寺子屋塾

起きた問題を楽しむ

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2021/08/05

起きた問題を楽しむ

当塾で開塾時から主軸教材として使っているらくだメソッド開発者・平井雷太氏は、教材開発にあたり〝起きた問題を楽しむ〟野口整体の考え方に大きな影響を受けたと言われています。

昔から「水は低きに流れ、人は易きに流れる」(孟子のことば)と言われてきました。つまり、体験を積み重ねて経験に変わるプロセスには、大なり小なり苦痛が伴うのが必然とも言い換えられるわけですが、そこに防御本能がはたらいて、その苦を避けよう、逃げようとしてしまう人が少なくありません。ジョン・デューイは、経験主義教育を提唱しましたが、そうした考え方や実践が現実の日本の教育においてなかなか拡がって行かないのは、もしかするとそんなところが原因なのかもとおもえてきました。

でも、苦と楽を区別し、苦を苦だとおもう心そのものに囚われや執着があって、結局のところ自分の姿勢次第なんだと気づいた人には、それこそ「鬼に金棒」で、どんな体験からでも学ぶことが可能になってしまいます。ひとは学ぶためには能力が必要だと考えがちですが、そうではなく、体験したことが豊かな学習につながるかどうかは、能力の問題というよりも学習者自身の姿勢が大きく関与していることが案外見逃されているのではないでしょうか。

いえ、学ぶ側にすべて責任があると言いたいのではありません。体験学習をコーディネートする側が、学習者自身が潜在的にもっている課題を見えるように可視化し、気づきや発見が生まれ易い場づくりに努めない限りは、学習は深まって行かないことを理解し実践することこそ必要なのかも・・・と、そんなことをこの「人に三楽あり」から始まる野口晴哉さんの言葉から思った次第です。

写真の本はいずれも、整体協会の出版部にあたる全生社から出ているもので、野口晴哉さんの著作は一般の書店では手に入りにくいものが多いんですが、現在では「整体入門」「風邪の効用」などがちくま文庫で読むことができるようになりました。

 

人に三楽あり

一は過去に於ける苦を回顧して 今日あるを想う楽しみなり

二は現在の苦に堪える楽しみなり

三は苦の去り行く時を想う楽しみなり

称して追苦の楽 迎苦の楽 去苦の楽と言う

 

人は過去を顧み 未来を想い 現在に処す これ人の特権なり

これなければ禽獣と異ならず

されど他の動物になきこの能力も

その駆使を誤らば ただ人の苦を増すに役立つのみ

而して 人の楽を以てこの三ならしめよと主張す

それ人の楽しみなり 人としてのみ味わい得る楽しみなり

人言わん「されば楽しみなし」と

然り 楽しみ無きが真楽なり

 

※整体協会創始者・野口晴哉のことば(月刊『全生』1994年4月号より)

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