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『グズな大脳思考 デキる内臓思考』

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崎谷博征『グズな大脳思考 デキる内臓思考』

崎谷博征『グズな大脳思考 デキる内臓思考』

2023/03/16

昨日の記事でオイゲン・ヘリゲルの弓道の話を

引用してご紹介した

山口周さんと楠木建さんの対談本

『仕事ができるとはどういうことか?』

ビジネス書のカテゴリにある本でした。

 

武道とビジネスって、水と油のような感じで

全然マッチしないように見えるし、

事実、武道の話が登場するビジネス書って

ほとんど読んだ記憶がありません。

 

そもそもわたしは、

ビジネス書ってあまり読まないんですが。

 

それで、今日はビジネス書で

「大脳より身体の方が重要」って話が載っている

希有な本をもう1冊ご紹介。

 

以前に生活デザイン・ヘルス関連で

原始人食をご紹介したことがありましたが、

その著者・崎谷博征医師が

『グズな大脳思考 デキる内臓思考』という本を

2006年にアスカ出版社から出されています。

 

第一の脳:内臓

(生命の根源的な欲求をつかさどる)

第二の脳:脳幹・大脳旧皮質

(内臓の動きと強い関係を持つ「内臓」脳)

第三の脳:大脳新皮質

(第一の脳の欲求を満たすために、第二の脳の

 感情・情動の情報を利用して発達していく部位)

 

つまり、第一の脳から第二の脳が生まれ、

第二の脳から第三の脳が生まれ、という順序で

進化、発達してきたというふうに、

人間の脳をこのような三層構造で捉えると、

わかりやすいのではないかと。

 

一昨日に投稿した記事で紹介した

『記憶する心臓』のような話も、

人間は、人生のさまざまな経験を、

情動という味付けをして、

言語ではない形で

内臓という貯蔵庫に記憶していると考えれば

合点がいきますし、

そうした記憶をもとに

大脳新皮質は「思考」するわけです。

 

となると、理性的な判断をするためには、

情動や感情という土台が不可欠で、

逆に言うと、情動や感情がなければ、

健常な「思考」ができず、

「考え方」だけを操作したところで、

それが正しい方向性を与えてくれるとは

限らないでしょう。

 

人間は他の動物と比べると

大脳新皮質が非常に発達しているわけですが、

こちらの記事の後半でも触れたように

別の視座から見れば、

心身のバランスを崩しやすいリスクを

抱えることになったといえるわけです。

 

ところで、日本語には、

「ハラがすわる」「ハラを決める」

「ハラを割る」など、精神の状態を示すのに、

「ハラ」という言葉が入った慣用句が多くありますし、

日本人は昔から頭より「ハラ」を信用し、

自害することを「切腹(ハラキリ)」と言います。

 

また、「肝が据わっている」「肝に銘ずる」

「腑に落ちる」というコトバもあり、

精神の根本は頭ではなく「内臓」にあることを

無意識のうちに理解していたのかもしれません。

 

結局、真実は理論や言葉ではなく、

なんとなく感じるその実感の中にあるのでしょう。

 

あと、わたし自身は、そうした

自分の中からじんわりにじみ出る実感や、

言語化できない

感覚の声に耳を傾けることが大切という意味で

「大脳思考」に対して

「内臓感覚」という言い回しを

対比的に使うように努めているんですが、

崎谷さんは、本書で「内臓思考」という言葉を

新たにつくられ、使われていています。

 

もちろん、それはそれで

独創的発想だとはおもうし、

言葉は定義がそれぞれで異なるのが普通で、
その時々で使い方を留意すればいいのですが、

世の中的には、「思考」という言葉は、

大脳の専売特許と捉える向きも根強くあり、

心を扱うはずの現代の心理学が

心の領域を超えて

〝脳理学〟になってしまっているような

混同や混乱を生み出しかねないのではという

懸念も一方で感じました。

 

まあ、単純な言い回しの問題にすぎなくて、

本質に関わるようなことではないんですが。


 

以下は、本書全体を概観してみて、

重要だとおもわれる箇所を抜粋したものです。

 

(引用ここから)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・いままでに出版された自己啓発本は5億冊を下らないといいます。これだけの多くの本が出ているのは、体験自体が売り物になるということの証左に他ならないでしょう。自分の成功したビジネスを続けるより、それを「売り物」にした方が、付加価値が高く、はるかに安定して収入が得られるという現実があるのです。(P.5)

 

・世にある自己啓発などが、なぜ一時的な対処療法に終わるのでしょうか。そのほとんどが「大脳思考」に偏っているからで、言葉や活字だけでは伝わらない「何か」に触れていないのです。(P.7)

 

・他人の成功法則を鵜呑みにしてはいけません。なぜなら「それを読んで成功しなかった人」のことは語られていないからです。(P.23)

 

・成功した後の人間の感覚は、成功前の感覚と「ずれる」ということです。(P.24)

 

・失敗した時のほうが、悲しみや痛みなどの様々な情動を持っているので忘却に時間がかかるのです。問題を完全に解決してしまうと記憶に残りません。(P.26)

 

・成功する人の生いたちや環境は千差万別で、「一般化できないことは語られない」のです。よって、成功法則を普遍化しようとすること自体に矛盾があるのです。(P.30)

 

・人は注意を向けていないと、どんな対象も「見た」と認識しません。これは大脳思考が抽象化されていることによるものです。現実を実際のあるがままに見ず、頭の中で抽象化し、一般化した概念を見ているからなのです。(P.40〜41)

 

・イメージトレーニングは上手くいきません。イメージは大脳皮質で処理されているので、何もイメージせずに脳を静かに休めることが、私たちの生命力の根源である「内蔵思考」につながるのです。(P.49)

 

・人間は無意識にできていることは、意識的に人に伝えたり、本に書いたりすることができないという真実があります。(P.56)

 

・偉大な発見というのは、決して理論から出発していません。ほとんどが直感や「ひらめき」から出発していて、それを説明するために、論理を使っているだけなのです。(P.57)

 

・学習とは、同じことを何度も繰り返すことで、脳の配線と、一部の大脳皮質のネットワークを強化することなのです。(P.61)

 

・本当の「学習」とは、「自然とできている」状態になることです。大脳新皮質を過剰に使っている「大脳思考」は、「学習」の初期段階にすぎないのです。(P.62)

 

・イメージを思い浮かべた場合は、左右の脳の後部(後頭葉)が活性化されるので、決して右脳全体ではありません。(P.65)

 

・成功法則などで謳われている潜在意識の活性化とは、条件反射の高度なものと考えるとわかりやすいでしょう。(P.78)

 

・自分のやったこと、行ったことに対する相手の反応(フィードバック)という相互作用がないと、内臓から生きていくための情報を引き出せないのです。(P.90)

 

・答はすでに自分の中にあるのですが、それを発見するのに他者が必要になります。(P.91)

 

・「内臓思考」に功罪などありません。(内臓思考とは)潜在意識活性化などによっても容易に動かない私たちの実体そのものであり、「大脳思考」の土台です。(P.92)

 

・私たちのような高等生命体も、もとは一つの細胞でした。その細胞は実は腸の細胞であり、それから作られる血液細胞です。(P.96)

 

・何かを捕食するには動く筋肉が必要で、それを動かすにも命令を下す神経が必要です。その神経のかたまりが原始の脳なのです。ホヤという原始生物は、泳いでいる間は脳・神経システムを持っていますが、定住すると自分の脳を食べてしまいます。移動しないなら、脳は必要ないからです。(P.98)

 

・動物の基本構造は、中心が食と生殖を営む植物性の「内臓系」で、後からそれを取り囲むように感覚・運動をつかさどる動物性の「体壁系」(脳・神経・筋肉)ができたのです。(P.101)

 

※図版は三木成夫『内臓とこころ』(P.81)より

 

・内臓と脳を結ぶパイプが「自律神経」と言われるものです。(P.103)

 

・大脳新皮質の神経繊維には、髄鞘という鞘が巻き付いていて、「内臓」脳とは決定的な違いがある。そのため、情報伝達が非常に的確で、情報がピンポイントで伝達される。(P.114)

 

・言語的表現は、その言葉に帰属する意味に制約された近似値でしかない。〔ベンジャミン・リベットの言葉〕(P.116)

 

・言葉とは、大脳新皮質そのものであり、人類の進化の過程で比較的新しく獲得されたものです。あくまでも「内蔵思考」は体で感じる(体得する)もので、言葉で思考するものではないのです。(P.117)

 

・現代人は外見から想像も付かないほど、建前や通念といったものに振り回されています。その自覚がなく「迷っている」のだと思います。(P.119)

 

・競争で得られるものは少ないのです。それよりも、いかに自分なりのクリエイティブなことができるかに、価値が隠されていると思います。(P.121)

 

・人が何かを伝えようとするときには、言葉や内容より、その人が「なぜそれを伝えたいのか」という腹づもりが、まず表情や目にあらわれるのです。(P.126)

 

・ハラに問いかけてみることです。できれば、外界のさまざまな刺激が届かない場所を探してください。(P.136)

 

・その人のハラが据わっているかどうかは、「物事を素早く決定する決定権がその人にあるかどうかを見る」ことによってもわかります。(P.141)

 

・大富豪や成功者と言われる人を調べてみると、彼らのほとんどが、「高等教育」を受けていません。彼らは「論理」よりも「現場」という実体験を通して、人間社会の現状を肌で実感した人であり、「高等教育を受けても、その影響を受けなかった人」ともいえます。(P.142〜143)

 

・「大脳思考」をしていると、物事をありのままに見ることができず、一般化・抽象化された概念を受け取ってしまいます。(P.146)

 

・「あるがままにみる」ためには、まずは「自己否定を完結させること」が有効です。「自己否定を完結させる」とは、本当の自分の真価を見極め、「我」を捨てることです。(P.147)

 

・自意識こそは最大の「大脳思考」の産物です。勝手な自己像さえ振り払えば、世の中の価値などは、人間の勝手な作り事だと腑に落ちるはずです。(P.149)

 

・内臓のチカラ(生命力)を呼び起こすためには、色々な経験を積むことが大事です。数々の失敗や経験を重ねることで、豊かな情報が身体と脳に蓄積され「内蔵思考」を育むのです。(P.151)

 

・数学ならともかく、現実は演繹法ではなく、帰納法でないと、上手く行きません。(P.156)

 

・内臓思考がしっかりしていれば、それに導かれる「大脳思考」も冴えてきます。(P.158)

 

・身体活動は「大脳思考」によってもたらされた身体の緊張をほぐします。運動は気力を向上させて、不安を沈静させますし、この作用は運動終了から4時間持続するのです。(P.173)

 

・言葉を超える「内臓思考」。これを言葉で説明するという無理難題に精一杯取り組んでみました。(P.185 おわりに)

 

【総括】サキタニ式「内蔵思考」法による

 コンサルタント事例に示されたステップ

 ①「大脳思考」を止める感覚を体験する

 ②本来の自分の姿をえぐり出す

 ③不要なものを削りしなくてよい作業をあぶり出す

 ④ボトムアップ作業を行い今できることをする

(P.181〜183)

 

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