脳や神経のない単細胞生物〝粘菌〟に悩む力がある?
2023/01/10
火曜は生活デザイン・ヘルス関連の話題を
投稿しています。
生活や健康の一番の土台となる
イノチの力、はたらきに関わる話ということで、
去年11/29に書いた記事で、
粘菌のことをご紹介したことがありましたね。
単細胞生物で、脳も神経もない「粘菌」が
迷路パズルを解いて最短距離で餌にありつく様子が
NHK-E-テレ「サイエンスZERO」という番組で、
紹介されていたという話を書いたんですが、
今日は、前記の記事内でも紹介した
国立大学附置研究所・センター会議の
中垣俊之『粘菌 その驚くべき知性』に書かれている
面白い話をもう一つご紹介。
粘菌も生き物なので、自分のイノチを維持するために
餌を食べなければいけないので、
その餌に好んで近づいていくという話は
当然といえば当然のことだし、
わかりやすいとおもうんですが、
嫌いなモノや苦手なモノっていうのもあるんですね。
たとえば、醤油など塩分の高いものや
マラリアの特効薬キニーネは嫌いなようで、
濃度の高いキニーネに対しては、
すべての粘菌がキニーネを嫌って
避けるように振る舞うんですが、
濃度が下がるとあまり逃げなくなってきます。
6ミリモルのキニーネを使って実験した結果が
面白いんですが、その実験方法は次の通り。
縦に細長いレーンを用意し、
レーンの途中にキニーネを塗っておきます。
その端に粘菌を置くと、
粘菌は反対の端に向かって動き出すんですが、
キニーネのところまでやってくると、
粘菌は立ち止まります。
その立ち止まっている時間は、
短いもので数時間、長いときは1日にも
及ぶそうなんですが、
粘菌はあるとき突然行動を開始するんですね。
それで、実験に用いる粘菌は、もともと一つの
同じ個体だったものを切り分けたもので、
ほとんど同じ条件、環境で実験しても、
つぎの3種類の行動に分かれるとのこと。
1.キニーネ帯を乗り越えて前進していく型
2.キニーネ帯を避けて引き返す型
3.1と2の中間型とでも言うべきもので、
身体の一部が前進し、一部が引き返し分裂する型
面白くないですか?
脳も神経もない粘菌にも
「立ち止まる能力」「悩む能力」があって、
もしかすると、
性格の違いみたいなものもあるのかも。
ちなみに、立ち止まる時間の長さと
その後の行動の選択との間には
相関関係はないようです。
嫌なことに立ち向かうばかりが正解じゃなくて、
逃げるのも仲間割れするのも有りだって
教えてくれているみたいですね。
※写真はアミホコリ(粘菌の仲間)