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吉本隆明『15歳の寺子屋 ひとり』の内容を整理してみて

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吉本隆明『15歳の寺子屋 ひとり』の内容を整理してみて

吉本隆明『15歳の寺子屋 ひとり』の内容を整理してみて

2022/07/15

金曜は読書関連の記事を投稿しています。


3年ほど前に、

吉本隆明さんの『ひとり』という本の内容を素材に、

未来デザイン考程で活用している

簡易情報集約法を使って整理したことがあり、

今日はそれについて書いてみようとおもいます。

吉本さんのこの本は、以前に

読書会つんどくらぶでも

お題本として取り挙げたことがありました。

 

吉本さんが亡くなられたのは2012年ですから、

その3年前にあたる2009年5月から

15才の子どもたち4人に向けて

1年間にわたって向けて行われた

吉本さんのお話をまとめたこの本の目次は次のとおり。

 

子どもたちへの語り口がそのまま

話し言葉で記してあるので

残された著作の数は300を超えると言われる

吉本さんの本の中では、読みやすく、

⒈時間もあれば読めてしまうほどの分量なので、

ヨシモトワールドに初めて触れる人には

「まずはこの本を!」と言ってお奨めしています。

 

もちろん、この「読みやすい」という言葉の意味は、

内容が分かりやすく平易という意味ではありません。


「大人になるとはどういうことか?」という

子どもたちの疑問に対して、

吉本さんは、子ども向けに限った話でなく、
人間関係、仕事、恋愛、人生などについて

全部まるごとストレートに答えているからです。

 

にもかかわらず、巻末に収められている

子どもたち4人の感想文が何よりスバラシイ!

 

何がスバラシイと言って、

このときの吉本さんは84〜5才なのに、

誰も「おじいさん」と呼んでいないばかりか、

4人とも、

「こういう大人の人に、初めて会いました」

「話を聞いて、自分の何かが確実に変わった」

ということを、自分の言葉で書いているところです。

 

 

ただ、この本について1点だけ難点をいうと、

せっかく「寺子屋」という言葉を冠にしているのに、

各章の見出しを「〜時間目」と

学校の授業をおもわせるスタイルになってるところは

止めて欲しかったですねぇ・・

 

なぜなら、江戸期以前の寺子屋では、個別学習中心で

一斉授業をしているところはほとんどなく、

明治以後にできた学校とは

似て非なる存在だったとおもうし、

学びの場という点では同じですが、

一括りにはして欲しくないからです。

 

 

また、わたしは、

この本を「百回繰り返し読む」と決めてからは、

1回よむ毎に正の字で

こんなふうに1本ずつ記入するようにしてます。

 

なぜ百回と決めたかというと、それは、

吉本さんの『日本語のゆくえ』という本のなかの、

なぜ自分が『言語にとって美とはなにか』という本を

書いたのか、その理由について語られている箇所に

あるんですが、要約すれば次のような内容です。

 

1冊の本を百人の人が読めば、

百通りの意見、見解、批判が出てくるけれど、

百人の人が同じ本を百回ずつ読んだならば、

ほぼ同じところに行き着くのではないか。

その同じところというのは、「作者」であり、

作者自身の表現技術も含めた総体的な芸術觀とか、

芸術に関する理念のようなものに

収斂していくだろう。もしそうだとすれば、

個々の批評家の好みで終わらないような

政治的に偏らず、恣意的もでない

普遍的な文学批評の理論をつくるためには、

百人が百回読むことに相通じるようなものを

つくればいいんじゃないかと考えるようになり、

自分でも概ねそういうことができたとおもえたのが

『言語にとって美とはなにか』でした。

 

もちろん、ここで吉本さんが言われる百回というのは

あくまで比喩的な表現でしょうから、

実際には百回読まなくても

作者自身の世界にたどり着けるかもしれないんですが。

 

そういえば、昔からのことわざに、

「読書百遍、意、おのずから通ず」というのも

ありましたね。

 

この『ひとり』を読まれ、ヨカッタとおもわれた方は、

同じ編集者によって、吉本さんの最後の肉声が

まとめられた『フランシス子へ』

是非読んでみてください。

 

 

さて、『ひとり』の中身についてです。

 

以下に記すポイントリストは、

吉本さんの『ひとり』に書かれている文のなかから、

わたしの心の琴線に触れた箇所を

そのまま抜き書きして、

それを大事だとおもわれる順番に並べ替え、

上位24位までを本書の登場する順番に従って

記したものなので、要約ではありません。

 

また、そのポイントリストの後に

ポイントリストを整理した本文、

本文のすべてを統合した主文を記します。

 

これは、未来デザイン考程でも

それぞれの局面で使用する情報集約手法なんですが

読まれると、この本に何が書かれているか

その概要について把握しやすくなるようにおもい

ご紹介しました。

 

百回を読み終えた後で、もう一度この作業を
やってみようとおもっているんですが、
どれくらい変化するのか、
あるいは変化しないのか、たのしみなところです。

 

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ポイントリスト
1.ひとりというのはそんなに悪いってもんじゃないぜ、って僕は思います。
2.<話し言葉>が相手に何かを伝えるための道具だとしたら、<書き言葉>は自分の心の中に降りていくための道具だ。
3.自分でもわからない、もやもやとした気持ちの中にこそ、自分自身を深く知るための手がかりが潜んでいて、書くことはそれを掘り起こすための方法だ。
4.沈黙に対する想像力が身についたら、本当の意味で立派な大人になるきっかけをちゃんと持っているといっていい。
5.言葉の根っこに思いをめぐらせて、それをよく知ろうとすることは、人がひとりの孤独をしのぐ時の力になる。
6.才能のあるなし、資質や感覚などは二の次でたいした問題じゃなく、大事なのは始終手を動かしてきたかどうか、手の使い方でしかない。
7.自分の手が覚えていることを、自分で納得できるように動かすことができたらいいものができるし、そうしたことが身につくまでにはだいたい10年かかる。
8.自分の生涯の終着点みたいなものは、決めたところでその通りにはならないし、早くから決めてしまわない方がいい。
9.人が「生きる」っていうのは、自分で選べない避けがたい不可避な運命をどう受け入れるかだ。
10.人間、頭のいい悪いは多少あっても決定的なものでなく、学校なんてみんな同じだから分相応でいい。
11.人間が自分に正直に忠実に振る舞うことは、決してわるいことじゃない。
12.「こうしたから、こうなった」なんて、原因と結果を安易に結びつけ、何かを学んだ気になっていると人生まちがう。
13.やりたいこととやるべきことと、どちらをやればいいのかなんてわからないので、その時その時で悩んで、考えて、考え抜いて選択するよりほかはない。
14.僕は「ほんとうのほんとう」にたどりつくまで自分で考え抜くという他には方法を持ってない。
15.人間はみんなおんなじで平等というのが、僕の根底にある確信。
16.人間には優劣はなく、人類を<ヨーロッパ的段階><アジア的段階><アフリカ的段階>とわけて考えれば、平等という問題が非常にわかりやすく見えてくる
17.恋愛が成就するには、偶然と偶然が出会うだけでなく、もうひとつ何かが必要。
18.誰にも言わないでも、わからないでもいい。自分なりのやり方を編み出し、考えて考え抜いて自分で確立できたら、立派に「大人になった」といえる。
19.赤ちゃんの時期っていうのは自分じゃ責任とれないし、自分ではどうしようもないけれど、その人の人生に重大な影響がある。
20.人には自分では選べないことがあって、それをそれぞれにどうやって受け入れるかが、その人が生きるっていうことなんだ。
21.今は平和で平穏な社会だと思われがちだけれど、人には根源的な危うさがあり、孤独の問題に耐えて精神的な問題をかいくぐっていくには、相当難しい時代に移りつつある。
22.人間は、どんなふうにでも自分を形成する方法はあるから、あんまり深刻にならずに、好きにやるのがいい。
23.人生には無限の可能性、無限の不可能性が待ち構えていて、何事にも代えがたいことだ。
24.過去に厳しい時代があっても、今があるのは、人間が先に行こうとすることを一度も諦めなかったからだ。

        

●「ひとり」がスタート地点
・自分でもわからない、もやもやとした気持ちの中にこそ、自分自身を深く知るための手がかりが潜んでいて、書くことはそれを掘り起こすための方法だ。
・<話し言葉>が相手に何かを伝えるための道具だとしたら、<書き言葉>は自分の心の中に降りていくための道具だ。
・言葉の根っこに思いをめぐらせて、それをよく知ろうとすることは、人がひとりの孤独をしのぐ時の力になる。

 

●人生に正解はない
・「こうしたから、こうなった」なんて、原因と結果を安易に結びつけ、何かを学んだ気になってると人生まちがう。
・やりたいこととやるべきことと、どちらをやればいいのかわからないので、その時その時で悩んで、考えて、考え抜いて選択するよりほかはない。
・人が「生きる」っていうのは、自分で選べない避けがたい不可避な運命をどう受け入れるかだ。

 

●人はみな平等
・才能のあるなしや資質、感覚などは二の次で、始終手を動かしてきたかどうか、手の使い方が大事だ。
・人間には優劣はなく人類を<ヨーロッパ的段階><アジア的段階><アフリカ的段階>と段階としてわければ、平等という問題が非常にわかりやすく見えてくる。
・人間はみんなおんなじで平等というのが、僕の根底にある確信。

 

●なぜ生きるのかは、「先があるから」
・今は平和で平穏な社会だと思われがちだけれど、人には根源的な危うさがある
・人間は、どんなふうにでも自分を形成する方法はもっているから、あんまり深刻にならずに、好きにやるのがいちばんいい。
・過去にいろんな厳しい時代があったとしても、今があるのは、人間が先に行こうとすることを一度も諦めなかったからだ。

 

主文:沈黙も言葉であり、言葉の根っこを知ろうとすることは、人がひとりの孤独をしのぐ時の力になる。 

 



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