で、

マストではありません。

 

それでも、わたし自身がこうして

12回にわたって記事を書いているうちに、

現在のtwitterやfacebookといったSNS、

blogで一般的に行われているような文章作法と、

かつて考現学ネットワークで行われていた

文章作法とは、

似て非なるものだったということも

わたし自身、明確に見えてきたこともあり、

AIによるChatGPTが世界レベルで

台頭しようとしている今だからこそ、

「考現学コース」を復活させる意義があるかもと

おもいはじめているので、

それについては改めて書くつもりでいます。

 

 

さて、その11の加藤哲夫さんの本から引用した

最後の部分には、

ずっとこうして連投記事として

書いてきたテーマについても

とても重要なことが書かれていたので

その部分をもう一度ご紹介しましょう。

 

(引用ここから)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

平井雷太氏の『「〜しなさい」と言わない教育』(日本評論社刊)は、子どもとの「〜しなさい」 と言わない対応を書いた本として受けとめられているわけだが、同時に、「棍棒での殴り合いはごめん。かといって良識の免疫システムに身をゆだねるのもいや」と津野氏が言うところの、深い対話的関係コミュニケーションの本質に実践的に迫るものとして読むことができる。伝えたいという思いを持ちながら、対立的にならず、押しつけず、しかも自主規制せず、相手に伝えるコミュニケーション、それが、「〜しなさい」と言わない教育なのである。その実践は、デジタル・ネットワークにおける対話的コミュニケーションのみならず、 アナログ社会の中での対話的コミュニケーションにも不慣れな私たちにとって、大切な修業でもあるだろう。


つまり、平井雷太氏が塾で実践している『「〜しなさい」と言わない教育』とは、「批判される訓練」、つまり「自分のうちに矛盾や分裂をみとめる能力を身につける」ことを「子どもに教えようとする」(便宜的に子どもと書いたが平井雷太氏の塾の生徒には大人もいる)のではなく、「子どもから学ぶ」にシフトすることによって(批判されることに慣れていないのは、実は教師の側であるということに気づいて)、相互に学び合う関係を生み出し、深い対話的関係を作り出そうとするものなのだ。子どもが、「もう勉強やりたくない!」と叫ぶとき、その言葉を真に受けず、しかし、その言葉を、自分に対する赤入れ、つまり批判される訓練として実践的に読み解く方法が、平井雷太氏の言う『「〜しなさい」と言わない教育』なのである。

 

『加藤哲夫のブックニュース最前線』(無明舎出版)の

 「自分探しはらっきょうの皮剥き」(1996年6月)より

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(引用ここまで)

 

つまり、以前にこのblogでも、

「プリントなんかやりたくない」って言ってごらん?

ナンテ記事を書いたことがあるんですが、

わたしが長年にわたって

らくだメソッドを用いて行ってきている

「教えない教育」というのは、

上に書かれている加藤さんの言葉を援用しながら

端的に表現するなら、

次のようなことと言ってよいでしょう。

 

教える者も学ぶ者もともに

対等な関係にあることを前提に

教える側の人間にとって「教えたい」ことを

学ぶ人間に対し、上意下達的に伝えるのでなく、

伝えたいという思いを持ちつつ、

対立的にならず、押しつけず、しかも自主規制せず、

インタラクティブ、

つまり対話的コミュニケーションを通じて

互いに自分の内側に

矛盾や分裂をみとめる能力をも身につけながら、

相互に学び合う関係を

構築していくことではないかと。

 


たとえば、最近の寺子屋塾では

大人(社会人)の塾生が増えてきたということを

お話しすると、訪ねられた方からしばしば

「大人が小中学校の算数プリントをやることに、

いったいどんな意味があるんですか?」って

尋ねられるんですが、

次のようなことを話しています。

 

「意味はありません。意味って結局

その事物にもともと内在しているものではなくて、

後から人間が意味づけしているものなので。

 

よって、自分の外側に

既にあるものとして意味を求めるのではなく、

そこに自分が新たにどう意味づけできるかが

大事ではないかとおもうんです。

 

あまり聞き慣れないんですが

アンラーニング(unlearning)という言葉を

ご存知ですか?

 

皆さんいろいろ身につけようとされるんですが、

実は新しい能力や知識を身につけることより

過去に受けた教育や習慣で

無意識に身に付いてしまった要らないものを

自分から引き剥がすことや、

不必要に背負ってしまった荷物を

下ろすことの方が難しいんですよ。

 

このらくだメソッドっていうのは

とっても不思議な教材で、

どうもラーニングだけでなく、

アンラーニングの役割を果たしているようで、

算数数学のプリントやってるだけなのに、

たとえば、学校へ行けなかった小学生の子が

『明日からぼく学校へ行く』って突然言い出したり、

ひきこもりで10年以上

家から一歩も出られなかった青年が、

就労支援の施設でやっている

グループカウンセリングに月1回

通えるようになったりってことが起きるんです。」


でも、やっぱり「なんで算数プリント?」って

おもいますよね。

 

プリントの問題とこうして書いている記事内容が

なかなか結びつかないかもしれないんですが、

言ってみれば茶道、華道などのお稽古事や、

柔道、合気道のような武道に近いとも言え、

学習塾より〝プリント道〟の道場って

言った方がわかりやすいかもしれません。笑

 

だって、電卓やコンピュータの方が

早く正確に答えが出せますから、

人間が計算ができるようになっても、

そのこと自体は

そんなに大きな価値があるわけじゃないでしょう?

 

でも、電卓やパソコンが登場したからといって、

小学校の学習科目から算数を削るって話には

なっていないですよね?

 

だから、問題を早く解いて正しい答を出すことが

子どもたちが算数・数学を学習する

主目的ではないはずです。

 

それは学校だけでなく

寺子屋塾にとってもまったく同じ事情というか、

算数プリントはひとつのトリガーであり

鏡のような存在にすぎず、

そこに何が映し出されているかを

つぶさに観察しようとする姿勢が大事なんです。


前記したように寺子屋塾には、

指導者のわたしにどんな質問をしてもイイという

とっても大事ルールがあり、

こんにちでは

日々教室で塾生たちと交わす対話のテーマは

ノンジャンルでとっても幅広くなってきました。

 

どんな質問をしてもイイというのは、

結局、何を言ってもイイということですから、

双方が言いたいコトを

ちゃんと言えるかどうかが、

寺子屋塾での学習を豊かなものにできるかどうかの

大きなポイントでもあるわけで。

 

もちろんわり算のコツとか、一次関数とか、

プリントに書かれた問題自体が

話題になることもあるんですが、

あるときは、

新型コロナがもたらした世界情勢の変化だったり、

またあるときは

バッハの音楽の奥深さだったり、

あるときは、お金の本質についてだったり、

ヴィトゲンシュタインの言語哲学だったり、

あるいはまた、

幸せなセックスライフについてだったり、

クラフトビールの多様性についてだったり、

ファシリテーションのコツだったり、

易占いの面白さや奥深さだったり、

TVドラマ『逃げ恥』の見どころだったり、

NPOの経営マネジメントの難しさだったり、

食べ物が心と身体に及ぼす影響だったり、

そもそもコミュニケーションって何って

話だったり・・・。


一応学習塾の形態をとってはいますが、

らくだメソッドのプリント教材のみならず、

経営ゲーム塾、未来デザイン考程という

体験型学習ツールや思考フレームを駆使しながらも、

そこで塾生たちが学んでいることは

ひとりひとり個別に異なるため、

なかなかひとことでは言い表せず悩ましいんですが、

総体的にみるなら、

自分というOSをアップデートし、

これからの不確実な世界を

どうやって生き延びていくかを

一緒に考える戦略研究所と言えるかもしれません。

 

 

さて、本日ご紹介するblog記事は、

現在在籍している塾生の

坂田美佐子さんが3年前に書いていたものです。

 

前述したように、わたしが

書き方を指導しているわけではありませんし、

blogを書くのはあくまでオプションなので、

全員の塾生がこんなふうに

書いているわけではありません。

 

人によって進度の速い遅いはありますし、

また学習課題はほんとうに個別に異なるので

一律には言えないのですが、

だいたい3年ほど続けていると

何らかの変化があり、

この坂田さんのように、小学6年の

この辺りのプリントまで進んでくると、

いろんなことに対し、自覚的に内省できたり、

前向きに取り組んでいこうとする姿勢が

出てくる人が

すくなくないように感じています。

 

(引用ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【その日は意外な形であっけなく訪れた】
そう、意外なほど軽やかに、あっけなく。


今日という日は、わたしがわたしという人間に対して創り出していた『枠』が(おそらく)完全に取り払われた日だ。


寺子屋塾中村教室に通い『らくだメソッド』を開始してから3年と2ヶ月ほどが経過している。


おかげさまで年々生きることが楽になってきているが、まだまだ握りこんでいたものがあった。

 

それが『わたしは○○だ』という枠だった。
その枠のなかにいることで、自分を守っているつもりだった。


だいぶとどうでもよくなってきている感もあったけれど、心の底からはそう思えておらず、

何かあるとその枠のせいにしてきた。

 

そしてまた、新たな枠を創り出そうとしていた。
枠から出ることが怖かった。
けれどもう、終わりにしようとおもった。


そんな狭い枠組みのなかに収まって生きていても、先が見えている。つまらないし、キリがない。

そこは安全地帯ではなく、

むしろ危険区域だと感じている。


そんなこともうどうでもいいじゃねえか、そんなことよりも、いま・ここを生きようぜ!


いま・ここに立ち現れたご縁や出来事を、楽しもうぜ、たとえこの先なにが起ころうとも。


ただただいまは、そんな心境だ。
ただいま、わたし。
おかえりなさい、わたし。


さあ、これからどこへ行こうかな。
どこへ行きたい?
もう、どこへでも行けるよ。


てかそんなことどうでもいいから

とりあえずプリントやろうぜ。(笑)


自分というOSにとっておきのアプリを

ダウンロードしよう。

 

さあ、常にアップデートしながら、

コマを進めよう。


人生はロープレ(RPG)だ。
荷物は少ない方が歩きやすい。

 


rakukara’s diary 2020年6月15日 より  · 

 

上に紹介したblogの原文記事はこちら

 

【関連記事】

字を書くとは身二つになること

OPENな場で書くことはなぜ大切?

ブレヒト『真実を書く際の5つの困難』より(今日の名言・その60)

改めて「書くこと」と「教えない教育」との関係について(その1)

(その2)

(その3)

(その4)

(その5)

(その6)

(その7)

(その8)

(その9)

(その10)

(その11)

(その12)

 

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