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講演録『教えない教育、治さない医療』(その8)

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講演録『教えない教育、治さない医療』(その8)

講演録『教えない教育、治さない医療』(その8)

2023/04/28

講演録『教えない教育、治さない医療』(その7)からの続き

 

井上:今のお話を受けて、平井さんの方から何か……。

 

平井:今、ずーっと一連のお話を伺っていて、おもしろいなと思って。で、何が面白いかって言うと、今ここで説明されたでしょう?そしたら、フッとこの本のこと浮かんだんです。実は今の質問を出した人は、この本を作った人なんです。それで、不思議だなって思って、何でこれをぼくが気になったかというと、ここにこういうことが書いてあるんです。

 

「宇宙が150億年たっている証拠をわたしたちは、はっきりと握っています。宇宙が非常に小さかったために、光というのはぎゅうぎゅう圧縮され化石になって小さい粒子の中に閉じ込められていました。その化石をわたしたちはこの目でピカッと光るのを見ていました。例えば、筑波の高エネルギー研究所に行けば見えるわけです。つまり、宇宙には“はじまり”があった。そのはじまりは150億年前だということもわかっているのです。」
佐治晴夫『宇宙の風に聴く ───君たちは星のかけらだよ』(カタツムリ社刊・ニュースクール叢書5)より

 

これは佐治晴夫という理論物理学者がぼくのところへ来て7時間しゃべった話を、彼が編集してこの1冊に作ったんです。佐治さんは今までにも本をたくさん書いていたんですが、これができたときにぼくに電話をかけて来た。それで何て言ったかというと、「ぼくがいままで出した本の中でこの本が一番わかりやすい」と。これはどういうことかというと、今までは佐治さん一人で本を作って来た。自分の考えだけで作ってきた。で、これはあそこにいる中川さんていう、愛知県豊明市でらくだメソッドの教室をやっている人なんですけど、彼がまるっきりのど素人で、編集なんてしたことがなくて、ただただ佐治さんの話に惚れちゃって作ったんです。ということは、ようするにキャリアっていうのは関係ないんですね、いい本を作るということには。ようするに、今まで字が書けたかどうかとか、文章はうまいかどうかとか───彼も今までずっと文章書いていて、ぼくも読んでますけども、何書いてんのか全然わけわかんない(笑)。それがその「わからない」ということをつかって佐治さんの本を「わかる」ように編集した。一人ではできないことが、コラボレーション、つまり共同作業によってできた。だから、「できない」ってことは「できる」ってことなんです。 「できない」ことを使って「できる」ことができる、というか。自分の中に、学校教育によって培われたコンプレックスという───「自分はこんなところがだめ!」「これは苦手!」っていうふうに意識化されたもの───さっきの算数の話でもそうですが───「できない」って言うふうに自覚化されたことっていうのは、実は「できる」っていうことなんですよ。やらないだけなんです。大事なことは、「自分はあれもだめ、これもだめ」って思っている意識で、そのことが必ずできることにつながるんです。

 

ぼくは、あの、本当は人前でしゃべるのは一番苦手なんです。小中学校のとき、ずーっとどもりでしたから、授業中に手を上げたこともないし、非常に内向的な性格で、文章書くのも大嫌いだった。障害を持っていたり、いろんなことができない───さっき病気がいろんなことにつながる、気づきがあるというお話がありましたが、全部そうだと思いますけれど、そういうふうに自分の中に起きた問題というのは、全部試練なんですから、そのことによってあることに気づくために起きている。全部。そういう意味で、できないということは、本当は、全然問題じゃないんです。だから、子どもなんかが問題を起こしたら、「ああ、よかったな」と、病気になったら「ああ、よかったな」という感じ。起きることは全部いいことだと。悩むことなんて、たぶんひとつもないんだなと思います。

 

それで、あの中川さんが惚れ込んだというか、佐治さんに会った瞬間に「作りたい!」と思った気持ちですね。だれかに言われてやっているんではなくて、そのときにフッと立ち上がる意欲。そう思った瞬間に形ができている。あとはただやるだけの話で、だから、自分の中に「あ、これをしたいんだな」と思ったことが、たぶんできることだと。あとは、あきらめずに、条件をつけずに、ただやればいい。そうすれば、できないことはない。人はできることしか思わない。

 

最初に井上さんが、これからどういうふうな教育になっていくだろうかということを提議されたんですが───ぼくも今、教育ということに関わっているわけですが───山下さんの話を聞いてて、医療と教育というのは、非常に似ていると思ってます。で、何が似ているかいうと、システムがおかしいということ───ぼくんとこのシステムというのは他の塾と根本的に違うんですよ。何が違うかというと、面倒を見ることでお金を頂いていないんです。ようするに、週1回来ても週4回来ても、月1回でも月謝は同じなんですよ。そうするとどうなるかというと、徹底して子どもが教室に来ないようになる。教室に来ないようになるということはどういうことかというと、ぼくの面倒を───ぼくに手をかけられるようなことをしなくても学習できるようになっていく・・・ようするに「自立」して行くということです。自分一人の足で立っていけるということです。

 

でも、普通は違いますね。世間の一般常識は、面倒を見ることによって、世話することによってお金を頂くシステムになっている。だから、1回いくらで月謝を頂いているような塾は、その子に必要ないことでもやってしまいかねない。お医者さんでも、薬を出す必要がなくても、薬を出すことでお金が入っていくるようなシステムになっていると、病気を治さないで薬を出し続けていれば儲かるので、経営を維持していくために必要のない薬を出したり治療を行ったりしかねないわけで。でも、中国なんかは違うみたいで、医者の評価は、患者の数が少ないことが基準で、日本とは逆になっている。

 

だから、システムを変えればいいんです。おそらくこれからはそういうふうになってくるだろうと思います。その方向にしか、それが心地いい方向だから。方向としてそっちの方向にしか行かないんです。実際に今、医者に行かない人達ってすごく増えていますね。どういう医者が本当にいい医者かということが、たぶん潜在意識の中にはもう組み込まれているから、そんなことは他人に聞かなくたって、わかる人にはわかっているんです。だから、はるばる遠くからやってみえるわけです。うちもそっくり同じ。千葉、埼玉、神奈川などから1時間以上もかけてやってくる。月に1回とか、そんなに来てもしょうがないな、と思うんだけれど来るんです。今はもう海外からも───あの、通信でもらくだの学習はできますから。まあ、井上さんのところにも、通信で学習している生徒さんがいるようですけれど、本当に、これは面白いんだけれど、身近な人ほど来なくて、遠くの人ほど来る(笑)。面白いですね、情報というのは。どうしてかと言うと、こういうことだと思うんです。先日、考現学にこんなことを書いたんです。

 

 「見えない人は見えている世界がすべてだから、
  見えているところだけ見て、見えていると錯覚する。
  見える人は、見えないものが見えているから、
  見えていないところを見て、何も見えていないと言う。」

 

つまり、見えている人───見えていると思っている人は、「見えている」と思っているから、それが世界のすべてだから、この人がヤブ医者だ、と思ったらヤブ医者になる。だから、本当に何をやっているのか見えない。そばにいる人ほど固定観念、先入観で見るから見えない。でも、距離が離れると見えてくる。そりゃそうです。夫婦やってたり、子どもが一緒に家にいたりすると、その子が見えない。旦那のことも見えない。結婚するまでは見えたけれど、一緒になった途端にだんだん見えなくなる。だいたい世の中の構造というものは、そうなっている。だから、人が見えるようになるには、ちょっと離れてみればいい。非常に簡単なんです。それが理屈かなあ(笑)。

 

井上:今のお話を受けて、今度は山下さんの方から何か……。

 

山下:そうですね。ひとつだけ、では、見える世界と見えない世界という話が出ましたんでね。(黒板に「現象」「潜象」と書いて)上が見える世界で、下が見えない世界です。で、皆さんが何か困ったら神さんのところに行くとか、いろんなことがありますし、病気というのは現象界で起こっていることなんですけれども、その病気を起こすおおもとは潜象界にあります。例えば、身体が現象界だとすれば、あなたがたの心は潜象界───比較的潜象界側にあります。で、面白いことに、現象界と潜象界はサカサマだということを、なかなかご理解なさらない。で、一番簡単な例をひきますと、あの、一般的な考え方の中には、水は高いところから低いところへと流れて行くんだ、と。これは現象界ですね。そうでしょう?ね。しかし、そんなことだったらそのうちに海が満タンになってしまって困る。だから、潜象界ではどうなるかというと、水は低いところから高いところへと昇る。これもわかりますね、水蒸気とか。ぼくらが実際には目に見えることもありますけれど。見えない世界で水は低いところから、高いところへ昇っています。だから循環ということができて、ほどよくこの世の中は成り立っている。で、皆さんがいつも現象ばかり考えていると、潜象界のはたらきがおわかりにならない。だから、自分がどうやって生きているかもわからない。

 

例えば、今からあなたに「ぼくはあなたが好きですよ」と言うと、あなたは「イヤ」というかもしれない。でもそのいやは、本当にイヤなのか、照れているのか(笑)。なかなか自分でもわからないですね(笑)。そういうもんなんです。それをわかるためには、やっぱり自分が───何ていうか、真我っていうか、自分をいっぺん放り出したところで、自分を見るくせを………。

 

平井:そうすると、病気になるということは、見えないものが見えるようになるために病気になる………。

 

山下:チャンスです。

 

平井:死にそうになるというのも、そういうことですか?

 

山下:ああ、そうです。死にそうになってから治ってくる人ありますよ。

 

平井:病気というのははやっぱり、そういうことを経て、見えないものが見えてくるんですか?

 

山下:そうですね、はい。

 

講演録『教えない教育、治さない医療』(その9・最終回)に続く

 

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