寺子屋塾

〝理念〟って何だろう?(その2)

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〝理念〟って何だろう?(その2)

〝理念〟って何だろう?(その2)

2022/01/04

昨日書いた記事の続きです。

 

「理念って何だろう?」という話でしたね。

 

人は誰もが一度は、人生理念つまり
「いったい何のために生きているのか?」とか
人生の目的や意味について

考えることがあるんじゃないかとおもいます。

 

でも、水や食料は、人が生きていく上で
絶対に欠かすことのできないものですが、
人生理念は、生きていく上で
どうしても必要なものではありません。

 

人生理念が明確になっていなくても、
生きて行くことはできるからです。

 

よって人は、生きがいの感じられる
より良い有意義な人生を歩みたいと願ったときに、
ハッキリとした人生理念を
求めるようになるのではないでしょうか。

 

そもそも理念とは何なのか、
どのようにすれば理念を明確にできるのか、
学校では教えてもらえませんし、
そうした方法について書いてある本も
ほとんどお目にかかることがないのですが、
大和信春さんの『和の実学』(1989年・博進堂)
『企業理念』(1992年・博進堂)は、
こうした〝理念〟について考えようとするときに
指針となる希有な書物です。

 

わたし自身、寺子屋塾を起業する直前のタイミングで
「未来デザイン考程」を学べて、

そして、この2冊と出会えたことを
本当にラッキーだったとおもっていますし、
理念について考えようとするときには
常に拠り所としてきた書物なんですが、

グローバルな視点と深遠な思索に基づいて書かれ、
内容を理解するのは容易ではありません。

 

たとえば、『和の実学』には

次のようなことが書かれています。

 

活きた企業理念の要件 
目的性......その企業が何のためにあるのかが示されている。 
倫理性......社会的正義にかなう高度な価値を目指している。 
指針性......あらゆる業務活動に判断のよりどころとなる。 
英知性......守っていけば成功できる知恵を網羅している。 
本望性......切実な真の願いに発している。 
共有性......皆が共に支持することができる。 
永遠性......末永く追求の対象として魅力を保つ
具体性......観念的・抽象的でなく実際に達成への道がたどれる。

 

※大和信春『和の実学』所収
 五.和道の実践 2.経営と和道(P.194~195)より

 

「活きた企業理念」とあるので、

企業活動に当てはまっても

それ以外の場合には当てはまらないんじゃないかと

感じられる方がみえるかもしれないのですが、

この『和の実学』という書物には、

「処世・経営・治世の奥義、そして日本人の使命」

という副題があり、人生理念や国家理念に

触れて書かれている箇所もあって、

「そもそも〝理念〟とは何か?」という

根本的な考察をふまえたうえで

書かれているようですし、

主体が企業以外の組織体であっても

ほぼ適用できるように感じました。

 

大和さんの著書『企業理念』には、

この8つの要件について、14ページにわたって

詳細な説明が加えられているんですが、

未来を予測して実現すべき将来像を描くことと、
理念を策定することの違いが
わたし自身ハッキリわかっていなくて、

長いこと混同したままだったのです。


つまり、わたしが「指針性」というコトバの

意味内容をようやく理解できたとおもえたのは、
2014年頃のことですから、20年以上の

長い月日がかかったことになります。(^^;)

 

「未来デザイン考程」のレクチャーをするときも

この8つの要件すべてを兼ね備えた

理念を言語化し表現するのは至難の技で、

最初に考え始めたときから
10年ぐらいかかるとおもっているぐらいで
ちょうどいいかもという話をしているくらいです。

 

 

さて、それで、
昨日投稿した記事の冒頭でご紹介した
今回の記事を書くきっかけになった言葉、

「理念て大事かもしれんけど、

 時に重きを置きすぎて、

 人が理念の方に合わせないと

 いけなくなることってあるな。

 美しい言葉ばかりが上滑りして。

 そうなると思考ばかり優位になってね。

 ………」

についてです。

 

前記したとおり、わたし自身、

20年以上経ってようやくわかったことですし、

たぶん多くの人が同じように感じることが

少なからずあるんじゃないかとおもうんですが、

実現すべき将来像とは似て非なるものなんですね。

 

理念は、目的のひとつであることには

変わりがないのですが、

大脳思考優位な状態で生み出された「美しい言葉」

「達成すべき目標」「崇高なるビジョン」

といったものとはちょっと違っていて、

もし、すぐ実現してしまうようなものであるなら、

逆に理念としては、あまり相応しくありません。

 

理念とは、どこへ向かって行こうとしているのか、

その〝方向軸〟〝指針〟のことであって、

むしろ一生かかっても実現してしまわないくらいの

手に届かない遠い場所にあればこそ、

日常の行動やあらゆる判断の拠り所としての

〝指針〟になり得るわけで、
たとえるなら、道に迷ったときにも
自分が進もうとしている方向を知ることの出来る
〝北極星〟のような存在です。

 

よって、もし理念が人の行動を制限し、
人が理念の方に
合わせないといけなくなるということが
起きてしまうようであるなら、
それが理念として本当に適切なのかどうかを
問うことのほうが先でしょう。

 

つまり、理念に重きを置きすぎた帰結として

そうなってしまうというより、
その理念が、心の奥底から湧き出てくるような

切実な真の願いに発したものであるかどうか、
つまり、大和信春さんの8つの要件のうちでは
とりわけ「本望性」と「指針性」という面において
適切に策定されたものかどうかを
検証する方が先であるように感じました。

 

理念がとても大切なものであることについては

言を俟たないのですが、

完璧な理念というのもあり得ず、

その理念がほんとうに相応しいのかどうか、

見直しや検証が必要だったり、

現状を把握し分析することの方が

重要なことも少なくなく、

とらわれすぎないようにしたいものです。

 

理念については、語り尽くせないほど

まだまだいろいろあるんですが、キリが無いので、

これで一区切りとし、

折を見てまた書いてみようとおもいます。
 

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