寺子屋塾

一人ひとりが未来の創造者

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2022/09/13

火曜は生活デザイン・ヘルス関連の記事を

投稿しています。

 

今日は、25年前なので四半世紀も前になるんですが

大阪の正食協会が発行する

マクロビオティックの月刊雑誌に原稿を頼まれて

書いた原稿をご紹介しようかと。

 

というのは、今日9/13は次男25歳の誕生日で、

次男は近鉄四日市駅近くに本社がある

IT関連の企業に勤めているので、

ふだん平日は会社に行っているんですが、

昨日、今日と夏休みをとっていて、今日は

粗大ゴミをゴミ処理場まで一緒に捨てに行ったり、

昼食を一緒に食べたりしていて、

次男が産まれた25年前の今日のことを

おもいだしていたからです。

 

桑名の市民病院で次男が生まれたのは、

その日の午後1時頃でした。

 

前記した、頼まれた原稿を書いている最中に

病院から「生まれそうだ」という知らせが入り、

ちょうどお昼頃に、書きかけの原稿を持って

病院に向かったんですが、

その日のうちにその原稿を脱稿できたので、

とても印象深く覚えています。

 

寺子屋塾の仕事を始めて3年目、

四半世紀も前に書いた文章ですから、

現在のわたしの状況とはかなり違う部分はありますが、

基本的な考え方や姿勢は今も変わっていません。


また、その当時のわたしのポジションや視点、

世相なども感じ取れ、いま読み直してみても

それなりに面白いかもとおもい、

このblogを書き始めて間もない頃にも

「生活デザイン」って何だろう? という記事で

一度紹介したことがあるんですが、

そのときには付表として載せた

「食についてのアプローチ、パラダイムシフト表」

を省略してしまったので、

今日はそれも一緒にご紹介することにしました。

 

ちなみに、おまけのつもりで載せた付表も

「これだけでも、井上さんの食に対する姿勢が

 よくわかりますね」と好評をいただいたんですが、

「右側が良くて左側が良くない」ということが

主張したいわけではありません。

 

「何が正しいか?」と正解を考えようとすると、

どうしてもそうなってしまうんですが、

そのように考える姿勢自体、

左側のアプローチを脱していないわけですし、

答は1つではありませんから、結局大切なのは

現状をしっかり把握したうえで、

個別に異なった対応を柔軟に行っていくことで、

各々が「どうしたいか?」を自分に問い、

自分に合ったやり方を模索していくことですね。

 

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一人ひとりが未来の創造者   井上 淳之典

 

いつも「今」が新しい時代
21世紀がいよいよ間近ということですが、キリスト教研究者の間では、実際にイエスが誕生したのは紀元前4年というのが定説ですから、今年はイエス生誕後2001年めにあたり、すでに21世紀という新しい時代は始まっているとも言えるわけです。おそらく、新しい価値観とは誰かが作って与えてくれるものではなく、一人ひとりが作っていくものであって、それは今に限らずいつの時代でもそうなのではないでしょうか。ですから、常に「今」が新しい時代と考えたいものです。まだ見もしない未来について、予言めいたことをまことしやかに語るという不遜なことにならないよう、あくまで今まで自分自身が体験してきたことや、具体的に今やっていることをもとに書いてみたいと思います。

 

病気の体験から学んだこと
もともと自分は生まれも育ちも名古屋ですが、1992年前の春に7年勤めた学習塾を退職して上京し、日本CI協会の研修生となりました。そして、東京での生活が一年半過ぎた頃に急に結婚話がまとまって四日市に住まいを移し、1994年の秋に「楽食らくだ塾(1998年に「寺子屋塾」と改称)」というスペースを作りました。新しい土地でほとんどゼロからのスタートでしたから、できることは何でもやってみようということで、自然食品や書籍を扱うお店と、平井雷太氏のらくだメソッドを使った塾を一緒に始めたのでした。
そもそも自分が食養と出会ったきっかけは、16才のときに肺が突然パンクする自然気胸という病気になったことでした。自然気胸は悪性の病気ではありませんが、西洋医学では原因不明で決定的な治療法はなく、医者から「身体に無理のかかる仕事には就けないだろう」と言い渡され絶望したこともありました。しかし、そのおかげで西洋医学に疑問をもち、医者に頼らず自分の身体と自分で向き合うようになったのです。さまざまな健康法を模索する中で桜沢如一の『永遠の少年』(日本CI協会刊)と出合い、食養やマクロビオティックの世界観にひかれ、玄米菜食を始めたのが23才のときでした。それまで砂糖漬けの食生活だったため、始めてすぐ病状が好転しただけでなく、肉体的にも精神的にも大きな変化が訪れました。しかし、食養をどんなにまじめに実行しても回復しないところが残り、食事を少し崩せば体調がすぐに狂ってしまうという状態が長く続いたのです。
そして、その転機は食養を始めて10年を過ぎた頃に訪れました。病気のお陰で食養に出合えたのにもかかわらず、病気を治すことばかりに躍起だった自分にようやく気づいたのです。それからは、病気に感謝し病気の自分をそのまま受け入れ、本当にやりたいことに意識を向けるようになったのですが、すると不思議なことに、食養だけで回復しなかった所までが良くなり、食事の内容で体調が左右されることも少なくなったのです。
このような経験から、病気には何をどのように食べるかという問題以前に、病気をどのように受けとめるかという心の問題が大きいことに気づかされたのですが、他の方のお話しを伺ってみても、「玄米が身体に良いと聞いて始めたが、長続きせず挫折してしまった」「病気を治す食事指導を受けたが、その通り実践できず悩んでいる」「理想と現実とのギャップが大きくストレスを感じる」「家族の理解がなかなか得られない」など、食にこだわることが新たなとらわれを生んでしまっているケースが少なくありませんでした。
また、食養をまわりの人にすすめても、病気のような切実な問題でもなければ、実際にやってみようという人は少なく、「こんなにすばらしいマクロビオティッ クが何故普及しないんだろう?」「まわりの人にどのように伝えて行けばいいのだろう?」という問いが自分の中に生まれたのですが、仕事として食に関わるようになってからはいっそう切実な問題になり、食養の方法論的なことよりも、実践を阻んでいる心の壁をいかに外すかに関心が向かって行ったのです。

 

自分自身への信頼を回復すること
今までさまざまな場所で食のお話しをさせていただく機会がありましたが、この5年の間に内容もやり方も随分変わってきました。その中で重要なキーワードとして浮かび上がって来たのは、「違いと出合う」「双方向コミュニケーション」の2つです。価値観の押しつけや強制は反発を生むばかりで、一方通行の情報伝達からは新しいものは何も生まれません。一人ひとりにもともと備わっている「生きる力」がどうすれば自然に引き出されてくるかを考える上で、コミュニケーションの問題が深く関わっていることに気づかされたのです。そこで、食の話をするような場にも、気づいたことを書き留め、交換して読み合ったり、相互インタビューのような参加型のワークを取り入れることを試みるようになったのです。
たとえば、名古屋にあるウイルあいちにて1997年4月から始まった「食生活のセルフデザインスクール(全5回・主催GAIAの会)」は、私ひとりが伝えたいことを一方的に講義するのではなく、参加者の皆さんが現実に直面している問題や学びたいテーマをその場に持ち寄って共有し、相互に学び合えるような場づくりを心掛けました。内在する感性を磨いて自分自身への信頼を回復すること、
無双原理(PU)というモノサシを自分の食生活をデザインする道具として使いこなせるようになること等をテーマとしました。
最近「インフォームドコンセント」という言葉をよく耳にするようになりましたが、医師主体の医療から患者主体の医療へと、患者の自己決定権を尊重しようとする動きが起こっています。古い価値観が崩壊し、新しい価値観が生まれている今のような時代においては、自分の外側にあるシステムや価値観を頼りにしてそこに合わせようとするのでなく、一人ひとりが自分自身の内側から沸き起こってくるものを大切にしながら、価値観の違いをお互いに認め合うことが求められているように思うのです。
最初は別々だと思って始めたお店と塾の仕事でしたが、このように「食」と「教育」と「医療」は深いところでつながっていることに気づかされることになったのです。

 

自分の中に「問い」も「答え」もある
また、この3年間にはお店と塾だけでなく、講演会、シンポジウム、映画会、ビジネスゲームのセミナー、アワ歌を歌う会など、さまざまな企画に関わってきました。その結果、活動内容がしだいにボーダーレスでホリスティックなものになって行き、さまざまな人々やネットワークを結ぶ役割を果たしてきたようですが、これは決して最初から計画していたわけではありません。あくまで自分が今やりたいこと、今の自分にできることをその場その場で直観的に判断しながら実行して来ただけなのです。そのためか、ある方からは「井上さんは、何をやろうとしているのかよくわからない」というご意見もいただきましたが、「井上さんがやろうとしているのは、教育でも、医療でも、エコロジー運動でもない、今までの枠組みにあてはまらない新しいことなんだね」と言って下さった方もありました。そもそも本人自身がよくわかっていないのですから、人にわかろうはずもないわけですが、結局人間は自分自身のことが一番わからないのではないでしょうか。だからこそ、この「わからなさ」を大切にし、さまざまな人との出会いを通して、自分を知り自分を見つめて行くことが欠かせないように思うのです。
現在、フッと浮かんだことや日々の出来事などを書きとめたものを「考現学」と呼び、それをFAXやEメールなどで多くの人と交換することを実践していますが、何と言っても今はこれが一番面白いです。桜沢は自学自習、自問自答を重視し、クラックスというPUの問題集をたくさん残していますが、日々「考現学」を書くことは、クラックスを自分で発見し自分で解いて行くことに他なりません。冒頭に掲載した「食」へのアプローチ・パラダイムシフト表は、考現学をやりとりする中で生まれてきたものです。
チルチルとミチルは幸せの青い鳥を探して外に出掛けて行きますが、最後に青い鳥は家の中にいたことに気づきます。実は、自分の中に「問い」も「答え」もあるのです。自分にできることは、このような出会いの「場」と「チャンス」を提供することだけです。
(1997.9.13脱稿)

 

※正食協会発行の月刊『コンパ21』(現在誌名は『むすび』と改題)1997年11月号に掲載した原稿を改稿

 

※表の文字が読みにくい方は以下のテキストをどうぞ

 

目的を持つ「食」へのアプローチ
・正食と邪食の区別がある 
・健康になることを目的としている 
・健康幻想にとらわれがちである
・おいしさよりも健康を優先する 
・病気を悪いことととらえ、病気にならないようにと考える 
・病気を治そうとする 
・病気を治すのは医者の仕事と考え、医者や薬に頼る 
・正しい食事を頑張って努力して続けようとする 
・食糧危機がやってくることを声高に叫ぶ
・挫折がある 
・挫折をよくないと考える 
・理想と現実のギャップに悩んだり、ストレスを感じたりする 
・今の食生活を変えよう、変えなければいけないと考えている 
・外食や旅行中の食事に困る 
・人づき合いが限られた人になりがち 
・それぞれの流派が対立しがちである 
・自分が実践している食事を正しいと考えがちである 
・よいものを人に勧めようとする 
・「こうすればよい」「こうすることが正しい」という自分の判断や個人的な価値観を人にも押しつけがちである 
・自然食を普及させ、啓蒙しようと考える 
・すべての人が自然食をすれば世の中がよくなると思っている 
・安全な食品をたくさん売ろうと考える
・農薬や添加物を悪と考え、ことさらに危険性を訴えたり、批判攻撃したりする
・「〜を食べなさい」「〜すべきである!」という命令型の指導をする 
・頭で考えて食べるものを決める 
・あるべき姿や理想を掲げようとする 
・不安や恐怖心が行動の原点である

 

目的にとらわれない「食」へのアプローチ
・正食もよし、邪食もよしと考える 
・健康を目的としていない 
・健康に対する考え方は人それぞれで違っていていいと考える 
・おいしく感じるのが健康の原点と考える 
・だれでも病気になってあたり前ととらえ、何かに気づくチャンスと考える。 
・病気は自然に癒えて行くものと考える 
・病気になっても困らないように、医者がいなくても対処できるようにと考える 
・続けることを目的とせず、無理せずにで きるところからやってみようとする 
・食糧危機がやってきてあたり前と考え、 やって来ても来なくても大丈夫と考える 
・挫折という考え方そのものがない 
・挫折もまたよしと考える 
・今ある現実をありのまま受けとめ、現実から出発すればいいと考える 
・食生活の不自然さを自覚すれば、変えようとしなくても自然に変わると考える 
・外食や旅行中の食事も楽しめる 
・どんな人とでもつき合える 
・色々な流派が存在してあたり前と考える 
・自然食ばかりを正しいと考えることが自然食の普及を妨げていると考えている。 
・よいかどうかは人が判断すべきと考える 
・どんな食品をどう食べればよいかなど、自分で判断できるモノサシを提供する
・自然食は自然に広がって行くと考える 
・何をどのように食べるかは人それぞれの個別の問題だと考えている 
・食品を販売した結果として、安心が伝わるようにと考える 
・農薬や添加物はひとりひとりの意識が生んだものととらえ、あえて否定しない 
・何を食べるかを自分で判断し、自分で決められるように支援型の指導をする 
・体が感じ欲するもので食べものを決める 
・理想を特に必要とせず、自然体 
・楽しく生きることが行動の原点である

 

 

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