台北の円卓で、三つの言語が同じ画面に流れていた──長男の書いたブログ記事を読んで(その4)
2026/10/09
昨日は、長男・晶雄の書いた
語学学習についてのnote記事を紹介しました。
・「聞こえなくても、言語は学べる」とは?──長男の書いたブログ記事を読んで(その3)

今日は、その続編として、
9月26日に投稿された台湾旅行の記事を紹介します。

今回の記事は、語学の学び方というより、
学んできた言語が、新しい道具によって
実際の会話で使えるようになった話です。
その道具が「Even G2」というスマートグラス。

長男のような重度難聴者に役立つだけでなく、
聞こえに不自由のない人にも
活用できそうな製品なので、
今日は長男の記事へのコメントを少なめにして、
この〝新しい眼鏡〟の紹介を
メインに記事を書いていきます。
1.「その夜、わたしはちゃんとテーブルにいた」
記事の舞台は、台北の鼎泰豐。
8人から11人ほどで円卓を囲み、
右では中国語、正面では英語、左では日本語と、
三つの言語が飛び交っていたようです。
複数の人間の声が重なり、
食器の音や店内の雑音もある
長男にとっては、いちばん条件の厳しい場です。
これまでは、自分に直接
話しかけられたときには応答できても、
それ以外は表情だけで参加することが多かったと。
ところが今回は、眼鏡に表示される字幕を読んで、
会話の内容が分かり、
その場で皆と一緒に笑うことができた。
そして、こう書いています。
その夜、わたしはちゃんとテーブルにいた。
この一行には、親のわたしも胸を打たれました。
同じ席に座っていることと、
その場の会話に参加できていることは違う。
後から「こんな話をしていたんだよ」と
説明してもらうのでなく、
いま目の前で進んでいる話をリアルタイムに分かる。
その違いが、どれほど大きいことだったのか、
淡々とした文章だからこそ余計に伝わってきます。
では、それを可能にしたEven G2とは、
どんな道具なんでしょうか?
2.いつもの眼鏡に情報の窓が加わる
ひとことで言えば、
視界の中に文字や情報を表示できる眼鏡です。
スマートフォンの専用アプリと連携して、
文字起こしや翻訳、予定の確認などを行います。
相手の話を文字で読むときも、
そのつどスマートフォンを取り出して
画面をのぞき込む必要がない。
相手に顔を向けたまま、
視界の中で情報を確かめられるんですね。
日本向けの製品紹介によると、
レンズ込みで約36グラム
マイクは4基ありますが、
カメラもスピーカーもありません。
・日常に馴染むAIスマートグラス Even G2(株式会社Acalie)
見た目も、普通の眼鏡に近いようです。
長男も、説明するまで同僚たちが
気づいていなかったと書いています。
道具を使うたびに説明が必要だったり、
場の空気が変わってしまったりせず、
これも、毎日使うものには大切な条件でしょう。
別売の指輪型コントローラー、Even R1を使えば、
眼鏡やスマートフォンに触れずに操作できます。

長男は旅行中、ほぼ指輪の操作だけで
文字起こしを開始していたそうです。
なお、Acalieでは度なしグラスを取り扱い、
度付きを希望する場合は
認定メガネ店へ相談する案内になっています。
3.「文字起こし」と「翻訳」は、別のこと
ここで、一つ区別しておきたいことがあります。
台北で長男が使ったのは、
Conversateという機能による文字起こしでした。
中国語は中国語のまま、英語は英語のまま、
日本語は日本語のまま表示され
三つの言語を、日本語に訳していたのではありません。
5日間、翻訳モードは一度も使わなかったと。
これまでの記事で紹介したように、
長男は英語も中国語も、
文字なら読んで理解できます。
足りなかったのは語学力というより、
音声が届く経路だったわけです。
本人の言葉では、
「障壁は言語ではなく、経路の側にあった」と。
一方、Even G2には翻訳の機能もあり、
外国語の会話を、選んだ言語の文字で
確認する使い方もできます。
聞こえていても、その言語を知らなければ、
話の中身は分かりません。
海外旅行や、外国の方とのやり取りで、
音声と一緒に訳文を確認できるなら、
心強い場面は少なくないでしょう。
母語の会話でも、聞き慣れない専門用語や
長い説明を文字で確認したいことは様々あります。
つまり、難聴者だけの道具でなく、
音声だけでは取りこぼす情報に、
もう一本の経路を足す道具と捉えると、
使い道がいろいろ見えてくるんですね。
4.仕事や旅行、講座にも使い道がある
メーカーの公式案内を見ると、
文字起こしや翻訳以外にも機能があります。
たとえば、会話の記録とAIによる要約では、
打ち合わせの内容を、後から確認できます。
また、原稿を視界に表示する
テレプロンプターという機能もあります。
人前で話すとき、手元の原稿ばかり見ずに、
聞いている人に顔を向けて話せるなら、
講座に参加した際でも役立ちそうです。
ほかにも、視界に経路案内を表示したり、
予定や通知を確認したりする機能があります。
わたし自身が使って確かめたわけではないので、
ここはあくまで、
長男が書いていたブログや
メーカーの紹介記事を読んでの想像ですが、
「これなら自分にも使い道がある」と
感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
長男の記事では、ホテルのチェックインで
説明を文字にして残せた話も印象的でした。
そのときは理解できたので、
記録を見返すことはなかったようです。
でも、聞き逃しても後で確認できると思えたことで、
落ち着いて説明を受けられたと。
わたしが得ていたのは、見返した記録ではなくて、見返せる状態だったのだと思う。
記録は、後から読むためだけではなく、
その場で安心して話に集中するためにもある。
この利点は、聞こえの状態にかかわらず
共感できるのではないでしょうか。
5.万能ではない。それでも参加できる場は変わる
もちろん、どこでも完璧に使えるわけではありません。
長男は、九份を歩いているときに
字幕が止まってしまって、
後からまとめて流れてきたことや、
言語の切り替え、表示の遅れについても
書いていました。
Conversateを使うには、
スマートフォンのインターネット接続が必要です。
通信が不安定なら、
文字が届く経路も不安定になるため、
文字起こしや翻訳、AIの説明についても、
大切な内容は、そのまま鵜呑みにしないで
確認する姿勢が要るでしょう。
また、カメラがないからといって、
記録への配慮が不要になるわけではありません。
Acalieの案内にも、
会話サポートの録音を始める前に、
参加者に伝えて同意を得るよう書かれていて、
職場や会場のルールにも配慮が必要ですね。
それでも、限界があるということと、
役に立つか立たないかということは別です。
長男にとって長いあいだ
「聞き取れない場所」だった円卓が、
今回は、会話に参加できる場所になった。
本人がさらに頑張ったからでなく、
持っていた力を使える経路が
テクノロジーの進化によって整ったことで、
その場との関わり方が大きく変わったわけです。
同じ道具でも、役立ち方は人それぞれ。
旅行が少し楽になる人も、
仕事の負担を減らせる人もいるでしょう。
新しいガジェットを、便利かどうかだけでなく、
〝どんな場に参加できるようになるか〟という
視点から見てみる。
長男の台湾旅行記は、そんな見方も
教えてくれたようにおもいました。
最後に、Even G2を紹介している
YouTube動画を1本貼り付けておきますので
ご覧になってみてください。
・【時代が変わるぞ】スマートグラス「Even G2」が生活を変えるレベルで


