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コンテキスト・リーダーシップについて 〜山口周さんの動画・文字起こし(その4)〜

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コンテキスト・リーダーシップについて 〜山口周さんの動画・文字起こし(その4)〜

コンテキスト・リーダーシップについて 〜山口周さんの動画・文字起こし(その4)〜

2026/10/01

昨日に続いて山口周さんが2026年4月に出版された

『コンテキスト・リーダーシップ 「最高の上司」と「最悪の上司」は文脈で決まる』

について語られているYouTube動画の
文字起こしテキストの4回目をお届けします。


第1〜3回の記事を未読の方は

今日の記事を読まれる前に以下をどうぞ。

・コンテキスト・リーダーシップについて 〜山口周さんの動画・文字起こし(その1)〜

・コンテキスト・リーダーシップについて 〜山口周さんの動画・文字起こし(その2)〜

・コンテキスト・リーダーシップについて 〜山口周さんの動画・文字起こし(その3)〜

 

昨日までの3回分は1本目の動画を

文字起こししました。


【最高の上司、最悪の上司】リーダーの評価は「印象」で決まる(PIVOT BUISSINESS)

 

今日は、この続編にあたる2本目の前半部分を。

【現代社会の7つの教養】リーダーこそ「文脈」を語れ(PIVOT BUISSINESS)

この動画は、PIVOT CAREERのチャンネルで
2026.4.20に配信されたもので、

インタビュアーMCはPIVOTの磯貝初奈さんです。

 

(文字起こし・ここから)
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磯貝:現代社会においては、どのようなコンテキストをそもそも理解しておく必要があるのでしょうか。
 

山口:コンテキストには正解がありません。どういう物語をリーダーが作って、部下と共有していくか。 ある種の編集能力が、すごく重要になっていると思います。

 

磯貝:今の日本でビジネスをしていくには、こういったところを頭に入れておいた方がいい、というものは何かありますか。

 

山口:一見すると、非常に欠落のない、満足のいく社会が出来上がっているように見える。 しかし、その中で欠落しているものは何なのか。それを考えないと、人を集め、モチベートさせるような事業は、やはりできません。

 

磯貝:「七つのマクロコンテキスト」というものがありましたけれども。

 

山口:この七つの視点で、自分たちの立ち位置や役割、意味づけを考えていく。 そういうことをやらなければいけない時代が来たと思います。日本のメディアだけを見ていると、7つのマクロコンテキストはなかなか読めません。海外のメディアでどういうことが報道されているかというのは、かなり重要なサインになります。(ここまでダイジェスト)

 

 

リーダーに物語る力が必須な理由

磯貝:時代の流れの話も少し出てきました。実際にリーダーがナラティブを打ち出していくために、現代社会においては、どのようなコンテキストをそもそも理解しておく必要があるのでしょうか。

 

山口:コンテキストには正解がないんです。組織も世の中も、ある種の舞台劇のように動いています。その中で、どういう材料を使って、どういう物語をリーダーが作り、部下と共有していくか。そこには、ある種の編集能力がすごく重要になっていると思います。

この編集能力は、たとえば高度経済成長の時代には、典型的には必要ありませんでした。日本全体が伸びていて、みんなが物質的に豊かになることを人生の目標にしていた。 物をたくさん作り、世の中を豊かにして、自分たち自身も豊かになっていく。 そういう大きな物語があったわけです。その中では、リーダーもメンバーも、同じ物語を共有していました。

 

ところが今は、どういうものが良い人生なのか、どういうものが良い組織なのか、どういうものが良い社会なのかが、バラバラになっていますよね。

 

磯貝:時代が共有している大きな物語がない。

 

山口:はい。それが、今の状況です。たとえば政治の状況でもそうです。 今、日本でも社会運動がかなり盛んになってきています。

安全保障の問題が非常に重要だから、それに対応するために備えなければいけない。これは一つの大きな物語です。一方で、日本はかつていろいろな問題を他国と起こしたので、慎重にならなければいけない。これも一つの物語ですよね。つまり、物語が断片化しています。場合によっては、それが軋轢を起こす世の中になっている。

 

ですから、自分が思っている物語と、部下が思っている物語が違う可能性が高くなっているわけです。その中で、「うちの会社は何のために存在するのか」「今このプロジェクトは何のためにやっているのか」「自分たちはどういう役割を果たしているのか」「このチームは何のために存在しているのか」という物語を、昔であれば阿吽の呼吸で共有できていた。しかし今は、相当意図的に、自分で編集しなければいけなくなっています。

 

リーダーに、こういう時代に求められている能力。本書ではコンテキストを「読む」「編む」と二つ言っています。一つは、コンテキストを読解することです。世の中で起こっている変化をつなぎ合わせ、理解することです。ただ、それだけではなく、自分なりにコンテキストを作らなければいけない。読むだけではなく、「こういう変化が起こっている」「こういう変化も起こっている」「うちの会社は今こういう状況にある」「我々の組織は今こういう状況にある」ということをひっくるめて、物語を作る。

 

つまり、 「我々は今、こういうコンテキストの最中にある」「だから、あなたの仕事はとても重要なのだ」 と意味づけをしてあげないと、なかなかモチベーションを持てない時代だと思います。

 

磯貝:そもそもの物語の重要性ということで言うと、やはり物語なしには、なかなかモチベーションも持ちにくい。では、どういう物語を作るのかというのは、その場その場で、置かれた状況次第で、オリジナルに適切な物語を作る必要があるということでしょうか?

 

山口:そうですね。 文脈なりの物語を作っていかなければいけない。臨床心理学者の河合隼雄先生は、もう亡くなられましたけれども、いろいろなところでこう言っていました。「心を病むとはどういうことか。心を病むというのは、自分なりの人生の物語を作れなくなった状況である」と。

 

自分の人生とは何か。自分とは何か。人はみんな物語を持っています。それが真実かどうかは、どうでもいいんですね。 自分なりに信じている物語がある。それは、過去のさまざまなエピソードや出来事を組み合わせた時に、自分なりの人生に意味づけをするということです。それができなくなってしまうと、人はやはり心を病んでしまう。

 

たとえば、すごく分かりやすい話で言うと、戦争になると、実は心を病む人が減るんです。 むしろ減る。

 

磯貝:へえ。

 

山口:敵が明確で、戦わなければいけない。 家族を守らなければいけない。 それが自分の役割である。そうなると、物語は非常にシンプルになりますよね。ですから、戦争になると自殺の数は減るんです。これは非常に単純化して考えると、分かりやすい大きな物語ができて、その中に自分を投じられるようになると、その問題はなくなるということです。

 

ですから、往々にして、その物語を利用して社会を動かそうとする人は、敵対感情を煽ります。旧ナチスドイツなどは、非常に分かりやすい例だと思います。人は物語と一体化できるわけです。ただし、これは非常に危険な側面もあります。リーダーは、物語をきちんと作り、そこに関わっている人たちの人生を意味づけしてあげる力が必要になってきます。

 

磯貝:劇場だとすると、リーダーは良い脚本家であり、演じ手であり、監督でもなければならないという話がありました。ただ、脚本力が強いだけだと、ナチスドイツのような例も過去にはあります。良い流れでマクロコンテキストを活用されていた事例は何かありますか?

 

チャーチルに学ぶ物語の力

山口:僕が本の中で挙げた人で言えば、やはりチャーチルです。ナチスドイツは、ヨーロッパの国々のほとんどを支配下に置き、最後に残ったのがイギリスでした。イギリスとしては、戦うのか、それとも攻めてこないでくれということで仲良くするのか、ぎりぎりの選択を迫られていたわけです。国民の大半は、仲良くしたいと思っていました。もう第一次世界大戦がすぐ前にありましたからね。大勢が亡くなっているので、あんなことは二度とやりたくないと、ほとんどの人が思っていたわけです。

 

しかしチャーチルは、開戦しようと議会で演説し、ラジオでも演説しました。その時に非常に特徴的だったのは、全く楽天的ではなかったということです。非常に苦しい戦いになるだろう、と言いました。しかし、自由主義を信奉する我々の国があり、それは先祖が築いてきた伝統であり、その結果としてイギリスという国が今ここにある。その自由や権利を蹂躙する国がヨーロッパに出てきて、今、我々は彼らとどう付き合うかを決めなければいけない段階に来ている。この自由主義の伝統を育んできた我が国の歴史を考えると、それを守るために戦うべきだと思う。彼はそう言ったんですね。

 

ですから、厳しい戦いが待っている状況だと、人は「きっと勝てる」とか「エイエイオー!」と言いがちです。しかし、彼が言ったのはそういうことではありませんでした。自分たちの文明史的な使命を語ったんです。これから我々が迎える至難は、我々だからこそ背負える。我々にしか背負えない試練なのだ。 そういう意味を与えたわけです。だから、我々は戦場で戦うだけではない。我々はキッチンで戦う。我々は教室で戦う。我々は工場で戦う。

 

つまり、戦場に行っている人以外のすべての人たちが、あの国と戦う使命を負っている。そう意味づけしたわけです。だからこそチャーチルは、歴代で最も偉大なイギリス人として、ランキングを取ると必ず1位になる人物なのだと思います。コンテキストを、本当にマクロに捉えて、人のモチベーションを高めた。そういう意味で言うと、筆頭に来るのは、やはり優れたリーダーです。優れたリーダーは、大体それをやっています。

 

たとえばGoogleの創業者もそうです。検索エンジンというサービスに何の意味があるのか。彼らは、世の中の情報格差をなくす、誰もが情報にアクセスできる世界を作ろうと言いました。あれもマクロコンテキストですよね。民主主義は、情報格差のある世界では成立しない。民主主義が成立するためには、誰もが情報にアクセスできる社会でなくてはならない。だから、我々がそういう社会を作ろう。

そう言ったわけです。

 

今は、ある程度みんなが物質的には豊かな暮らしをできるようになっています。その中で、「自分たちの会社は何のために存在するのか」「自分たちのプロジェクトには何の意味があるのか」と問われる。その時に、マクロコンテキストの中で、自分たちのプロジェクトに意味を与えられるリーダーと、それができないリーダーでは大きな違いがあります。ただ単に、「みんな儲けたいでしょう」「給料が欲しいでしょう」というだけでは、なかなか難しい時代になりましたよね。

 

磯貝:マクロの流れをきちんと読んで、チャーチルのお話で言えば、個人の置かれている状況も想像しながら、そういう人たちの感情をどう動かすかまで考え抜かれている。その上で、言葉としても強いということですね。

 

山口:そうですね。本書でも言っていますが、いわゆるリベラルアーツがなぜ重要なのかというと、このコンテキスト・リーダーシップに関わるからです。リベラルアーツとは何か。それは、人の心がどうやって動くのかを学ぶ学問です。たとえば文学を知っているとか、歴史を知っていることが、すごく重要になります。チャーチルは、第二次世界大戦が終わった後でノーベル文学賞を取っていますよね。 ノーベル平和賞ではなく、文学賞なんです。

 

磯貝:ああ。

 

山口:『第二次世界大戦回顧録』という本を書いて、それが文学的にも非常に高い評価を受けました。彼は、言葉の非常に類い希な使い手だったんです。しかし、それはヒトラーもそうでした。チャーチルのライバルであったヒトラーも、そうだったんです。彼もまた、ドイツが非常に厳しく苦しい状況に置かれている時に、「それはあなたたちのせいではない」「我々の国を食い物にしている奴らがいる」 というナラティブを作り出しました。言葉の使い手としては、20世紀を代表するリーダー二人が頂上決戦をした。その構図が第二次世界大戦だったというのは、非常に面白いですよね。

 

磯貝:面白いですね。

 

 

物語の力をどう身につけるか

磯貝:では、コンテキスト・リーダーシップを鍛えたい、という言い方が合っているかは分かりませんが、コンテキストを正しく読めて、適切に編めて、リーダーシップを発揮できる人材になろうと思った時、まずやれることとしては、リベラルアーツを学ぶこと、歴史などを学ぶことになるのでしょうか。

 

山口:そうですね。ドラマというものに対する感度は、やはりリテラシーだと思います。今この局面において、これをドラマとして立てるとどういうドラマになるのか。 我々はどういう役割になり、どう意味づけできるのか。そういうことです。それは別に、「教養」というような苦しい話ではありません。 たとえばアニメや漫画も、もうこのドラマの宝庫ですよね。

 

『宇宙戦艦ヤマト』や『風の谷のナウシカ』、あるいは『ONE PIECE』などは、読んでいて人の心が高揚するようなコンテキストを、作者が作り出しています。その中で、さまざまな人が助け合ったり、リーダーシップを発揮したりすることが起こるわけです。ですから、ドラマトゥルギーに対する、ある種のセンス、嗅覚のようなものが、すごく重要になってくるのだと思います。

 

磯貝:物語をこれまであまり摂取してこなかった人は、そういうものも積極的に取り入れていくと変わってくる部分がある、ということですね。

 

山口:あると思います。文学作品のようなものももちろんあります。 しかし、日本のドラマや韓国ドラマ、大ヒットした映画にも、必ずその中に非常に分かりやすいドラマの構造があります。人を引きつける物語は、なぜ人を引きつけるのか。それを研究した人はたくさんいます。

 

本書の中では、ウラジーミル・プロップという人を紹介しています。彼は民話を調べました。萌える民話には、三十個ぐらいの要素があると言っています。たとえば、敵がすごく明確である。世の中から何が失われているのかが、はっきり示されている。いけている指導者が出てくる。必ず旅に出る。そういった要素があります。一つのリテラシーとして、「今この局面で、我々はどんな舞台劇を演じているのか」と考える。それは脚本ですよね。

 

敵はこいつで、今失われているものはこれで、それは敵のせいで失われていて、それを我々は回復しに行っている。ヨーダ(スターウォーズ)のような指導者役はこの人。 あなたは、このパーティーの中でこういう強みを持っているキャラクター。そう設定されると、これはロールプレイングゲームのようなものです。

 

磯貝:そういう俯瞰の目線というか、「今どういう状況にあって、この人はどういう立場に置かれていると感じているのか」 という目線が持てるかどうか、ということですね。

 

山口:そうですね。

 

磯貝:今お聞きしながら、より思ったのは、魅力的な物語を紡ぐ力も大切でありつつ、ナチスドイツとの分かれ目ではないですけれども、自分が変な方向に導かないように歯止めをかけることも大事なのかなと思いました。

 

山口:そうですね。これは、やはり倫理や美意識の話になってくると思います。そこには、本当にヒューマニティ、人間性というものが求められます。よく言われるのは、「地獄への道は善意で敷き詰められている(※神学者ベルナルドゥスのことば)」ということです。ナチズムもスターリニズムもポル・ポトも、みんなそうです。 人類史の中の悲劇中の悲劇を並べてみると、世の中に悪いことをしてやれと思って起こったことはありません。必ず、世界を良い場所にしようと思っている人がそれをやるんです。

 

悪人がやれることなんて、大したことはありません。せいぜい殺して10人、20人です。でも、百万人を殺せる人というのは、必ず「世の中を良くしたい」と思って動いている。善意は非常に危険です。ですから、ここには批判的思考の力や哲学も重要になってきます。社会に歯止めをかける。リーダーがそういうことを言い出した時に、「いやいや、これは善意の顔をした地獄への道だぞ」と言い出す人も必要です。コンテキスト・リーダーシップには、間違えると非常に危険な側面もあるということです。

 

磯貝:強力だからこそ、ということですね。正しいコンテキスト・リーダーシップを発揮できるようになりたいと思ったら、まずアクセルの方として、ドラマや漫画も含めて、文学などの物語的な力が必要になる。そして、ブレーキとして、歯止めをかける意味で、倫理や哲学などを学んでいくということになるのでしょうか?

 

山口:そうですね。(16分10秒あたりまで)

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(文字起こし・ここまで)

 

明日は2本目の動画

後半部分を文字起こしします。(^^)/

 

 

※関連過去投稿記事
・山口周「ラーンとマスターを混同してませんか?」(「今日の名言・その20」)

・闇雲に数こなせばいいってわけじゃない!(その1)

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