易経64卦のひとつ「火山旅」についての想い出話
2023/04/16
今日は昨年5月から月1ペースで開催している
易経講座初級編の第11回がありました。
毎月64卦を2つずつ読むことを
目標にしているんですが、
その前に各自が占った事例を持ち寄って
理解を深める時間を持っています。
易経にはまず、卦辞という原文があり、
その解説にあたる彖伝(たんでん)と
象伝(しょうでん)をヒントに
内容を読み解いていくわけですが、
たとえば、64卦の56番目にある
「火山旅」という卦の卦辞は次のとおりです。
[卦辞]
旅。小亨。旅貞吉。
[読み下し文]
旅(りょ)は、少(すこ)し亨(とお)る。旅(りょ)の貞(てい)あれば吉(きつ)なり。
[かな文]
りょは、すこしとおる。りょのていあればきつなり。
[直訳]
火山旅の時、小事は通じる。旅路で貞正にして吉。
[大意]
火山旅は旅を意味します。しかし、古代の旅ですから、現代の観光旅行のように、自然に親しみ心躍るような旅ではなく、孤独、苦労、そして移り変わる不安定さや寂しさから逃れるために、あてもなく彷徨う傷心の旅です。自分の居場所が分からなかったり、目指すべき方向性が定かでないこともあるかもしれませんが、こうした時は受け身に徹し、何年先、何十年先の長期的な展望よりも、今日1日を大切に過ごすほうがよいでしょう。旧を守るべき時ですが、外卦の「火(離)」を学問や芸術、内卦の「山(艮)」はそれを志すことと捉えれば、学びによい時期とも言え、自分を磨くための旅とすることです。目的が見出せず、戸惑い悩む運気にある時ですが、自分の理想を放棄することなく着実に進むように心がけましょう。独学よりも徳のある人から学ぶのが吉とされています。
[井上のコメント]
火山旅については印象深い想い出があります。
2006年6月頃、鬱症状がかなりひどくなって
仕事や生活面に大きな支障が生じたため、
治療に専念しようと腹を括り、そのための病院を
探していました。
毎日インターネットを検索していたんですが、
そのなかで、漢方と生活指導を中心にされている
とよおかクリニック院長の
豊岡憲治先生が月水金に更新されていた
当時クリニックは青森市内にあったんですが、
全国探しても豊岡先生のような治療を行っている
お医者さんはなかなか見つかりません。
訝る妻を説得し、病院の近くにある宿を予約して
青森行きを決めたのは8月のお盆過ぎの頃のこと。
結局、9/3から9/9まで1週間滞在したんですが、
その青森行きを占って出た卦が火山旅だったのです。
また、そのとき爻は九三で、
「旅先で宿が火事に遭い、召し使いの若者も失った。
危険である。」という意味の
爻辞(旅焚其次。喪其童僕貞。厲)を
読んだときには、
さすがに絶望的な気分になったものでしたが、
幸い旅館の火事には遭わずにすみました。
でも、その当時の自分の状態が
まさに火山旅の卦の通りで、
どうしてそういう状況のときに、
64もある卦の中でこれを出してくるのか、
何でもお見通しのようで本当に恐れ入ったものです。
火山旅の卦辞「旅。小亨。旅貞吉 」は
短くてもなかなか意味深で、
「すこしは通る」とも書かれていて、
旅行に行くなと禁止しているわけではないし、
必ずしも凶意ばかりを示していません。
内卦「艮」が止まる意、
外卦「離」が麗(つ)く意ですから、
賢にして明なる人を頼りにし、
止まるべきところに止まるとなります。
「貞なれば吉である」とは、つまり、
あくまで行きたくて出かける旅ではないけれど、
明晰さと不動心を失わなければ、
そうした失意の旅の中にこそ、
意外なチャンスが転がっているんだと。
もちろん、こうしていまふり返ってみて
初めて言えることではあるんですが、
その青森行きがきっかけとなって、
時間はかかっても
長年苦しんだメンタルの課題が解決しましたし、
また豊岡先生は、東洋医学に深く通じておられ、
易経を熱心に勉強されていた方でしたので、
まさに火山旅の卦辞に書かれた通りの
展開になったのでした。
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