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平野啓一郎『私とは何か 「個人」から「分人」へ』(その7)

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平野啓一郎『私とは何か 「個人」から「分人」へ』(その7)

平野啓一郎『私とは何か 「個人」から「分人」へ』(その7)

2024/07/17

昨日投稿した記事の続きです。

 

平野啓一郎さんの著書

『私とは何か 「個人」から「分人」へ』

とっかかりに、「私とは何か?」という問いを

考察し続けているんですが、

今日の記事が7回目となっています。

 

1回めに『私とは何か』のまえがき全文を紹介し、

5〜6回の2回にわたって

YouTube哲学チャンネルにアップされている

「分人主義」解説動画の前後編2本を

文字起こしの講義録つきで紹介しました。

 

この記事を読まれている皆さんも、

平野さんの提唱される「分人主義」が

どんなものなのかについて、

多少は理解が進んだでしょうか?

 

ただ、この「分人主義」って表現について、

気になることがあるので

今日はそのことについて書いておきましょう。

 

本のカバーに「分人主義」と書かれていて、

この記事でも「分人主義」という言い回しを

使っています。

 

これは、おそらく「個人主義」という言い方が

世に一般的に存在している言葉なので、

それに準えてそう表現されているのでしょうが、

わたし自身はこの言い方は

あまり適切ではないようにおもっています。

 

哲学チャンネルの解説にもあったんですが、

平野さん自身、『私とは何か』に、

分人主義の提唱する理論が

科学的に正しいかはあまり重要ではなく、

分人という用語は、より良く世界を理解するための

道具にすぎないと書かれてました。

 

つまり、「分人」という概念自体、

広く捉えれば人間観のひとつと言うことはできても

人格、自己をとらえるときの〝単位〟というか

〝捉え方〟にすぎないとも言えるので、

何らかの主義主張、考え方というよりは、

〝道具(ツール)〟というスタンスで扱うのが

適切ではないかと。


その見方、捉え方を採用するかしないかは

個々の自由であることはもちろん、

その後が大事というか、

その捉え方見方を採用した人が

それをどう活かして行くかが

重要だとおもうのです。

 

また、この「分人」という捉え方は、

平野啓一郎さんだけの

完全なオリジナルのものかというと

そうではなく、

平野さん自身、哲学者ドゥルーズの

『シネマ』という著作にあった

le dividuel という概念を参考にされたことを

X(twitter)にて発言されていました。

 

でも、だからといって、「分人」という概念は、

ドゥルーズが起源というわけでもなく、

1960年代から80年代にかけて

文化人類学の分野において、

インドやメラネシア地域の研究において

用いた学者がいたようです。


つまり、平野さんの「分人主義」は、

le dividuel という概念を参考にはしたものの、

ドゥルーズのものとは別モノですし、

文化人類学的な分野で

「分人」という概念が用いられた痕跡が

あったという話は、

わたしが別途知り得た情報であって、

『私とは何か』に

記述されていたものではありません。

 

また、さきほど、「分人」という概念自体、

人格、自己を捉える際の〝単位〟であり

〝捉え方〟にすぎないと書いたんですが、

「個人」(分割できないもの)という概念もまた

同じようにそうであって、

そこには西欧的な価値観や考え方が

その背景として存在し、

限定した地域で生まれ,使われてきた、

ローカルな捉え方とする姿勢が妥当でしょう。

 

つまり、「個人」という捉え方は、

ヨーロッパにおいて生まれた、

人格や自己、人間を捉えるひとつの単位であっても

それが、どんな時代においても、

どんな地域においても、

普遍的に正しいものとは言えないんじゃないかと。


もし、「分人」という捉え方が、

非西欧的なものと言えるのであれば、

日本人にとっては、

親和性の高い捉え方と言えるかもしれません。

 

 

この続きはまた明日に!
 

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