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公私融合の仕事術三原則①(森清『仕事術』より)

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公私融合の仕事術三原則①(森清『仕事術』より)

公私融合の仕事術三原則①(森清『仕事術』より)

2024/10/25

先月9月にこの寺子屋塾ブログで

「統合すること」をテーマに

24回の記事を書いたことがありました。

 

その終わりの方の2回分、つまり

(その23)と(その24 最終回)の記事で、

「労働研究家」「町工場評論家」という

肩書きをお持ちだった森清さん(1933〜2018)が

1999年11月に岩波新書で出版された『仕事術』

はじめに を紹介してコメントしています。

(その23)森清・公私融合の仕事術

(その24 最終回)これまでのまとめ

 

25年も前に出版され、すでに読み終えた本でも

こういう形で紹介したことで、

わたし自身も改めて

読み返すきっかけになりました。

 

何度も繰り返し読んだ本ではあったものの、

久しぶりに読んでみて、

自分がこの本から、

測り知れないくらいの大きなモノを

受け取っていたことに気がついて、

本書の「はじめに」だけ紹介するのでは

あまりに勿体ないことだとおもえてきたのです。

 

前記したとおり、そもそも

「統合すること」をテーマに

11回にわたって書き始めた記事の

締め括りとして紹介したのがこの本でした。

 

それで、「公私融合」という

本書の最重要キーワードを

具体的方法論に展開している

公私融合の仕事術三原則に触れた箇所を

本書の第2章「公私融合の勤労」から引用します。

 

(引用ここから)

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公私融合の仕事術三原則

情報化社会にあっては、個人の高度な判断能力が問われる。しかし、その能力は組織が教えるわけには行かない。組織での教育は、基本的な技術・技能と定型的な業務遂行能力に限られる。「高度な判断能力」については、高度になればなるほど、組織などが誘導し動機づけることはできても、養うにはいたらない。その能力を養うのは本人でしかない。その人の精神構造と思想、ライフスタイルに大いに関係するからである。そこで公私融合の仕事術は、次の三原則を基本にして個人が意欲的に取り組むほかない。


第一は「ことの本質を見抜くこと」である。たとえば、仕事の本質は何か。働きと生活の場で、生かし生かされることを体験し、そのことから社会的人間としての務めが仕事であるということを知るように、絶えず仕事の中でものごとを考え続けたい。


第二の原則は、「全体像を見通す力を持つ」こと。正しい判断は全体像を見ることで可能になる。時に全体像を見渡せないほど大きな対象を見る場合でも、あくまでも全体像を見ようという意思と姿勢と努力があって正確な判断ができる。もちろん、部分を軽視せよとはいっていない。全体像を見通すためには、離れねばならない。だから常に対象からはわずかでも離れて見る習慣をつけたい。そうした習慣を身につけることで新しい勤労者になれる。


第三の原則は、「対立項で問いを立て、その対立項を融合させて新しい価値を生むように努める」ことである。ものごとの根本を考えるには、対立項で考えるのがいい。その理由は、それぞれが明らかになるからである。そうして、その融合が新しい価値を生むからだ。


この第三の原則では、次のようなことが考えられる。
ものには表と裏がある。その両者を見通せなければ個人としても組織の者としても十分な働きはできない。いわゆる「公」の視点だけでは不足だ。会社で働くときに利益を追求する社員としての視点は必要ながら、同時に生活者としての視点を持つことで製品の安全性や顧客の利益を確保することに力を注げる。そのことで、組織人としては辛いながらも人として仕事を正しく遂行できるということがある。


ハイテクにローテクもそうだ。デジタルとアナログも同じである。技術はいずれにしろ融合して成立する。現代に限らず、技術史はそのことを教えてくれる。ロボットの社会的影響を考えるには、ロボット自身を知ると共に、その対極にある手の技術の価値を考えることが重要である。

 

80年代に入って町工場に勤めていながら先端工場を取材するなどしてそのことを知り、ロボット化が進むだけに人間の尊厳をさらに知るべしという主張の文章を書いた。町工場に勤める森清と現代社会の生活者としての森清との二つの立場で現象を観察することで表裏を見通せたと言える。

 

また、ロボット化現象を考えるのに仏教を対立項にしたいとしてその頃改めて仏教の本を読み直した。先端現象は根源的価値軸で判断するのがいいと考えたからだ。わたしは、それには人間の生き方を根源的に問う仏教がふさわしいと考えた。


大企業と中小企業はそれぞれに自立しつつ融合することで社会的力となる。人間ひとりと違って組織の場合に自立と融合を果たすのは非常に難しい。しかし、社会の発展には、必要なことである。産業の将来を占うには、双方を可能な限り知らねばならない。大企業でも働いたことのあるわたしは、その体験と感覚を生かしてそれぞれの真実を知ろうとしている。


生産性と生活性の両立。これは成熟社会の産業が達成を目指すべき原理である。高度成長下で日本は、労使協調を謳って生産性重視で社会運営をした。その結果、わたしたちの生活は潤いの乏しい高生産性主導の社会に変質してしまった。高齢社会にあっては、これは厳しく是正されなければならない。二つは相補って社会の基盤を強化する。


男と女。男の問題は女のことを考えねば解決できない。女性問題は男性の在りようを問わずには問い詰められない。しかもその二つは、対立項でありながら融合すると命が生まれる。それが自然の原理である。


仕事と趣味、そのどちらもそれぞれに楽しみながら互いに引き合う関係を作ることが最高の人生の在り方であろう。職場で仕事をする際には、上下左右に配慮しながら「私」の立て方を考えることが大切だ。


わたしは、いかに二つの極を見つめながらバランスよく位置決めをして行動するかを考えつづけて生きてきた。それは右顧左眄することではない。どちらにもいい子になることでもない。


中道を大切にすることは、何よりも人とその世を幸せにする。

 

森清『仕事術』第2章「公私融合の勤労」より

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(引用ここまで)

 

引用した箇所についてのコメントは

明日の記事に投稿する予定です。

 

 

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