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原生的疎外・・・すべての生物がもつイノチの力について

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原生的疎外・・すべての生物がもつイノチの力について

原生的疎外・・すべての生物がもつイノチの力について

2022/11/29

火曜は生活デザイン・ヘルス関連の話題を

投稿しているんですが、

今日は生活や健康の一番の土台となる

生物、イノチの力、はたらきに関わる話を。

 

というのは、一昨日書いた記事
人間の精神作用を表した『五蘊無常無我』 に

人間の精神作用を「色→受→想→行→識」という

5つのプロセスで示したものと書いたので、

その続編と捉えて頂いてもいいでしょう。

 

その記事に、

3番目までのプロセス「色→受→想」は、

人間以外のすべての生き物が持っていると

書いたんですが、

「それってホントかな?」とおもわれた人も

いらっしゃるでしょうから、

まずはそれについて。

 

たとえば、半月ほど前にNHK-E-テレでやっていた

「サイエンスZERO」という番組で、

「単細胞の“知性”に迫る 謎多き粘菌の世界」

という特集が組まれていたんですが、

単細胞生物で、脳も神経もない

「粘菌」(冒頭の写真)が迷路パズルを解いて、

最短距離で餌にありつく様子が紹介されていました。

 

コレってすごくないですか?

脳も神経もないんですよ。

どうやって判断してるんでしょう?

 

この画像は、国立大学附置研究所・センター会議の

北海道大学電子科学研究所 中垣俊之教授の

活動紹介記事から拝借したんですが、

中垣先生はサイエンスZEROの番組にも

出演されていました。

 

中垣先生いわく、

粘菌は複雑な状況のなかで、生存のために

最適な行動をすることができる。

 

これは、脳や神経系の有無にかかわらず、

あらゆる生き物が持っている

基本的な知能の一端であり、

究極的には物理法則に還元できる

全生物共通の基盤だと予想しています。

 

たとえば、野球で外野手がフライを追いかけていって

キャッチする時、選手は弾道計算などするのではなく、

ただボールを見上げる角度が一定になるよう走る。

 

このような浮遊物捕獲のアルゴリズムは、

虻や魚にも存在しており、姿形が大きく異なっても、

ある基本設計を共有しているようです。

(前記website記事より・太字は井上)

 

すなわち、「色→受→想」は具体的に書くと、

色・・外界の対象物から

受・・刺激をキャッチして

想・・快、不快により選択する

というプロセスですから、

ネコがひなたぼっこすることも、

ヒマワリなどの花が太陽の方を向いて咲くのも、

ゴキブリが人の気配を感じると

逃げていくのも、 笑
みな同じで、すべての生物にもともと備わった

イノチの力でありはたらきといえるんだと。

 

また、吉本隆明『心的現象論序説』には、

人間を含むすべての生物に存在する心を

「原生的疎外」とし、

人間のみに存在する心を「純粋疎外」と

書かれているんですが、

この考え方のどこが画期的で優れているかというと、

生物一般の心と人間の心を、別の物としてではなく

同じイノチをもった生物として

連続したものとして捉えているところと

言ってよいでしょう。

 

つまり、「色→受→想」を「原生的疎外」とみなし、

「行→識」を「純粋疎外」とみなしたとすれば、

お釈迦さまの五蘊観と

吉本さんの心的現象論の心の捉え方は

かなり類似していると気がついたわけです。

 

それで、この五蘊観(五蘊無常無我)が

四諦「苦集滅道」の四番目「道」にあたり、

苦を滅する方法論であると書いたんですが、

どうしてこれが「方法論」なのかわかりますか?

 

つまり、このように仕組みとして理解することで、

どのようにそれを扱えばいいかが

わかるというところです。

 

それと、前述したように、生物一般の心と人間の心を

同じイノチをもつ生物として連続的に捉えているので、

人間と人間以外の生物との違いを比較して

意識できるというところが大事なんですね。

 

たとえば、健康な人は

健康であることを意識しないように、

人間以外の動物は、健康を意識しません。

 

つまり、病気になることで、

人間は初めて健康の有難みがわかるわけですが、

有り難さがわかるでとどめればいいものを、

アタマの中で「健康」という実体のない

観念を作りあげ、

「健康」を渇望するようになってしまうというのが

人間のサガであり、それが苦を生んでしまう・・。

 

 

つまり、人間は大脳というモノを持ったがために、

結果として現象化しているところだけで、

「何とかしよう」としてしまうわけなんですが、

その姿勢にはおのずと限界があるのです。

 

たとえば、怒りをコントロールしようとする

「アンガーマネジメント」という

プログラムがあるんですが、

何に対して、どのような怒りを持つかについては、

識(ヴィニヤーナ)の前段階にある

行(サンカーラ)の領域に、

どういうものが、どういう形で蓄積されているかで

決まってくるわけで、

人によって違ってきてしまうのです。

 

よって、その行(サンカーラ)領域を正常化し

整えようとするアプローチを抜きにして、

結果として現象化してしまった怒りを、

後から何とかコントロールしようしても、

とても難しいし、大きな負担になることは、

きっと容易に理解して頂けることでしょう。

 

そして、識(ヴィニヤーナ)の領域だけで

何とかしようとすることは、大脳を酷使し、

結果として、「色→受→想」の領域と

「行→識」の領域を分断し、

アンバランスな状態を生んでしまうわけで、

これを仏教では「四苦八苦」のうちのひとつ、

「五蘊盛苦(ごうんじょうく)」と

呼んでいるわけです。

 

人間も原生的疎外の領域をもっているわけですから、

「色→受→想」という五感を働かせながら実体験し、

外界から得た情報をもとに考えるというのが

すべての生物がもっている精神構造の

理に適った心の使い方といえるわけです。

 

以上の話の一端を、つぶやき考現学のスタイルで

書いたことがありますので、併せてご覧ください。

お釈迦さまが実践されたこと(つぶやき考現学No.86)

 

※冒頭の写真はこちらのページから拝借しました。

 

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