秋山さと子さんによる易経(イー・チン)
2021/10/18
易経について書かれた書物はたくさんありますが、今日はわたしが一番最初に読んだ本のご紹介を。
ただ、もう40年近くも前のことなので、記憶が定かで無い部分もあり、はっきり断言できないんですが、いま記憶している限りにおいて、わたしが一番最初に読んだ易経についての本は、初版発行が1980年3月31日となっている秋山さと子さんが書かれた別冊宝島シリーズ『イー・チン 3枚のコインが宇宙の意志をあなたに告げる』でした。
冒頭に置かれている秋山さんの文章がとてもわかりやすく、易経という本に何が書かれているかという理解にもつながるので、それを原文のままご紹介。
なお、本書に書かれた64卦の説明については、こちらのページから読むことができます。
(引用、ここから)
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易経(イー・チン)とは何か その歴史と成り立ち
●易経の魅力
易は英語では「イー・チン」または 「アイ・チン」と呼ばれて、最近、世界の若者たちの間で、誰も知らないものはないほど、もてはやされている。
3枚のコインを投げて、その表と裏の数によって運命の変化を知るという易は、中国三千年の歴史を背負う占いであり、東洋が誇る神秘の一つなのだ。
古代の中国の人は、この銀河宇宙は8つの主要な要素によってできているものと考えた。
その8つの要素を重ねて、64の宇宙と人間の状況を考えたのは、神話的世界の王・潽次であったという。
しかし、これを解釈して、託宣の言葉である卦辞をつけたのは、紀元前12世紀の伝説的人物、周の文王である。
また、ライン(線)の言葉である爻辞を考えたのは、文王の子であった偉大な改革者の周公だ。
さらにイメージ(象伝・しょうでん)や、判断であるジャッジメント(彖伝・たんでん)をつけ加えたのは、かの有名な孔子である。※注参照
こうして、「易経」が生まれたのだ。
『易経』の現代訳や英訳は古くからあったが、若い人にアピールするようになったのは、W・ウイルヘルムの独訳が、さらに英訳されて、「ウイルヘルム ・バインズ版」が世界に普及してからだ。
ウイルヘルムは易の意味を正しく解釈して、これを大自然のものと、人間の心との交流の書だと考えた。
これまでは、単に私的な損得を知るための実用書と考えられていた『易経』が、宇宙の動きと共に、心の中に潜む無意識の動きを知るための、自己分析の本として、若者たちのものとなったのだ。この本の言葉も、主としてウイルヘルムの訳によっている。
●易はなぜ当たるのか
ルネッサンスの思想家たちは、人間の運命の背景に、マクロコスム(大宇宙)とミクロコスム(小宇宙)との動きの、不思議な調和と一致を見出した。
大自然の摂理であるマクロの世界と、私たちの心の内部にあるミクロの世界とは、不思議な形で影響し合い、1つの法則に従って動いているというのだ。
科学の黎明期に生きた偉大なオカルティストや錬金術師たちは、この不思議な関連をよく知っていた。
しかし、物質文明に片よりすぎた現代の科学者たちは、自然のものの研究にのみ追われて、この大事な秘密を解く鍵をどこかに忘れてきてしまった。
それ以来、自然科学と人文科学、ものと心は別れたまま、再び出会うチャンスを失った。
場の理論を展開して、現代の理論物理学の一つの頂点に立ったW・パウリは、ものの研究をつきつめた結果、再びものと心との間の微妙な関係に気がついた。
現代の心理学の一つの頂点を極めたC・G・ユングも、心の研究の果てに、この二つの世界の不思議な関わりにたどりついた。
二人の協力で生まれたのが、この関係を説明しようとする同時共調性(シンクロニシティ)の原理である。
この原理はまだ明解に証明されていない。
しかし、その現象が実際に存在することを、最もよくあらわすものが易であり、中国五大書(五経)の一つである『易経』に書かれている内容なのだ。
易の説く運命の流れは、我々がものだと思っている大宇宙と、心の中の小宇宙が、実は一つの法則によって動いていることを示している。
日月や星の動きによってわかるように、大宇宙が正確な円を描くものならば、私たちの心の中にも、整然としたマンダラの世界が、これと対応して動いているのだ。
もし、私たちが限りない宇宙に向けてスペース・シャトルを飛ばすなら、心の中のミクロの世界にも、瞑想による目を向けよう。
宇宙の動きを読みとることで、心の中の神秘を探る易は、瞑想の極致だ。宇宙のプラーナ(気)を一身に集める、東洋の叡知だ。
私たちは、普段、宇宙の動きの法則も知らず、心の深奥の秩序も見ないで、ただ盲目的に、運命にあやつられて、自分の不幸を嘆いてばかりいる。
あなたがもし賢くて、易の言葉のすべてを読みとることができるなら、ここにその神秘の扉を開く鍵がある。
それは、あなたの運命を開くだけではなく、心とものとの関わりを明確にして、人類の未来の世界の扉も開くのだ。
易は変化の書だ。宇宙を構成する8つの大きな要素が重なり、64の状況を描きだす。その64の一つが、あなたの置かれている今の状態だ。
それが陰と陽との気の消長によって、さらに他の63の状況に移り変わる。
そしてものと心が交流する4千年以上もの時の流れを、易はイメージによって展開する。
だからこそ、易は当たるのだ。そして、世界の若者たちの間に、熱狂的に迎えられているのだ。
時々刻々と変わる心の動きを知ると共に、『易経』の叡知を通して、銀河宇宙の壮大な現象が次々と移り変わる場に参加しよう。
あなたもコインを投げて見ないか。
引用ここまで
※注:「象伝、彖伝をつけ加えたのは孔子である。」とあるように、象伝、彖伝を含む「十翼」と呼ばれる易経の注解書について、古来より孔子の作と考えられてきましたが、最近の研究では否定され、今日では、古代の占いの書だったものを儒教の経典にするために、春秋時代から漢代にかけて、孔子門派に与する人々によって編纂されたというのが通説になっています。