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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その61)

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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その61)

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その61)

2026/04/11

2/10からこのブログでは、

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集を

お届けしているんですが、

1話につき1シーンずつ

順番に追いかける形で紹介していて、

この記事で61回めになりました。


4/6に投稿した記事から六巡目が始まっていて
今日は第6話の真ん中辺りからです。


みくりと平匡が温泉旅行に行っている間に挟まれた
(その17)の記事で紹介した

BAR山でのシーンの続きで
26分30秒すぎたところから、
マスター山さんが百合と沼田を相手に

恋愛について語る場面を。

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〔BAR山にて〕

山さん(BAR山マスター):人間は悲しいかな、見返りが欲しくなってしまう生き物なんだよ。特に恋愛に関しては…

百合:ちょっと!仕事の話してんだけど…

沼田:まあまあまあまあ…〔といって百合をなだめる〕

山さん:自分が相手にかけた同等の愛情が返って来ないと人は不安になる。

百合・沼田:……

山さん:愛情が貰えなくても、同等の見返りがあれば納得できることもある。お金だとか、生活の安定だとか。

百合・沼田:……

山さん:でもね、想いが強いほど次第に耐えられなくなるんだ。俺ばっかり、わたしばっかりが積もりに積もって、関係は、終わりを迎える……。〔泣き崩れる〕

沼田:〔泣き崩れる〕

百合:つられないでよ~〔沼田の肩を叩く〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第6話より

 

COMMENT:みくりと平匡が温泉旅行に行っている間に挟まれたこの「BAR山」の場面、ぱっと見はマスターの山さんが恋愛語りで勝手に泣き崩れ、沼田もつられて泣き、百合が「つられないでよ~」と叩く、という小芝居で笑わせるシーンです。ところが、この場面を第1話~第6話までのドラマ全体の流れの中に置いてみると、(その17)の記事で紹介した百合と沼田がしていた仕事の話が取っかかりになっていて、その接続がとっても絶妙です。しかも、話の中身が、旅行中のみくりと平匡の関係についてもさりげなく暗示していて、その複層的な構成に驚くばかり。

 

つまり、ここは「恋愛ドラマの解説」で終わっていなくて、むしろ〝関係の会計係〟みたいな役割を山さんが引き受けている場面でもあるんですね。「同等の愛情が返って来ないと人は不安になる。同等の見返りがあれば納得できることもある」と山さんが言うのは、ロマンの話じゃなくて、ほぼ会計の話です。恋愛って感情の問題であると同時に、どこかで〝収支〟の感覚が拭えない。与えた分だけ返ってこないと苦しくなるし、返ってこないなら返ってこないで、別の勘定(安定とか条件とか)で帳尻を合わせて、人はなんとか納得しようとしてしまう———この山さんの語りは、そうしたいや~な部分を、やけに冷静に言語化しているわけで。

 

しかも面白いのは、理屈としては正しいような話を積み上げておきながら、最後山さんが「関係は、終わりを迎える……」で、泣き崩れてしまうこと。結局、勘定で割り切れるはずだった話が、割り切れないところに行ってしまう。まさに「俺ばっかり、わたしばっかり」が積もりに積もる、というやつです。会計の話をしているのに、帳簿が破れて感情が決壊する。ここが『逃げ恥』らしい笑いであるのと同時に、切なさでもある気がします。

 

百合が「仕事の話してんだけど…」と止めようとするのも、沼田が「まあまあまあまあ」となだめるのも、ツッコミとしては可笑しいところ。でも、山さんの横で二人が「……」と沈黙するのは、たぶん笑って済ませられない刺さり方をしてるからでしょう。山さんの語りが、自分の中にもある〝不均衡の実感〟を勝手に暴き出してしまうから、言葉が止まってしまう———たぶんこの沈黙は、同意でも否定でもなく、各々が人生の棚卸しをしている時間の現れなんですよね。

 

こうして見ていくと、このシーンは単に「恋愛はギブ&テイクだよね」という教訓で終わる話ではなく、恋愛の問題がしばしば、感情の不足よりも「会計のズレ」から始まってしまう、という話としても響いてきます。そしてそのズレは、悪意からよりもむしろ双方の善意(やさしさ)で先送りされて蓄積することが多いのではないでしょうか。だからこの『逃げ恥』は、人と人とのディスコミュニケーションのドラマなんだと、あらためて腑に落ちます。

 

さらに言えば、そうした人生の棚卸しは、当事者二人の密室ではなかなか出来ません。だから、BAR山みたいな〝場〟があることの価値ってすごく大きいようにおもうのです。〝場〟があって、第三者がいて、笑いがあって、少しだけ外の空気が入るからこそ、重たい話も扱えるサイズに落ちてくる。泣いて、つられて、叩いて終わる。そうした軽さがあるから、深刻さがちゃんと語れる。しかも、別の〝場〟での第三者のやりとりが、みくりと平匡のこの先の展開についても伏線になっている———そういう意味でも、この場面はただの箸休めでは終わっていなくて、『逃げ恥』第6話の芯となるテーマを、別の角度から照らしてくれている名シーンなんじゃないかとおもいました。




「井上さんはなぜTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿しているんですか?」と聞いて下さる方があるんですが、その理由は(その1)の記事のコメントをお読みください。この名セリフ&名場面集で紹介しているセリフは、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を土台に、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』を参考にしています。

ちなみに、昨日投稿した(その60)の記事に、それまでに投稿した全記事のINDEXと、逃げ恥関連の投稿記事リンク集を載せました。未読記事がある方は是非そちらから参照してください。

 

この続きはまた明日に。(^^)/

 

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