寺子屋塾

「日本とは何か」から「自分を学ぶ」へ 〜先崎彰容さんのお話と、寺子屋塾の学び直し〜

お問い合わせはこちら

「日本とは何か」から「自分を学ぶ」へ 〜先崎彰容さんのお話と、寺子屋塾の学び直し〜

「日本とは何か」から「自分を学ぶ」へ 〜先崎彰容さんのお話と、寺子屋塾の学び直し〜

2026/10/19

昨日10/18に投稿した記事の続きです。

 

日本思想史を研究されている

先崎彰容さんが2025年7月19日に

PIVOTチャンネルにゲストに招かれた際の
「日本とは何か」と題されたYouTube動画を

5回にわけて文字起こししながら

ご紹介してきました。

 

昨日までの記事を未読の方は

まず以下から先にどうぞ。

・先崎彰容「日本とは何か」 (その1)国際秩序の転換と情報革命――福澤諭吉の警告

・先崎彰容「日本とは何か」 (その2)破壊的な孤独と、国家の軸――日本は何を取り戻すのか

・先崎彰容「日本とは何か」 (その3)ルールをつくる力と、古典に学ぶ日本の姿――本居宣長と「もののあはれ」

・先崎彰容「日本とは何か」 (その4)西郷隆盛と本居宣長から学ぶ死生観——見えなくなった死と、失われゆく営み

・先崎彰容「日本とは何か」 (その5)日本が自画像を取り戻すには――古典、学び直し、知のサロン

 

YouTube動画を再々度シェアしておきます。

 

【日本とは何か?西郷隆盛、本居宣長、福澤諭吉の日本論】


お約束通り、本日の記事のメインコンテンツは、

わたし自身のコメントです。
 

なぜ学習塾のブログで、日本の歴史や思想、

さらには死生観についてまで紹介するのか、

不思議におもわれた方もいらっしゃることでしょう。

 

まずは、そのあたりの話から、

寺子屋塾で実践している学び方との関わりも含め、

改めて言葉にしてみようとおもいます。

 

 

自分を形づくっているコンテキストを読む

(その1)の冒頭にも記しましたが、

今回のお話につながる発端のひとつは、

山口周さんの『コンテキスト・リーダーシップ』を

このブログでご紹介したことでした。

 

10/3に投稿した記事では、

『逃げ恥』のセリフを読み解くことと、

寺子屋塾の学習とのつながりについて触れています。

 

言葉だけを切り取るのでなく、

誰が、誰に、どんな経緯を経て語ったのか、

その背景や関係性まで含めて捉えようとする。

 

問題の正解・不正解だけでなく、

そこに至る考え方やプロセスを見ることでした。

 

ただ、ここでもう一歩考えてみたいのは、

そのように見ている〝自分自身〟のことです。

 

わたしは、何を前提にして、

その言葉や出来事を受け取っているのか。

 

自分では当たり前だとおもっていることも、

生まれ育った家庭、学校で習ったこと、

仕事を通じて身につけた習慣、

その時代の空気などによって、

知らないうちに形づくられてきたものではないかと。

 

先崎さんは、(その3)で、次のように語られています。

 

古典を考えるというのは、やっぱり僕たち自身のことを考えることなんですよ。

 

昔の人の名前や業績を覚えるだけなら、

自分とは遠いところにある話に感じられるでしょう。

 

でも、今の自分が当たり前に使っている言葉や、

大切にしている価値観は

そもそもどこからやって来たのか。

 

そのことをたどっていくと、歴史や古典は、

自分と無関係な知識ではなくなってきます。

 

今年の2月に書いたわたし自身の

生いたちやルーツに触れた次の記事は、

沢山の方が読んで下さったんですが、

未読の方はぜひアクセスください。

・亡き父の誕生日に毎年想うこと

 

もちろん、「日本とは何か」と「自分とは何か」は、

同じ問いではありません。

 

けれど、日本という社会の中で暮らしてきた

わたしたちが、自分のことを考えるとき、

その背景を抜きにすることもできないんですね。

 

目の前の出来事のコンテキストを読むことから、

自分を形づくっているコンテキストを読むことへ。

 

今回の動画を紹介したかった理由のひとつは、

そんなところにありました。

 

 

「自分で学ぶ」は「自分を学ぶ」ことでもある

寺子屋塾で実践しているセルフラーニングは、

文字どおり「自分で学ぶ」ことですが、

同時に「自分を学ぶ」学び方でもあります。

 

自分のことは、自分が一番よく知っている、と

つい、そうおもってしまうんですが、

実際には、自分についての説明や

イメージを持っているだけで、

自分の中で何が起きているかは、

案外わかっていないのではないかと。

 

先崎さんは、(その1)で、

情報に動かされる人間について、

こんなふうに語られていました。

 

自分で判断しているつもりなんだけれども、実は大きなうねりの一つになって動かされている。

 

これは社会の大きな動きについてのお話ですが、

日々の学習においても、

自分の「〜つもり」と実際との違いに、

繰り返し出会います。

 

このくらいならできるつもりだったのに、

やってみるとできなかったこと。

 

逆に、苦手だとおもいこんでいたことが、

少し取り組み方を変えることで、

意外にできてしまった、ということもあります。

 

「毎日これだけやろう」と自分で決めたのに、

なかなか続かないこともあるでしょう。

 

そんなときに、「やっぱり自分は意志が弱い」と

結論づけてしまえば、それまでのことです。

 

でも、決めた量が多すぎたのか、

生活の中に取り組む時間がなかったのか、

わからないところをそのままにしていたのか、

実際に起きていたことを見る余地があります。

 

寺子屋塾の学習では、解くだけでなく、

採点、やり直し、記録まで自分で行います。

 

そうしたプロセスを通じて、

自分の見積もりやおもいこみと、

実際の自分とのずれが見えてくるんですね。

 

「自分はこういう人間だ」と決めていた、

その自分こそ、本当は

よく知らなかったのかもしれない。

 

できない体験が大切なのは、

自分のダメさをおもい知るためではありません。

 

知っているつもりだった自分を、

具体的に知り直す

リフレーミングの入口になるからです。

 

 

自分軸とは動かない答えを持つことなのか?

先崎さんのお話には、「日本の軸」や

「自画像」という言葉が何度も登場しました。

 

ただし、それは「日本は素晴らしい」と言って

自信を取り戻せばいいということでは

ありませんでした。

 

むしろ、そうした安易な自尊心への警戒が、

繰り返し語られていたのが印象的でした。

 

(その3)には、こんな言葉もありましたね。

 

今の日本人は、心の弾力性を取り戻したほうがいい

 

「自分の軸を持つ」というと、

絶対にぶれない信念や、

何を聞かれても答えられる確信を

手に入れることのように感じられるかもしれません。

 

でも、一つの見方にしがみついて、

違う考え方を受けつけなくなってしまったら、

それは自分軸があるというより、

ただ単に凝り固まっているだけではないかと。

 

自分にはこう見えていたけれど、

別の時代には違う受け取り方があった・・・

 

今まで当然だとおもっていた価値観も、

唯一のものではなかった・・・

 

古典や歴史を学ぶことには、

そんなふうに、自分が立っている場所を

少しずらしてみる働きがあるのだとおもいます。

 

その一方で、何でもすぐにわかったことにせず、

よくわからないままであっても、

根気よく付き合ってみることも大切なんですね。

 

(その4)で、先崎さんが

お祖母さんとお盆の馬や牛を作った

想い出を語られていたところも、心に残りました。

 

日本についての立派な説明より、

そうした何げない日々の営みの中に、

大事なものがあったのではと、

ご自身に丁寧に問いかけておられたので。

 

やっぱり、聞き耳を立てるような、そういう謙虚さが必要かなと思います。

 

知識が増えた分だけ、

わかったと言い切れるようになるのでなく、

自分のわかっていなさに気づき、

これまで聞こえなかったものにも

耳を傾けられるようになる。

 

「自分を学ぶ」というのも、

そんなふうに、自分についての結論を急がず、

見方を日々アップデートしていくことではないかと。

 

 

自分で考えることと一人で抱え込むことは違う

(その2)で、先崎さんは、

こんなことも語られていました。

 

しかも、孤独なのに、やたらと「自分で考えろ」と言われている社会でしょう。

 

記事の終わりですこしコメントしましたが、

「自分で学ぶ」姿勢を大切にしている当塾なので、

この言葉を聞き流すことはできません。

 

「自分で学ぶ」「自分で考える」には、

命令形が使えないというパラドクスがあることは

わかりますか?

 

だって、指導者のわたしが「自分で考えなさい!」

「自分で決めなさい!」と言うから、

塾生たちが言われる通りにしているというなら、

自分で考えてなどいないし、決めてもいなくて

全くセルフラーニングになっていませんから。笑

 

また、自己観察や内省的な姿勢というのは、

人から言われたからという理由で

一朝一夕で実現することではないのは

もちろんのことですが、

自分の代わりに決めてもらわないことと、

人の助けを借りないこととは、別なんですね。

 

自分のことが自分ではよく見えていないのなら、

なおさら、他の人とのやり取りが大事になりますし、

そこが当塾で〝対話〟的関わりを

重視している理由です

 

あれこれ話しているうちに、

初めて自分の考えに気づくこともあるし、

人から問いかけられることで、

自分が見ていなかったとわかることもある。

 

寺子屋塾では、どの教材をどれだけやるか、

どう進めるかについては

指導者のわたしはいろいろ提案しますが、

最終的に本人が決められるようにしています。

 

つまり、わたしの役割は、

学習者に代わって正しい判断をすることでなく、

学習者自身がどうしたいのか、

自分の状態を見つめ、自分で判断していけるように

自分の姿を映し出す鏡となり、

伴走者であろうとすること。

 

こちらの記事でも書いた

「揺さぶりをかける」というのはそういう意味です。

 

本を読むことも、ある意味では、

自分とは違う視点、違うところに立つ人から

揺さぶられるような出会いと言ってよいでしょう。

 

古典なら、別の時代に生きた人の言葉を通じて、

今の自分自身だけでは持てなかったような

〝問い〟に出会えます。

 

らくだメソッドの開発者・平井雷太さんは、

〝セルフラーニングはひとりではできない〟と

常々言われていましたが、

「自分を学ぶ」ということは、

自分ひとりで、

自分の内側だけを見続けることではありません。

 

人や本や教材と日々継続的に関わる中で、

自分という人間が少しずつ浮き彫りになってくる。

 

その意味で、主体的な学びとは、

孤立した学びとは違うのです。

 

 

学びが動き始めるまでのガイド役として

最後に、(その5)で、先崎さんが

大人の学び直しについて語られていた箇所を、

もう一度引用します。

 

そのときに皆さんが一番困っているのは、勉強の仕方が分からないことと、どの本がいい本なのか、出会い方が分からないことです。

 

さらに、

 

だから、軌道に乗るお手伝いをする。

 

とも語られていました。

 

ここを読まれて、

わたしがこの動画を紹介したかった理由に、

ピンときた方もいらっしゃるのではないかと。

 

現在、寺子屋塾に在籍している

塾生の8割以上が成人で、

10年以上にわたって在籍している人もいます。

 

開塾して32年経つので、

いろいろな経緯があってそうなったんですが、

学校の勉強を子どもに教える場所という

一般的な学習塾のイメージとは、

実際にはだいぶ違っているんですね。笑

 

大人になって改めて学びたくなったけれど、

何から始めればいいのか、

どんな本から読んだらいいのか、

そうした相談に応じることも、

わたしの大切な役割になっていますし、

読書会やコミュニケーションをテーマにした

ワークショップも継続的に開催しています。

 

とはいえ、誰にでも同じ本を薦めて、

「これを読めば正解がわかります」

と言いたいわけではありません。

 

その人が今、何に関心を持ち、

どんなことに引っかかっているのか。

 

その話を聞きながら、ここからなら

入っていけるかもしれない、という入口を

一緒に探していく。

 

(その5)の記事の最後に、

先崎さんとは違う角度から

日本人を読み解く素材として、

松岡正剛さんの『千夜千冊』を紹介したのも、

一つの説明だけで話を閉じずに、

別の本や問いへとつながるような

入口を置いておきたかったからです。

 

もちろん、ガイド役をしているわたし自身も、

正規の学問を積んだ学者ではありません。

 

日々、塾生の皆さんとの対話や、

こうした記事を書くことを通じて、

自分の見方を問い直し日々学び直している一人です。

 

先崎さんのおっしゃる「知のサロン」とも、

そんなところで響き合うのかもしれません。

 

リベラルアーツということも語られていましたが、

「日本とは何か」を学ぶことは、

自分の外側にある大きな対象について、

知識を増やすだけのことではないので、

その中で生きてきた自分を、

改めて学び直すことでもあるのではないかと。

 

そして、その学びを一人だけで抱え込まず、

本や人との出会いを通じて続けていく。

 

寺子屋塾も、ともに問いを育てていけるような

学びのコミュニティでありたいとおもっています。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

●2021.9.1~2024.12.31記事タイトル一覧は

 こちらの記事(旧ブログ)からどうぞ

 2025年に投稿した365記事はすべて

 今日の音楽シリーズで12/31に全リストを掲載

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
☆寺子屋塾に関連するイベントのご案内

 10/25(日) 10:30~ 易経入門講座〔第3期〕
      
14:00~ 易経準中級講座 第17回

 11/1(日) 13:30~17:30 寺子屋デイ2026②
 11/8(日) 13:30~16:30
  『レゾナント・コミュニケーション』読書会 #3

 11/23(月・祝) 10:30~18:30 寺子屋Notion
      未来デザイン考程ワンデイセミナー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◎らくだメソッド無料体験学習(1週間)

 詳細についてはこちらの記事をどうぞ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。