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為末大さんのblog記事「自己責任論と社会責任論」を読んで(その4)

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為末大さんのblog記事「自己責任論と社会責任論」を読んで(その4)

為末大さんのblog記事「自己責任論と社会責任論」を読んで(その4)

2022/01/24

昨日の続きです。

 

為末大さんの2022.1.20付けblog記事

「自己責任論と社会責任論」について書いています。

 

「個人」の集合体が「社会」と捉えるのであれば、

「個人」と「社会」が

別箇に独立して存在しているわけではなく

この両者はグラデーション、

つまり連続性のある「概念」です。

 

しかも、「個人」と「社会」は、

卵とニワトリの関係のように、どちらかが

先に存在していたわけでもないのだから、

そもそも、「自己責任」か「社会責任」か、

どちらが良いか、どちらが正しいかと

二者択一で考え、分けようとしてしまう姿勢自体に

問題の根っこがある、と昨日書きました。

 

だから、「個人」と「社会」という概念、

言い換えるなら、人間の関係意識というものが

どういうプロセスを経て生まれてきたかについて

人類の歴史を踏まえ、

原理的に考察しようとした書物が

吉本隆明さんの『共同幻想論』であり

『心的現象論』なんだ、と。

 

そして、この吉本さんが捉えた人間の関係意識は、

「個人幻想(自己幻想)」「対幻想」「共同幻想」

という3つの概念で表現され、

いわゆるアカデミックな心理学や社会学の捉え方とは

異なる独創的なものなので、説明がタイヘンなんですが、

その特徴を2点挙げるなら、以下の通りになります。

 

1.自分自身に対する関係意識(個人幻想)を

  対人関係のひとつとして位置づけていること

2.他者との対人関係を二者間の関係(対幻想)と

  集団的関係(共同幻想)とに分けていること

 

つまり、対幻想という概念を想定することで、

それが緩衝材のような役割を果たし、

「個人」か「社会」かというような、

二者択一の発想や対立的関係が

生まれにくくなるわけです。

 

ただ、生命の誕生は「精子と卵子の結合」から

始まるわけですし、

お母さんのお腹から生まれて来ない人は

誰一人としていませんから、

原理的に考えようとするのであれば、

対幻想が一番先にあって、

そこから共同幻想や個人幻想が、

分化し、派生していくと捉えたほうが

自然なんですが。

 

それで、吉本さんの関係意識について

具体的に言及するまえに、今日は

対幻想的な関わりをイメージしやすい

インタビューゲームについて

触れておこうとおもいます。

 

このインタビューゲームは、もともと

らくだメソッドの指導者育成プログラムとして

生まれたものなんですが、

寺子屋塾の学習プログラムのうちで、

なぜ、このインタビューゲームが

最も重要な位置づけにあるのかということも

考えてみてください。

 

以下、寺子屋塾生の塩坂太郎くんが

2018年4月25日に書いたblog記事

そのまま引用しました。

 

(引用ここから)

***************
「インタビューゲームをこれまで体験して、

自分の中に何が残ったのだろう?」(2018-04-25)
インタビューゲームについて振り返る


寺子屋塾の仲間がインタビューゲームを

50人とやった報告会に参加した。


その会に参加したことで、

自分自身のこれまでのインタビューゲームの体験を
振り返ることができたように思う。


僕自身はおそらく20回〜30回ほど

インタビューゲームを行った経験があるのだけれど、
インタビューゲーム1回1回での

気づきはもちろん毎回あるのだけれど、
このインタビューゲームを積み重ねた体験の中で、
一体自分の中に何が残っただろう?

ということについて考えてみた。


そうやって振り返ってみると、

インタビューゲームの3つのルールはすごく

今の自分にとって大きな助けになっていると感じた。
— — — — — — — — — — — — — —
ルール①「何を聞いてもいい」
→聞く側に“聞く自由”を保障します。
自己規制せず、常識に囚われず、聞いてみた
いと思ったことは何でも聞いてみましょう。


ルール②「話したくないことは話さなくていい」
→話す側に「話さない自由」を保障します。

聞かれた質問すべてに答える必要は
ありません。安心して「ノー」を伝えて下さい。


ルール③「聞かれていないことも話していい」
→話す側に「話す自由」を保障します。

仮にインタビューする側から

質問が出なくなってしまった場合でも、

話す側の人は自分の話したいことを

話してもらって構いません。

ルール②③は、対等に対話できるよう

ルール①に拮抗して設けられたものです。
(以上インタビューゲームのルール、注意事項より)
— — — — — — — — — — — — — —
この3つのルールが自分の身に
染み込んできているように感じた。


だから、人とのコミュニケーションにおいて、
自分が今、どんな聞き方をしているのか、

どんな話し方をしているのかということが、
この3つのルールを元に、

自分の状況をみつめることができる。


そして、自分自身だけでなく、

相手のコミュニケーションの状況もみえてくる。


インタビューゲームの体験をする以前は、
人とのコミュニケーションにおいて、
自分は今どんな姿勢で相手と向き合っているのか、
相手はどんな姿勢で自分と向き合っているのか、

という状況を全く判断できなかった。


それは、相手とのコミュニケーションが

どのように成り立っているのかを見つめる
自分の基準・軸がなかったからだろう。


けれど、このインタビューゲームの3つのルールは、
その基準・軸になる。

だから、人とのコミュニケーションにおいて、
このルールが、自分の状況を見つめる

助けになってくれるのだと思う。


仕事をするには、誰かと関わらなければいけないし、
生きていくためには、自分以外の他者と

関わらずに生きていくことは難しい。
だからこそ、

コミュニケーションが大事と言われているけれど、
コミュニケーションとは、はたしてなんなのか?
インタビューゲームの体験をする以前に、
その問いと向き合うことはほぼなかったし、
聞くこと、話すことについても

考えてきたことはなかった。
(問いすら浮かんでこなかったと言ってもいいだろう)


僕自身もそうだし、多くの人の悩みは、

この人との関わりにあると思う。


けれど、その悩みをどのように

解決していいのかわからないし、その状況を、

どのように捉えていいのかさえ分からない。
でも、インタビューゲームのこの

3つのルール設定は、
こういう人と人との間に生まれている状況を、
3つのルールには、状況をより細分化して、

あらゆる方向から把握する手助けになるだろう。


その手助けによって、

今の現状を見つめることができれば、
きっと自分も変わることができるし、
相手の状況に合わせた対応も

できるようになるのだと思う。


そういう意味で、インタビューゲームを通して、
この3つのルールが、自分自身の身に沁みこみ、
日常のコミュニケーションの中で

この視点から自分自身を、そして目の前の人を

捉えられるように少しでもなったことは、
自分にとってとても大きな財産になったように思う。

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