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AI時代に「自分で考える」とは何なのか(その3)

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AI時代に「自分で考える」とは何なのか(その3)

AI時代に「自分で考える」とは何なのか(その3)

2026/10/12

10/10から2回にわたって、YouTube動画

【ソクラテスの予言】AIは人間の「魂」を奪うのか、

2400年前の哲学が見抜いた対話型AIの致命的欠陥

の文字起こしを紹介してきました。

・AI時代に「自分で考える」とは何なのか(その1)
・AI時代に「自分で考える」とは何なのか(その2)
 

 

動画の内容を紹介しながら、わたし自身も、

AI時代における「考える」ということについて、

いろいろと考えさせられました。

 

とくに印象に残ったのは、次の言葉です。

知能は敗北していない。敗北したのは〝吟味〟である。

 

AIを使うことで、わたしたちの知能そのものが

衰えているわけではない。

 

情報を集めたり、文章をまとめたり、

複雑な計算をしたりする能力は、

むしろAIによって拡張されている。

 

けれども、AIが出してきた答えを、

そのまま受け取ってしまう。

 

「本当にそうなのか」と問い直すことなく、

分かったつもりになってしまう。

 

そのとき、わたしたちは「考えること」を

やめてしまっているのではないかという話でした。

 

では、AI時代に「自分で考える」とは、

具体的にどういうことなのでしょうか。

 

 

AIに勝てない能力をこれからも鍛え続けるのか

計算を早く正確にすること、

たくさんの知識を覚えていること、

文章を論理的にまとめること等々

これまでの教育においては、

こうした能力が大切にされてきました。

 

もちろん、これらの能力が今すぐに

不要になってしまうわけではありません。

 

計算力も、知識も、論理的に考える力も、

文章を組み立てる力も

学習における基礎的能力だけでなく、

生活を営む上での土台でもあるからです。

 

ただし、AIの進化によって、

これらの能力を

「人間だけが持つ特別な能力」と考えることは、

できなくなってきました。

 

少なくとも、情報を検索し、整理し、比較し、

一定の形式にまとめるということにおいて、

AIは人間よりも速く、正確に、疲れることなく

作業することができます。

 

そう考えると、AIにとって得意なことを

人間が張り合って同じように出来たところで

ほとんど価値はありません。

 

たくさんの知識を正確に記憶している能力や、

早く正解にたどりつけるような能力は

AIの更なる進化によって

急激に価値を失っていく可能性があります。

 

これからの教育において、

人間としてどんな能力が必要なのか、

大きな見直しを迫られ

そもそも、何を問題にする必要があるのかが

根底から問われることになるでしょう。

 

どんな問いを立てるのか、

出てきた答えを、どのように実践していくのか、

そして、どうすればその答えを

自分の判断として引き受けることができるのか・・・

 

ここに、人間が自ら考え、

学び続ける意味があるように思います。

 

 

人間には身体を通した体験がある

寺子屋塾で「体験と対話」を重視しているのは、

32年前の開塾以来のことで、

AI時代になって

急におもいつき言い出したことではありません。

 

寺子屋塾を開塾する以前の

25歳から32歳までの7年間、

進学塾で小中学生を相手に学習指導した体験から

知識を一方的に伝えるだけでは、

本当の意味での学びには

つながりにくいと考えてきました。

 

できる、できないを考えず、

自分で決めて、自分でやってみる。

おもいどおりにいかない体験をする。

そのときに、自分は何を感じたのか、

なぜうまくいかなかったのかについて考える。

 

こうした試行錯誤や体験の積み重ねが、

その人の学びの土台になります。

 

AIは膨大な情報をスピーディに扱うことができても

AIには身体がありません。

 

暑い日に汗をかくことも、

初めての場所で迷うことも、

誰かに厳しいことを言われて傷つくことも、

おもいがけず親切にされて

嬉しくなることもありません。

 

人間は身体を通して世界を直に感じることができ、

その経験は、単なる知識ではありません。

 

感情や身体感覚と結びついた、

その人だけの一次情報です。

 

同じ本を読んでも、同じ説明を聞いても、

そこから何を感じ、何を思い出し、

どんな問いを持つかは、一人ひとり違います。

 

だから、学習者自身の体験が大事になるわけですが、

体験すれば、それだけで

自分で考えられるようになるわけでもありません。

 

体験は、ときにおもい込みを生みます。

 

一度うまくいったからといって、

いつでも同じ方法が通用するとは限りません。

 

一度失敗したからといって、

自分にできないと決めつける必要もありません。

 

自分の体験を言葉にし、

他者と話し、別の見方に触れる。

そうすることで、体験は単なる出来事から、

学びへと変わっていきます。

 

体験だけでも足りない。

知識だけでも足りない。

体験を問いに変え、対話によって深めていくことが必要なのです。

 

 

これから重要な質問力と対話力

AIに質問をすれば、すぐ答えが返ってきますが、

どんな問いを投げかけるかによって、

答えは大きく変わってしまう。

 

自分が何を知りたいのかよく分からないまま

AIに質問すれば、返ってくるのは

一般的で無難な答えになりがちです。

 

逆に、自分の中に具体的体験や問題意識があれば、

ただ「どうすればいいですか」と

正解を問うような

ノウハウレベルの尋ね方でなく、

「自分は過去にこんな体験をしたけれども

ここがうまく説明できないのは、

どういう視点が不足しているからですか?」

という問いをつくることができる。

 

この違いは、とても大きいとおもいます。

 

これからの時代に必要になるのは、

単にAIを使える技術だけではありません。

 

AIから必要な情報を引き出す質問力。

返ってきた答えを吟味する力。

他者との対話を通して、自分の考えを深める力。

 

広い意味での情報リテラシーというか、

こうした力が、

ますます重要になってくることでしょう。

 

動画で紹介されていたソクラテスの

「エレンコス」とは、

相手を論破したり、相手を説得したりする

技術ではありませんでした。

 

相手が「自分は分かっている」と

おもっていることについて、問いを重ねていく。

 

すると、これまで当然だと思っていた考え方では、

説明できないことが出てくる。

 

そのとき、人は初めて、

自分が分かっていなかったことに気づきます。

 

これは、かなり居心地の悪い体験です。

答えを教えてもらうほうが、ずっと楽です。

しかし、自分の考えを揺さぶられ、

もう一度考え直す経験がなければ、

学びは深まりません。

 

 

寺子屋塾はエレンコスの現代版

わたしの言っていることも

くれぐれも鵜呑みにしないようにと

塾生の皆さんには常々話しているんですが、

指導者の役割は、

「信じるに値する正しい情報」を

教えることにあるという風には考えていません。

 

学習者に一方的に答えを教え込むのではなく、
自分で問いを持ち、自分で考え、

自分で気づくことができるように

関わりたいとおもっています。

このように考えると、

寺子屋塾で行っていることは、

ソクラテス対話術というか、

エレンコス現代版と言えるのかもしれません。

 

もちろん、わたしはソクラテスのような

哲学者ではありません。

 

でも、学習者が無自覚のうちに

身につけてしまったおもい込みに、

自分で気づけるように、

〝問い〟を投げかけることはできます。

 

別の見方を紹介すること、

すぐに答えを与えず、考える時間を確保すること、

必要なときには、ちょっと困ってしまうような

問いかけをして、揺さぶりをかけること・・・

そういう役割も、

指導者にはあるのではないでしょうか。

 

以前、「教えない教育」のポイント12

という記事を書きました。

 

その中では、「正解のない問題にチャレンジする場」

「自問自答の場づくり」「理屈よりも体験が先」

「教育者中心から学習者中心へ」

といったことを挙げています。

 

「教えない」とは、

対話的なスタンスを言っているのであって、

何も教えないことではありません。

 

学習者が自分で学べるようになるために、

必要な環境をつくることです。

 

魚を与えるのではなく、

魚の釣り方を自分で考えられるようにする。

 

答えを与え続けるのではなく、

自分で問いを立てられるようにする。

 

そうした意味で、

寺子屋塾がこれまで大切にしてきたことは、

AI時代になって、

ますます重要になっているように感じます。

AIを使いながら、考えることを明け渡さない

 

AIを使いながら考える主体を明け渡さない

ここまで書いてきたことは、

「AIを使わないようにしましょう」

という話ではありません。

 

AIは、とても便利な道具で

わたし自身も、

調べものをするときだけでなく、

文章を書くときにもAIを使うことがありますし、

考えを整理するときにも役に立ちます。

 

ただ、AIに答えを出してもらった時点で、

考えることを終わらせないようにしたい。

 

その答えの根拠は何か、

別の見方はないか、

自分の体験に照らして、本当に納得できるか、

自分はなぜその答えを受け入れたいと考えたのか。

 

そうした問いを、もう一度自分に返してみる。

AIに反対意見を出してもらうのもよいでしょう。

すぐに結論を出さず、一晩寝かせるのもよいでしょう。

誰かと話してみるのもよいでしょう。

 

大切なのは、AIを使うか使わないかではなく、

考えることをAIに明け渡してしまわないことです。

 

AIに情報を預ける。

AIに作業を任せる。

AIに考えを整理してもらう。

そこまでは、問題ありません。

 

しかし、最後にどう判断するのかは、

自分で引き受ける。

 

自分の体験と照らし合わせる、

必要なら、自分の考えを変える、

このプロセスを手放さないことが、

AI時代に「自分で考える」

ということなのだとおもいます。

 

寺子屋塾は、AIよりも速く正解を出せる人を

育てる場所ではありません。

 

自分の体験をもとに問いを持ち、

他者と対話し、簡単に答えの出ない問題についても

考え続けられる人。

 

そして、最後には自分の判断として、

一歩を踏み出せる人。

そういう人を育てる場でありたいと思っています。

 

AI時代に必要なのは、

AIよりも賢くなることではありません。

 

AIの答えを受け取ったあとに、

もう一度問い直すことです。

 

「本当にそうなのか?」と、

常に自分に問いかけることです。

 

その問いを手放さずに考え続ける時間こそが、

これからの時代における、

人間の学びの中心になるのではないでしょうか。

 

 

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