ブレヒト『真実を書く際の5つの困難』より(今日の名言・その60)
2023/06/05
わたしはただ、 書かねばならないのだ。
たいせつなのは、 真実をいうかということである。 |
ベルトルト・ブレヒト(1898~1956)は、
1928年に書かれた戯曲『三文オペラ』で知られる
ドイツの劇作家で詩人、演出家でもある人物。
頭つかって生きようたって
アタマで飼えるのはシラミだけ
ひとはこの世のゴマカシすべて
気がつくほどにずるくはない
計画たててわかったつもり
裏まで読んでも両方ともハズレ
この世はそんなに悪くはないのに
もっと欲しがるのがワルイくせ
しあわせもとめかけ出すときも
走りすぎてしあわせを追い越すな
ひとはとかく欲に目くらみ
努力のつもりが思いこみ
これは『三文オペラ』で歌われる
人間の努力は長続きしないの歌詞です。
ここに紹介したのは、
高橋悠治さんが翻訳されたもので、
前記の岩波文庫に出ているものとは
ちょっと違うんですが、
この曲は、坂本龍一さんのプロデュースによって
1982年にリリースされた
収められていました。
ちなみに、このアルバムを初めて聴いたのは、
わたしは23歳のときで、
坂本さんがアレンジメントとピアノ伴奏を
担当されていたからだったんですが。
また、このアルバムには、
ブレヒトが歌詞を書いたアラバマソングが
入っているんですが、
YouTube動画にあったので貼り付けておきます。
アラバマソングは、1925年に書かれ、
マルティン・ルター説教集のパロディ
『家庭用説教集』に収められているんですが、
1930年に上演された
『マハゴニー市の興亡』でも使われました。
おときさんの唄と教授のピアノ伴奏による
このブレヒト・ソングは本当に絶品!
さて、冒頭の言葉についてのコメントです。
わたしの父は1931年に生まれたんですが、
日本ではその年に満州事変が起き、
翌年には5.15事件が起き、
犬養毅首相が暗殺されています。
ドイツでナチス党が政権与党となり、
アドルフ・ヒトラーが首相に任命されたのが、
その翌年で1933年のこと。
ナチス党政府は、
ブレヒトの著作をすべて焚書の対象とし
発禁処分となって
ブレヒト自身は亡命生活を強いられることに。
ブレヒトがこの「真実を書く際の5つの困難」を
書いたのは、その翌年1934年のことでした。
5つの困難とは何か?
本書の冒頭には、次のように極めて簡潔に
この小論の要旨が示されています。
1.真実を書く勇気
2.真実を認識する賢明さ
3.真実を武器として役立たせる技術
4.その人たちの手に渡った場合に
真実が力を発揮できるような人たちを
選び出す判断力
5.真実を多くの人々の間に広める策略
ナチズムの圧制のもとにあって、
作家、文化的活動家に宛てたこの指針は、
ドイツの著作家防衛同盟がパリで出していた
反ファシズム雑誌「現代」に匿名で掲載され、
ブレヒト自身も1935年には
ドイツ市民権を剥奪されています。
そうした時代背景をイメージすることで、
この文章に込められたブレヒトの想いが
垣間見えるようにおもいました。
そして、ちょうど1ヶ月ほど前の今頃に
流れていたんですが、
このブレヒトの言葉は、
けっして日本とは無関係の遠い国のものでも、
遠い過去のものとも限らないということを、
肝に銘じておきたいと。
ブレヒト自身が
『三文オペラ』の「モリタート」を歌っている
貴重な動画を見つけましたので
聴いてみてください。
最後に、加藤登紀子さんが
3/28に亡くなられた坂本龍一さんへの追悼コメントを
blogに公開されていました。
1982年暮れ、
『愛はすべてを赦す』がリリースされた直後、
坂本さんがDJを務める
NHKーFM サウンドストリートに
加藤登紀子さんがゲスト出演されたことがあります。
当時わたしはその番組を
リアルタイムで聴いていたんですが、
41年前の貴重な録音がYouTubeにありました。
音質はそれほど良くはありませんが、
アルバム『愛はすべてを赦す』のことが中心で、
前に歌詞を紹介した
「人間の努力は長続きしない」も
28分あたりから聴くことができますよ〜
※上記画像は加藤登紀子さんのblog記事より。
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