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コンテキスト・リーダーシップについて 〜山口周さんの動画・文字起こし(その3)〜

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コンテキスト・リーダーシップについて 〜山口周さんの動画・文字起こし(その3)〜

コンテキスト・リーダーシップについて 〜山口周さんの動画・文字起こし(その3)〜

2026/09/30

昨日投稿した記事の続きで

山口周さんが2026年4月に出版された

『コンテキスト・リーダーシップ 「最高の上司」と「最悪の上司」は文脈で決まる』

について語られているYouTube動画の
文字起こしテキスト3回目をお届けします。


第1回、第2回の記事を未読の方は

今日の記事を読まれる前に以下をどうぞ。

・コンテキスト・リーダーシップについて 〜山口周さんの動画・文字起こし(その1)〜

・コンテキスト・リーダーシップについて 〜山口周さんの動画・文字起こし(その2)〜

 

YouTube動画を再度シェアしておきます。

【最高の上司、最悪の上司】リーダーの評価は「印象」で決まる

 

ちなみに、昨日第2回の文字起こしテキストは

31分40秒まで紹介したので、

今日の記事はそれ以後、動画の最後までです。

 


(文字起こし・ここから)
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IBM再生に見るリーダーシップの使い分け(続き)

磯貝:理想形が詰まっているというか、ガースナーは6つすべてをうまく発揮できた方なのだと思います。良いリーダーであるとされる人は、全部できることが多いのでしょうか?

 

山口:はい。これは統計ではっきり出ています。組織のメンバーにアセスメントを取ると分かるんです。「あなたと上司の関係性において、過去を振り返ってみて、こういうことをやっていたことがありますか」ということを、かなり細かな行為レベルで聞く。そうすると、かなり分かります。この6つのスタイルのうち、使っている本数が多ければ多いほど、組織の士気が高く、業績も高いという明確な傾向が出ています。磯貝さん、「人的資本開示」という言葉を聞かれたことありますよね?

 

磯貝:はい。

 

山口:日本では一昨年あたりからだと思いますが、アメリカではもう少し前から、特に上場企業に関して、組織の状況を株式市場に対して開示しなさい、ということが義務づけられました。その中でも、どういうリーダーがどれくらいいるのか、ということが求められるわけです。これは分かりますよね。6つのスタイルのうち、いろいろなものをうまく使い分けているリーダーが多ければ多いほど、長期的な業績が安定し、パフォーマンスが高い。そうであれば、投資家の立場としては、細かいマーケティングや特許や技術開発の話よりも、「どんなリーダーがどれくらいいるのかを見せてください」と思いますよね。それで求められるようになっているわけです。

 

磯貝:どのような局面であっても、それらをこなせる人材がいるのであれば、この会社は大丈夫だということになるわけですね。

 

山口:はい。つまり、いろいろな状況に適応できるということです。自分がよく知っていて、ものすごいエキスパートで、自分の指示通りにやれば必ずうまくいくという領域であれば、指示命令型と率先型でいいでしょう。でも、組織の中で上に上がっていくということは、結局、自分が知らない領域についても責任を持つ範囲が増えるということです。

 

磯貝:今のお話で、良いプレイヤーがリーダーになった時に、必ずしも良いリーダーではないという話も、よく耳にすると思うんです。 あれも、そういうことなのでしょうか。

 

山口:「名選手、必ずしも名監督ならず」という話ですね。まさにその話です。自分が知っているやり方でやろうとしてしまう。自分の経験に基づいて指導してしまうんです。

 

磯貝:良いプレイヤーだと、理想のプレイヤースタイルが見えているからこそ、指示命令型や率先型になりやすいということでしょうか。

 

山口:そうですね。ただ、テクノロジーの進化や世の中の変化がゆっくりだった時代には、「十年前に自分が現場だった時は、こうやっていた」ということで成果が出るかもしれません。しかし、これだけいろいろなテクノロジーが変化し、世の中の状況が変わると、自分がうまくいったやり方で行為として指導してしまうのは、ミスリーディングになりますよね。

 

磯貝:今のお話を聞いていると、よく「老害」と言われるような人は、そういうことなのかなと思いました。

 

山口:はい。指示命令型と率先型で成果が出た自分、というものがある。実は、部下の数が10人ぐらいまでであれば、それで結構成果が出るんです。場合によっては、褒められるんですね。でも、そういう人たちがどんどん組織の中で上がっていき、10人だった部下が100人になり、1000人になる。その時に、そのやり方で通用するかと言うと、100%通用しません。

 

磯貝:チームの規模感によっても、今の自分が置かれている状況では、どういう統率の取り方が良いかは絶対に変わってくるということですね。

 

山口:そうですね。


コンテキストの変化を読む力

山口:本書の中では、コンテキストを「ミクロ」「メゾ」「マクロ」という三つの階層で捉えています。ミクロというのは、目の前の部下と、ここ1年、2年の間でどうだったかというコンテキストです。メゾというのは、中間を意味する言葉です。ここには、自分のキャリアのコンテキストもあります。

 

20代、30代、40代。あるいは、現場時代、課長時代、部長時代、事業部長時代。そういうふうに、自分の人生のコンテキストが変わってくるわけです。自分の人生のコンテキストに当てはめると、現場時代や課長時代にうまくいっていたリーダーのあり方が、部長時代のコンテキストにおいて成立するかというと、それはもう成立するわけがありません。
 

磯貝:過去うまくいったやり方を、状況が変わったのにやろうとしてしまう。それもコンテキストが読めていないということにつながるわけですね。

 

山口:そうです。リーダーシップを行為論として捉えると、「これをやるのが良いリーダーである」「俺はこれをやるのが良いリーダーだ」ということになります。でも、状況が変わる。部署が変わる。場合によっては国が変わる。部下の国籍が変わる。優秀だった部下、そうでもない部下。いろいろな環境が変わるわけです。そういう環境の変化、コンテキストの変化を踏まえずに、金科玉条のごとく、「自分はこのやり方で成功してきた」 ということにとらわれると、失敗してしまいます。

 

時代の変化もそうです。たとえば、バブルの絶頂期にはこのやり方でうまくいったけれども、低成長時代には変わらなくてはいけない。テクノロジーが古かった時代にはうまくいったけれども、新しいテクノロジーが出てきたらうまくいかないかもしれない。ですから、さまざまなコンテキストとの整合性を考えなければ、リーダーはこけてしまいます。

 

磯貝:リーダーを語る時に、「バブル期のリーダー像は良くない例だ」というふうに語られることは多いと思います。でも、当時には当時でフィットしていた部分も当然ある。それを今そのまま移植すると、うまくはいかないということですね。

 

山口:そうです。

 

ガースナーはいつ、何をしたのか

山口:IBMの話に戻ると、『巨象も踊る』という、IBM再生の経緯を記した本があります。あれをざっと読んでしまうと、「すごいな」 で終わってしまうんです。でも、先ほどの6つのスタイルに合わせて、それぞれのページごとに、今何をやっているのかを整理すると、流れが見えてきます。

 

一番最初は、とにかく率先して自分で財務分析をやる。それから、自分の作ったリストラプランを、「この通りにやってくれ」 と示す。これは指示命令ですよね。それとほぼ並行してやっていたのが、傾聴です。ガースナーはもともとナビスコのCEOですから、コンピューターのことはよく分からない。 ITのこともよく分からない。

 

そこで、顧客のキーマンとIBM社内のキーマンに、「ビジネスはなぜうまくいっていないのか」「これから先、どうすればいいと思うか」と聞いて回った。一万人に話を聞いたと言われています。これは何かというと、主に民主型、関係重視型に該当するわけです。その中で話を聞いてみると、当時マスコミが言っていたのは、「IBMは大きくなりすぎたから、小さな会社に分けた方がいい」 ということでした。

 

ところが、顧客の最大の要望は違っていました。いろいろな案件でIT会社を使い分けるのが大変だから、むしろワンストップでいろいろ相談できる会社が欲しい、というものだったんです。だとすると、分割しない方がいいですよね。むしろ、会社を一体のまま保つ。その代わり、物を売るのではなく、ITの力を使って顧客の課題を解決するITサービスの会社になろう。 そこで「eビジネス」というものを打ち出したんです。

 

磯貝:ここでビジョンにつながるわけですね。

 

山口:そうです。ここでようやくビジョン型を発揮する。ここまでに大体、2年から3年ぐらいの時間がかかっています。すぐには出さないんです。「ビジョンを出すのが良いリーダーだ」と言われると、IBMの社長になったのだからビジョンを出さなきゃ、と考えてしまう。「さて、どんなビジョンを出してくれるのかしら」とマーケットも期待している。

 

ところが、ガースナーは2、3年かけているわけです。実際、最後にやったのは、物売りの会社からサービスの会社に変わることでした。そのためには、人材を変えないといけない。人事制度も変えなくてはいけない。そこで、最後は組織づくりに行くわけです。

 

6年から7年の流れをまとめてみると、そういう図になります。その瞬間、その瞬間だけ見ると、「指示命令しかやっていない」「率先しかやっていない」「民主型、傾聴しかやっていない」ように見える。でも、ざっと全部眺めてみると、全部やっていたということなんです。

 

磯貝:これは、初めからこういうふうに動いていくぞと見通しながらやっていたのでしょうか。

 

山口:やっていたと思います。明確にやっていますね。

 

磯貝:タイミングというか、「時が来た」という適切なタイミングでやっていた。同じことでも、少し早くやってしまっていたら結果は違っていた、ということもあるのでしょうか。

 

山口:あると思います。本の中では、「カイロス」と「クロノス」というギリシャ語を紹介しています。両方とも「時間」という意味です。クロノスは、時計的に計量化された時間です。1時間、1カ月、1年という時間ですね。一方で、カイロスは、「時が満ちたタイミング」です。やるべき時にやる、ということです。

 

たとえばビジョンを打ち出すことについて、本書の中では、「信頼の貯金が一定程度たまった時」と言っています。ビジョンを出すのは、就任してから1年目なのか、2年目なのか。これはクロノス的な捉え方です。クロノス的に捉える人がすごく多いんです。「100日目でやる」「1年目でやる」というように。でも、そうではありません。

 

ある程度実績がたまって、関係性も出来上がって、まさに現象として、「あ、この人はリーダーとして優秀だ」「ついていっても大丈夫そうだ」という信頼の貯金が臨界点に達した時に、大胆なビジョンを出す。そうすると、「来た。ついていこう」と思うわけです。信頼の貯金が出来上がっていない状態で、「この人どうなの?」と思っている時に、「eビジネスです」 と言われても、誰もついてこないんですよね。

 

磯貝:ナビスコから来た人が、ちょっと……。「ああ、お菓子を作っていた人でしょう」みたいな感じになりますね。

 

山口:そうです。だから、リーダーはカイロスも正しく読めなければいけないんです。

 

 

事業の成長ステージによって、適切なリーダーシップは変わる

山口:リーダーは、クロノスではなくカイロスで動かなければいけない。これに関連して、もう一つ、思い当たる節が最近あると思うので紹介します。事業の成長ステージによっても、適切なリーダーシップは変わるんです。通常、スタートアップで、人もいない、お金もないという状況になると、やはり指示命令型や率先型で動かなければいけません。スタートアップの経営者が、「あとよろしく」 と言って帰ってしまったら、おそらく会社は立ち上がらないわけです。

 

磯貝:そうですね。 しかも初期にいるメンバーは、経験豊富な人ばかりとは限らないですもんね。

 

山口:そうです。セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジのGoogleもそうですし、スティーブ・ウォズニアックとスティーブ・ジョブズのAppleもそうです。自分たちでプログラムを作って、自分たちでデザインして、ということをやらざるを得ないわけです。それで会社が立ち上がってきました。優秀な人たちもどんどん入ってきます。会社もどんどん大きくなってきました。そういう時に、ずっと指示命令型や率先型をやっていると、優秀な人材はどうなるか。辞めていってしまうわけです。言うことを聞くイエスマンだけしか残らない。

 

自分たちでやりたいと思っていること、自分でやってみたいと思っていることを試せないわけですから。ですから、会社が導入期から成長期に入り、優秀な人たちが集まってきたぞという時には、少しずつ方向だけ出して、あとは任せる。 そういうビジョン型のリーダーシップや、民主型のリーダーシップにならなければいけないわけです。ところが、多くの人はそれができません。

 

でっかいベンチャーのような状態のまま、ずっと行ってしまうんです。成熟期に入ってからは、またいろいろあります。 衰退期に入ってからも、またいろいろあります。先ほどのガースナーの例は、まさに衰退期から、もう一回再成長期に乗るコンテキストでした。衰退期には指示命令型をやる。 一方で、もう一度拡大路線に移れるぞという時には、ビジョン型に変わっていく。

 

どんどん大きくなっているのに、下に任せることができない会社はどうなるか。 いつまで経っても、次の経営者が育たないんです。

いつまで経っても創業者が手を突っ込んで回していく。 優秀な人材が出てこない状況が続いて、もうにっちもさっちもいかなくなる。

これも、コンテキスト・リーダーシップとして整理できます。成長期、スタートアップの導入期、成熟期では、求められるリーダーが違う。 同じリーダーが続けるなら、自分のスタイルをシフトしなければいけない。それができないなら、そういうタイプの人に譲っていかないと、どこかで限界が来てしまいます。

 

磯貝:ずっと自分が手を入れて大活躍するというのは、手応えも得やすいのではないかと想像します。そうやって顔も売れて、「あの人がこの会社の顔だ」というところから、すっと引く。頭では分かっていても、寂しくてなかなかできない、というところもあるのかなと思います。

 

山口:これは、前回PIVOTに出していただいた時には、『人生の経営戦略』というテーマでした。40代、50代、60代で賞賛依存症になってしまうと、引き際が見極められなくなって、晩節を汚すという話をしました。そのケースです。 まさに、コンテキスト・リーダーシップにもつながる話だということです。(1本目動画の最後まで)
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(文字起こし・ここまで)

 

明日、明後日と2回に分けて

2本目の動画を文字起こしします。(^^)/

 

 

※関連過去投稿記事
・山口周「ラーンとマスターを混同してませんか?」(「今日の名言・その20」)

・闇雲に数こなせばいいってわけじゃない!(その1)

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