感情をコントロールするコツは?
2021/09/06
当塾では、算数・数学、英語、国語の
プリント教材〝らくだメソッド〟を使っていますが、
各々の教科の学力がつくことを
殊更に目的にはしないように心がけています。
なぜなら、プリントをやれば
そうした学力は自然に身に付いてしまうので、
敢えてそれを目的に掲げる必要はないためです。
よって、教室で主にわたしのやっていることは、
プリント学習をきっかけに対話することなんですが、
具体的に塾生たちとわたしが
どんな対話をしているかという一例として、
少し前にあった教室でのやり取りを以下にご紹介。
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Q:井上さんは感情をコントロールできないときってありますか? どうしたら自分の感情をコントロールできるようになるんでしょうか?
A:そうですね。感情のコントロールって話はよく耳にするんですけど、そもそも何をもって「感情をコントロールできている」と言えるのか、その基準がないとたぶん判断できないとおもうんですよ。
でも、その基準ってたぶん人によって違うはずだし、一律に決めることもできない。となると、「感情をコントロールできないときがありますか?」ってわたしに聞かれたときは、結局わたし自身の個人的な体験を・・・まあ、わたしの場合、過去にたくさんの人の相談にのらせてもらっているので、多少はそうした人たちの体験や客観的な判断も踏まえて話せるところがあるかもしれないけれど、仮にそうであったとしても、最終的にはわたしの主観というか、わたしの基準でしか答えられないわけです。
結局そういう体験談って、新聞や雑誌、ネットにもイッパイ記事がでてますが、そういうものって個別に人も事情も環境も違うので、多少は参考にはなっても、現実にはほとんど役に立たない・・・つまり、「どうしたら自分は感情のコントロールができるようになるのか」という抽象的な問いをいくら考えたところで、あるいは、他の人の話をどんなに聞いたところで、自分自身の具体的な場面に即して具体的に考えていかない限りは、何ともならないんじゃないかっておもうんです。
ひとつのポイントは「問いの立て方」を工夫することなんですよ。まず、考えてもどうしようもないことを考えるのをやめる。ただ漠然と自分の聞きたいことを、その時々で衝動的に尋ねているだけでは、考えが前に進んでいかないし、たいていは堂々巡りに陥るだけなんです。だから、どういう問いを立てれば問題の核心に迫っていけるのかというのは、日頃から鍛錬していないと一朝一夕でできることではないし、ほんとうに考える価値のあることは考えられないんですね。
では、どういう問いが価値ある問いといえるのか? そういう問い方ができるためにはどういう視点を踏まえればいいのか? どういうふうに問えば相手から自分の欲しい情報を引き出せるのか? 等々・・・それを実地をふまえて練習できるのがインタビューゲームで、こればかりは何度繰り返しても、どれだけやっても際限がないし、もうこれで卒業ってことは起こりません。結局、インタビューゲームは入口にすぎなくて、それを手がかりにして日々を鍛錬の場にしていく姿勢が大事なわけですから。
だから、もしわたしに対して、自分と比較して感情をコントロールできているように見えるとするなら、「そもそも感情をコントロールするということは、どういうことなのか?」「人間の精神構造はどういうしくみになっているのか?」「自分はどうして感情をコントロールできないような状況にしばしば陥ってしまうのか?」「井上さんと自分はいったいどこが具体的に違うのか?」といったような問いが浮かぶかどうかが大事なんです。
そうすれば、たとえば「わたしからみると、井上さんはわたしよりも感情のコントロールがうまくできているように見えるんですが、井上さんからみて、わたしとどういうところが違うんだとおもいますか?」「いままで感情をコントロールできなくて失敗したことはありますか? あるいは感情がコントロールできてよかったなとおもった場面はありましたか? コントロールできたときと、コントロールできなかったときと何がちがっていたんでしょう?そして、そのことで井上さんは何を学びましたか?」というような問い方ができるとおもうし、こんなふうに問わないと課題の核心にはなかなか迫っていけないんじゃないでしょうか。