寺子屋塾

身体が昔覚えていた動きをおもいだす練習

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身体が昔覚えていた動きをおもいだす練習

身体が昔覚えていた動きをおもいだす練習

2022/08/23

火曜は生活デザイン・ヘルス関連の記事を

投稿しています。

 

今日はすこし趣向を変え、広い意味で言えば

ヘルスにつながる話題ではあるんですが、

違った角度から、人間の身体の動きと

脳の関係について考えてみようとおもいます。

 

まず、その取っ掛かりとして

最近練習しているピアノ曲の話から

入ってみようとおもうんですが、
フランス近代の作曲家で、バレー音楽「ボレロ」で

知られるモーリス・ラヴェル(1875〜1937)が

第一次世界大戦中の1917年に作曲した

「クープランの墓」というピアノ作品があります。

 

この「クープランの墓」は「プレリュード(前奏曲)」

「フーガ」「フォルラーヌ」「リゴドン」

「メヌエット」「トッカータ」という6曲からなる

組曲形式の作品で、のちにラヴェルは

「フーガ」と「トッカータ」を除く4曲を

オーケストラ用にも編曲しました。

 

わたしはラヴェルのピアノ曲がとても好きなんですが、

ドビュッシーと違って

技術的に超ハイレベルの作品が多く、

わたしのようなちゃんと先生について習っていない

ピアノ独学者にはなかなか手が出せません。

 

それで、どれか1曲でもラヴェルの曲が

弾けるようになりたいとおもって

最初に練習したのが「クープランの墓」の

3曲目にある「フォルラーヌ」でした。

 

「フォルラーヌ」というのは北イタリアのフリウーリで

生まれた6拍子の舞曲の名前で、

J.S.バッハの管弦楽組曲第1番にも

フォルラーヌが入っています。


ただ、そのバッハの曲とラヴェルの曲以外に

クラシック作品であまり見られないので、

「メヌエット」や「トッカータ」のように

舞曲の形式のひとつだと分かる人はあまりいません。


このラヴェルの「フォルラーヌ」は、気品があり

ちょっと哀愁を帯びた感じのメロディが本当にステキで

素晴らしい曲なのです。

 

一所懸命練習して何とか通して弾けるようになったのが

30才の頃でしたから、

さすがに30年以上経ち、しかもこの間にほとんど

弾いたり練習したりする機会もなかった曲だと、

さすがに弾けなくなっていました。

 

それで、こちらの記事でも紹介した名駅や本陣駅の

ストリートピアノをときどき弾くようになった

今年の5月下旬ぐらいから

すこしずつ練習してきたんですが、

練習する中でなかなか面白い気づきがあったのです。

 

というのは、たとえば、30年前の今日のお昼

何を食べて居たか、なんてことは

30年前どころか1年前であっても

おもい出すことが出来ないんですが、

同じ身体に関係することであっても

一度練習して弾ける様になったことがある

ピアノ曲というのは、身体がしっかり

その「動き」を覚えているようで、練習するうちに

その感覚が少しずつ蘇ってくるんですね。

 

この「フォルラーヌ」という曲は、古典的な

ハーモニーで言うと、♯シャープが1つなので

ホ短調という調性はあるんですが、ラヴェル特有の

複雑な和音が駆使され、♯シャープや♭フラットの

臨時記号も多く、譜読みはなかなかタイヘンです。

 

具体的にどのように難しいのかについて、

くわしくはこちらの記事などを

参考にしていただければとおもうのですが、
弾きにくく難しい箇所がところどころあり、

写真のように、指使いを譜面に書き込んだりしながら

部分に分け重点的に練習しています。

 


こんな感じの譜面を目でひとつひとつ追って、

それを脳に記憶させるというよりも、

昔できていた手の動き、身体の動きをおもいだすことに

意識を向けることの方が大事というか、

その感覚がなかなか面白いなと。

 

ただ、この感覚がどう面白いのかを

ピアノを弾いたことがない人にもわかるように

言語化するのはとっても難しいこともあり、

ベンジャミン・リベットというアメリカの生理学者が

唱えていた準備電位説を紹介しようとおもいます。

 

このリベットの準備電位説というのは、

こちらの記事などにあるように、

ほとんどの人は、自分の意志で身体を動かしていると

おもっているんだけれども、

実際には、身体を動かそうと意志決定をするよりも

0.35秒前にすでに脳波が立ち上がっていて、

意識は動いた後から意味づけをしているにすぎない

という、人間の自由意志の存在を否定しかねない

衝撃の内容です(図版はこちらのページから拝借)。

 

でも、わたしのように楽器を演奏したり、

体験をベースに学習をファシリテートしたりしている

人間とっては、このリベットの実験結果は

至極納得のゆくものなんですね。

 

結局、ピアノをうまく演奏できるかどうかは、

アタマの思考でそれをいかにうまく

コントロールできるかが問題なのではなく、

アタマの思考を手放して身体の無意識的な動きに

どこまで委ねることができるかに

かかっているんだと。

 

また、リベットは自由意志の存在を

否定しているわけではなく、

身体の行動をストップしたりブレーキをかける行為は

意志を働かせることができるんだと言っています。

 

この見解もらくだメソッドを指導する立場にある

わたしには本当に実感できていることで、

とにかく大脳思考が過剰にはたらく人ほど、

日々のプリントがすぐできなくなるので。笑

 

脳よりも身体の動きが大事だということや

考えずに「ただやる」という話が

なかなか通じないんです。

 

詳しく知りたい方は、次の動画をご覧ください。
為末大さん
無意識が知的な理由【為末大学】

るーいのゆっくり科学

人間に「意識」が存在する本当の理由

 


さて、今日はラヴェルの「フォルラーヌ」も練習が

だいぶ進んで、ようやく最初から最後までを通して

弾けるようになり、全体の曲の流れも

おもい出されてきました。

 

ただ、人前で弾けるようなレベルまでには

もうちょっと鍛錬が必要で、

ストリートピアノでも弾ける日がやって来るのを

楽しみにしていて下さい。
 

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