為末大さんのblog記事「自己責任論と社会責任論」を読んで(その1)
2022/01/21
元アスリート為末大さんが2022.1.20に書かれた
読みました。
それで、この記事の内容について直接言及する前に、
2015.8.1に書かれた
という記事について触れておきたいとおもいます。
結局、こういう風に違いが生まれるのは何故かと
問うてみたとき、その背景に
自己責任をベースに考えているか、
社会責任をベースに考えているかの違いが
あるんじゃないかと気付いたためです。
「あるがままを受け入れることと、現状肯定の違い」
を読みながらまず最初におもいだしたのは、
二村ヒトシさんが書かれた
のなかで「自己受容」と「インチキ自己肯定」 とを
使い分けられていたことでした。
つまり、この「あるがままを受容する」
という言葉はなかなか厄介で、
「そのままの自分でイイんだ」という風に、
肯定か否定かの二元論として
現状をそのまま肯定することと誤解されやすいんですね。
たとえば、寺子屋塾の教室では、
「できない体験が大事」とか
「できることを目的にしない」といった言葉を
よく口にするんですが、
「自己受容」のつもりで書いた言葉が、
「そのままの自分でイイんだ」という風に
解釈されることもすくなくありません。
この「自己受容」とは、
肯定か否定かの二元論としての自己肯定ではなく、
肯定も否定もしない・・・
つまり、良し悪しの自分の判断自体を手放し
ジャッジメントしないことであり、
自分の思考の枠組みから自由になることを言っていて、
「現状肯定」とはまったく違うんですが、
そうしたニュアンスはなかなか伝わりにくいようで。
人間生きていると日々いろんなことが起きます。
まわりの状況は常に揺れ動き変化していますし、
そうしたおもいがけない出来事は、
自分のあり方や生き方を考え直すきっかけというか、
自分の良し悪しのモノサシの基準自体を再考し
問いなおすことに
つながっているんじゃないかとおもうんですね。
でも、往々にしてひとは、
いままで形作ってきた思考の枠組みに対して
無自覚なまま日々を過ごしているため、
目の前のできごとを
そうした自分の思考の範疇でしか捉えられず、
自分の都合の良いように解釈してしまったり、
自分の本心とちゃんと向き合うことなく
やりすごしてしまったりすることがしばしばです。
そうです。大人も子どもも、だれもが例外なく、
ほんとうは、心の底では
「できるようになりたい」とおもっているのです。
ちがいますか?
まわりが自分をどう評価するかに関係なく、
無自覚のうちに形成されてきた
価値観の刷り込みなどを排し
「自分は本当はどうしたいのか?」と
純粋に自身に問いかけたとき、
「自分はできないままでいい」とおもうひとなど
ひとりもいません。
よって、「できない体験が大事」というのは、
できないままでイイとおもっている故の
コトバなどではなくて、
「できない体験」を、いままでもっていた、
「できることがイイことで、できないのはよくないこと」
といった判断のモノサシやおもいこみについて、
自分自身に問いかけ再考するきっかけに
して欲しいんですが、
ほとんどの人にそうした経験が過去にないようで、
なかなか伝わりにくいんですね。
寺子屋塾の塾生のなかにも、
できない体験をきっかけにさまざまな問いが浮かび、
いままで自分の知らなかった側面を発見して
どんどん変化していく人と、
できないままでなかなか変化しない人とがいます。
そうした、できない状態のままで
なかなか変化していかない人たちには、
できない原因を「仕事が忙しい」
「気分がすぐれない」などといった
外的環境や条件のせいにして
自分自身を観ようとしていなかったり、
逆に、外的な環境条件を問うことなく
目の前に起きている現象の
ネガティブな側面ばかりにフォーカスし過ぎて
必要以上に自分を責め、やろうとする気力自体を
失わせてしまっていたりという、
いくつかの共通点があることもわかってきました。
結局、そうした不条理をつくりだしているのは、
世の中の側に原因があるからではなく、
わたしたちの頭の中の思考回路というか
ものの見方の側にあって、
その思考の基軸を
自己責任論の立場から考えようとする人と
社会責任論の立場から考えようとする人の
違いなのではないかと気付いたんです。
でも、このことがほんとうに腑に落ちると、
為末さんが終わりのほうで書かれているように、
「考えても仕方がないことは考えるのを止め、
目の前のことをたんたんとやりつづける」
という所へ行けるんじゃないかと。
さらに言うとこのことは、
吉本隆明さんの共同幻想論に出てくる
「個人幻想」と「共同幻想」は逆立する
という話ともつながっているようにおもうので
そこまで触れたいと考えているんですが、
今日の処はここまで。
続きをおたのしみに!