算数プリントで人生をデザインする塾・・・?(「きぼう新聞」インタビュー・第1回)
2021/09/25
一昨日の記事では、4年前に行われたわたしへのインタビュー記事をご紹介したんですが、その年にはもうひとつ別の媒体よりインタビューを受けています。
残念ながらその記事を掲載いただいた媒体「きぼう新聞」は、2019年11月に発行された125号を最後に休刊されてしまったため、現在は購読したくてもそれが叶いません。
その経緯については、旧ブログ「往来物手習い」のこちらの記事に書いたんですが、インタビュアーは、きぼう新聞の特派員で、寺子屋塾生でもある安永太地くんです。
正味4時間近いインタビューだったので、かなりのボリュームになり、「きぼう新聞」には6回に分けて連載されました。
当時から4年近くの時間が経過していることもあり、内容を大きく変えない程度に若干の修正を施し、安永くんからのコメントも含め、掲載当時と同じように、6回に分けて紹介することにしました。
まずは第1回「算数プリントで人生をデザインする塾・・・?」です。
(記事、ここから)
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名古屋の地下鉄東山線本陣駅から10分ほど歩いたビルの3Fに趣深い名前の教室がある。それが寺子屋塾 中村教室だ。平成の現代に〝寺子屋〟を屋号とする塾の代表 井上淳之典さんにお話を伺いました。
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安永:寺子屋塾っていったいどんな場所なんでしょうか。まずは、そのあたりからお聞かせいただけますか?
井上:「寺子屋」と聞けば、ほとんどの人は「よみかき、そろばん」を思い出されるんじゃないでしょうか。教室では、開塾した1994年よりらくだメソッドをメインに使っているんですが、らくだメソッドは、算数 (数学)・英語・国語の3教科あって、ひとことで言うと、自分ひとりでも学習を進めていける自学自習スタイルの教材なんですね。自分で勉強していくためには、読み書きや計算などの基礎学力が必要ですから、内容はまず日常生活を送るための土台というか、最低限必要なものだけに絞り込んであるんです。昔の寺子屋には、実学主義的な色合いが濃かったようで、実生活や仕事ですぐに役立つ実践的な能力を重視するところがあり、江戸時代の庶民の識字率は、諸外国に比べてかなり高かったなんて話もあるようで。でも、そうした計算や読み書きの力というのは、プリントをやりさえすれば誰でも自然に身についてゆくことなので、それ自体を目的にする必要はありません。それで、大事にしていることは、学ぶ内容よりも、学び方や学ぶプロセスで、とりわけ重要だと考えているのは、自分で決めて自分でやる、つまり能動的に学ぶ姿勢。それと、うまくいかないことがあっても、そういう自分自身をちゃんと認めて受け入れる自己受容力ですね。
安永:すぐには理解できませんね(笑)。実際にはどんな方が学んでいますか?
井上:開塾時から今日まで、2才から74才までの500名以上の方が門をたたかれました。現在の塾生は大人の方が8割以上になっています。ホームスクーリングって言ってるんですが、らくだメソッドは、自宅学習が中心の教材で、教室に通えなくても通信で学べるので、2割ほどが京都とか静岡とか遠方の人。きぼう新聞の地元・刈谷や知立に住んでいる塾生もいます。また、教育・医療・福祉といった人相手の仕事をしている人が多い傾向はありますが、ITの技術職の人もいて、本当にさまざまな人がいます。
安永:大人が計算プリントを解くんですね。
井上:寺子屋塾を始めた当初は、小中学生がほとんどでした。わたしも子ども対象の塾を開いたつもりだったんですけど、子どもがプリントをやっているのを横でみていたお母さんが「わたしもやってみたい」と言い出したり、大人で学習する人がだんだん増えていったんです。実は、誰からも強制されない環境で、「自分で決めて自分でやる」っていうのは、子どもだけの課題じゃなくて、大人だからといってちゃんとできているわけではないんですよ。〝セルフデザインスクール〟というコンセプトは開塾時に決めていて、対象者を絞らず、年齢不問で誰でも受け入れる姿勢でいたんですが、2008年頃からは、大人の人たちも積極的に塾生の対象として意識するようになって、「算数プリントで人生をデザインする場所」などとお話しするようになりました。
安永:ただ単に、計算プリントを解くだけの教室じゃないことは感じているんですが、「算数プリント」と「人生をデザインする」ってことが全く繋がりません。
井上:そうですよね〜(笑)。
安永:さらに、「教育」と言えば、ほとんどの人が 「教え育てること」と思われているでしょうが、 井上さんは「教えない教育」をキャッチフレーズ にされているんですよね?
井上:はい。
mmmmmmmmmmmmmmmmmmm
和やかに笑う井上さん。頭に「?」が浮かぶ僕。 この寺子屋塾の根幹を全6話で探っていきます。
まず、井上さんがどうやって今に至ったのか、順を追って聞いてみますね。次回は題して「井上さんのルーツと教えない教育に出会うまで」です。 どうぞお楽しみに〜!
※2017年7月10日発行「きぼう新聞」第69号より