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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その55)

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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その55)

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その55)

2026/04/05

2/10からこのブログでは、

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集を

お届けしているんですが、

1話につき1シーンずつ

順番に追いかける形で紹介していて、

この記事で55回めになりました。

 

ドラマ『逃げ恥』は

アマゾンプライムなどで手軽に視聴できますから、

観たことがない方も、

この記事にアクセスされたことを契機に

是非ご覧になってみて下さい。

 

3/26から五巡目に入っていて、

今日紹介する場面は最終回、第11話の終盤部、

50分をちょっと過ぎたあたりに置かれた

青空市でのハイライトシーンで

みくりと平匡のハッピーなやりとりを。

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〔篠原八幡神社での青空市にて〕

みくり:派遣社員だったとき、よく上司にあれこれ提案していたんです。こうした方が効率的とか、なぜこうしないんですかとか。でも、向こうはそんなの求めてなくて、うざがられて切られるっていう。

平匡:……。

みくり:わたしの小賢しさは、どこにいっても嫌われるんだな~って思ってたけれど、青空市の仕事では、むしろ喜んでもらえて。

平匡:……。

みくり:小賢しいから、できる仕事もあるのかもしれません。

平匡:小賢しいって、何ですか?

みくり:

平匡:言葉の意味はわかるんです。

みくり:……。

平匡:小賢しいって、相手を下に見て言う言葉しょう?ぼくはみくりさんを下に見たことはないし、小賢しいなんて思ったこと、一度もありません。

みくり:……。

日野:〔遠くから〕津崎さん!こっちで飲もう!

平匡:はい、いま!

〔みくり、平匡に抱きつく〕

〔一同、抱き合ってる二人に注目〕

平匡:あの……みくりさん?皆さんが、こっちを見て…。〔みくり、離さない〕

〔平匡、観念してみくりを抱きしめる〕

〔まわりから歓声があがる〕

みくり:……ありがとう!

平匡:何のありがとうで?

みくり:大好き!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第11話より

 

COMMENT:言わずと知れた、最終回のハイライトと言うべき青空市のシーンですね。屋台のざわめきと人熱れの中で、二人だけがふっと取り残される…そんな瞬間があります。遠くから日野の声が飛んできて、次の瞬間にはまわりの視線や歓声まで巻き起こる。にぎやかな場所なのに、この場面でも「……」つまり沈黙の時間が、熱っぽい空気を冷やすというより、静かに濃くしていたような気がします。

 

みくりは、いったん言葉を失っているようにも見えました。これまでも折に触れて出てきた「小賢しい」という一語は、みくりが自信を取り戻す〝いい話〟に回収されておかしくない場面です。けれど、そこを安易に「恋の成就」というありがちなゴールで片づけずに、「言葉の再定義」という一見地味な、しかし本質的なやり方で、ドラマ全11話分の物語を見事にすべて回収しているのが、『逃げ恥』の他に見られない独自性でしょう。

 

そしてみくりはさらっと言います。「わたしの小賢しさは、どこにいっても嫌われるんだな~って思ってた」と。ここ、ただの自虐に見えるけれど、たぶんもっと実務的というか、生活の知恵として身につけてきたラベル貼りと言った方が適切かもしれません。先に自分で悪い言葉を貼っておけば、誰かに貼られたときのダメージが小さくて済むという、そういうリカバリー回路が、みくりの中で自ずと出来上がってしまっていた感じすらします。

 

だから、ふつうの恋愛ドラマならここで「そんなことないよ」「みくりはすごいよ」と、気持ちで上書きして終わりにするところでしょう。ところが平匡は、そんな慰めで終わらせません。「小賢しいって、何ですか?」と、改まったように言葉の定義に入り直している。この風変わりなやり取りを端緒に、結果的にみくりが自己受容に至るところが、何とも『逃げ恥』の最終回らしいんじゃないかと。

 

相変わらずこの平匡の言い方は硬い。でも、この硬さって、一昨日投稿した(その53)の記事でも書いたように、冷たさじゃなく彼の誠実さなんですよね。気分でなだめようとするのでなく、言葉の用法を慎重に確認して、「小賢しいって、相手を下に見て使う言葉でしょう?ぼくはみくりさんのことを一度も小賢しいなんて思ったことがない」と、適用そのものを拒否する。優秀なITエンジニアの平匡ですから、きっと言葉の誤作動を修正する〝デバッガー〟なのでしょう。

 

つまり、みくりの自己否定癖を「気持ちの問題」として解決するのでなく、言葉の定義そのものに言及し、二人の間では採用しない「独自ルール」に変えてしまっているわけです。これは吉本隆明さん的に言うなら「対幻想」的(=二人の間だけで成立する独自の現実をつくりだす)アプローチですね。最終回なのに、大きな誤解が解けてめでたしめでたしといった「決着」ではなく、「仕様の更新」で終わっている…ここがドラマ『逃げ恥』の回収の仕方の、ちょっと大人っぽいというか、スマートなところなんじゃないかとおもいます。

 

また、この「更新」がきちんと伝わるのは、セリフ以上に沈黙「……」が挟まっているからでしょう。でも、この場面の「……」は、そういう情緒の空白というより、頭の中で何かが書き換わっている処理時間のようにも見えるんですね。自分で貼ってきたラベルを、相手から外されたとき、人はすぐ言葉が出ません。嬉しいとか恥ずかしいとか、その前に、前提が更新されるまでのタイムラグが必要だからです。みくりがフリーズするのは、そのせいじゃないかと。

 

そして、この沈黙があるからこそ、みくりの抱きつきがただの「キュン」では終わらない。説明でなく行動で返すところに「受け取った」感じが出る。さらにそのみくりの「ありがとう!」を、平匡が「何のありがとうで?」と問い返していて、こういうときにまで〝確認〟が入るのが何とも平匡らしいんですが。笑 でも、その確認があるからこそ、論理的に説明せず「大好き!」と飛躍して返ってくるみくりの言葉も、いっそう真っすぐ響くんですね。

 

たぶんここは、恋が成就したシーンというより、「言葉の再定義と沈黙の扱い方」を二人で手に入れた瞬間なんでしょう。言葉を雑にしない。沈黙を放置しない。けれど、言葉で全部を説明し切って生々しくもしない。固有の定義で支え、沈黙で受け取り、最後は言葉を超えて、最短距離に二人で着地する。そうした対話的キャッチボールと絶妙なバランスを感じられるシーンが、こんなふうに最終回の終盤部に置かれていて、なんだかとっても『逃げ恥』らしいな、と感じました。



「井上さんはなぜTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿しているんですか?」と聞いて下さる方があるんですが、その理由は(その1)の記事のコメントをお読みください。この名セリフ&名場面集で紹介しているセリフは、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を土台に、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』を参考にしています。

ちなみに、3/31に投稿した(その50)の記事には、それまでに投稿したその49までの記事INDEXと、逃げ恥関連記事リンク集を載せました。これまでの記事に未読のものがある方は、そちらから参照してください。

 

本日投稿の記事にて五巡目が終了したので、
明日からまた第1回に戻って

六巡目がスタートします。(^^)/

 

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