寺子屋塾

「大脳思考より内臓感覚が大事って」どうしたら実感できますか?

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内臓感覚が大事ってどうしたら実感できますか?

内臓感覚が大事ってどうしたら実感できますか?

2021/10/09

今日は、教室で塾生から受けた質問と、問われたときに話した内容を整理して書いてみました。

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Q:井上さんが「大脳思考より内臓感覚が大事」ってよく言われてるんですが、あまりピンと来ないんです。どうすれば実感できるんでしょうか?

 

A:そう、ピンとこないですよね。昨年つんどくらぶでもとりあげた三木成夫さんの『内臓とこころ』を読んでいるうちにわかってきたんですが、最近ではけっこう多くの皆さんが、本を大脳思考で読んでるんですね。そんなことアタリマエじゃんかっておもうかもしれないけれど、読んでピンと来ないのは、実は当たり前であって、アタマで解釈しようとして読んでいるからなんじゃないですか?
 
つまり、本を書いている人は、生まれも世代も経験してきたことも自分とはまったく異なる他者なわけで、そうした人が書いた言葉を、自分の今までの知識や経験を手がかりに解釈しようとすれば、ピンと来なくて当然なんです。何かがわかるということには、いろんなレベルや次元が存在しているとおもいますが、すくなくとも、解釈と理解は違いますから。

 

相手の言葉を自分の文脈に引き寄せて読み解釈しところで、理解にはなかなかたどり着けない。書かれた内容をちゃんと理解しようとおもうのなら、自分の知識や経験は一旦脇に置いて、相手の文脈に飛び込んでいくというか、その文章を生み出した人の思考回路に自分から迫っていかなければいけないんじゃないでしょうか。

 

それで、読書会つんどくらぶでは、アタマよりも先に身体をうごかす・・・つまり、声に出して読む音読ということをまず最初にするわけですね。むかし寺子屋で子どもたちが意味もわからず論語を読んでたっていうのは、それなりに理にかなっているわけで。同じ1冊の本を複数人で読んであれやこれやと意見交換していると、自分の解釈と他の人の解釈がどれぐらい違うかがわかるし、どうしたら読んでる本がわかったことになるのか、という問いが浮かんで、もしかすると、本の読み方そのものを変えていくきっかけになるかもしれないないわけで。

 

あと、本の内容をそのまま手を使って書き写すというのもいいですね。写経というのは、書かれている言葉を頭でわかろうとするのではなく、身体をうごかして言葉を身体に染みこませていくアクションではないかと。むかし文豪といわれていたような人、歴史に残るような文学者は、ほとんどみな先人作家の作品の書写を日課としていたって言われていますね。

 

大脳思考がダメっていうんじゃないです。大脳思考を止めるというのは、人間であることを止めるようなものですから。笑 まず身体をうごかしてから次に頭を働かせるという順序というか、内臓の感覚が主としてあって、思考はあくまでそれを補うものでしかないという、主と従の関係性をとり違えないようにするのが大事なんじゃないですか。

 

こんな感じで語っていくとキリがなくなりそうなので、内臓感覚を理解・・というか実感するためのヒントをひとつだけ。『内臓とこころ』は、おしっこの話から舐める話、胃袋感覚と続いて、その話の総括として、内臓感覚の土台をつくっているのは「食と性」という話が載っています。でも、「食と性」が大事だからといって、グルメになればいいとか、セックスやりまくればいいって話ではありません。笑

 

むしろ現代人は、大脳思考でしか人間の性というものを捉えられなくなっているから、AVのようなものが流行るんじゃないですか。たとえば、わたしが江戸期の春画がおもしろいとおもって関心をもつようになったきっかけは、渡辺京二さんの『逝きし世の面影』などを読んで、明治維新より前の日本人の性に対する感覚が、現代人とはまったく違っていたと気づいたことがきっかけだったんです。

とはいえ、春画だって江戸庶民にとってのポルノグラフィ的側面があったでしょうから、「現代のAVが大脳思考で、江戸期の春画が内臓感覚」なんてふうにパキッと割り切れるなんてことはあり得ません。それでも、当時の人々が春画を「笑い絵」と呼んでたことは最も象徴的で、すくなくとも現代のAVよりは、春画の方が、笑いとかユーモアといった人間の感情や感覚的な要素が色濃かったんじゃないかとおもうんです。

 

それで、3年ほど前にネットで読んだ記事に、ストリップ劇場で号泣する女子が増えているって話がありました。

 

急増「スト女(ストリップ女子)」の実態~劇場で号泣する女たち 2018.4.8

ふつう男性しか行かないんじゃいんじゃないかっておもわれるストリップ劇場で、なぜ女性が号泣するほど感動するのか、ってことを考えてみてください。もしかしたら内臓感覚とは何かを考える手がかりになるかもしれないので。

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