朗報!5/26宇田亮一『吉本隆明「心的現象論」の読み方』新版発行!
2023/05/20
中村教室の開室日については、
毎月始めに中村教室のFacebookページに
トップ記事固定(注目のコンテンツ)として投稿し
更新するようにしています。
土曜と日曜は教室はお休みなんですが、
今日5/20は休日開室日で、
朝10:30からずっと中村教室にいました。
夜にプライベートな予定が急に入ってしまって、
16:30には教室を閉め、
自宅のある四日市に向かわなければならず、
いつもより2時間ほど短かかったんですが、
今日は4名ほど塾生がやってきました。
最初にやってきた塾生が
わたしが5/7からインタビューゲームについて
一応全部読んだというので、
わたしが書いていることが
どこまで伝わっているか確認してみたところ、
予想していたとおり、
昨日投稿したblog記事
に書いたような状況だったんですが、
記事を書いておいてヨカッタと
改めておもった次第です。
寺子屋塾の教室では、各自が課題に取り組み、
自分の学習を進めていくので、
らくだメソッドや
未来デザイン考程に取り組んだり、
blog記事を書いたり
経営ゲームをプレイしたりという感じで、
予定調和的に何らかの合意に至ることを
目指しているわけでもありませんから、
誰からともなく問いや話題が発せられ
やりとりが始まっていき、
終わっていくということが繰り返されていく
いつもの風景ではあるんですが、、、
今日もいい対話の場になっていた様におもいます。
さて、本日の記事は、
今日ネットを検索しているときに見つけた情報で、
「対幻想」についての理解を深められる
という意味では昨日の続きになるんですが、
来たる5/26に出版されるという朗報!です。
たぶん2016年の秋頃だったとおもうんですが、
幸いわたし自身は品切れになる直前に
著者の宇田さんに直接連絡を取って、
本書を手に入れることができたものの、
以後ずっと絶版になっていました。
Amazonの古本市場でも、こんなふうに、
7,780円とか29,800円というような
すごいプレミア価格がつくほどの
入手難状態が続いていましたから、
わたしもこの新版の発行は
長年にわたって待ち望んでいたものです。
新版の発行は、昨年10月に出された
続くもので、
これで、吉本さんの代表三部作の解説本がすべて
アルファベータブックスから出版され
入手しやすくなりました。
本書のまえがきの大部分と目次が公開されているので
ぜひご覧頂きたいんですが、
本書が出版に至った背景や概要などがよくわかる
まえがきの全文を
こちらにもご紹介することにしました。
私見ですが、吉本さんの代表三部作は、
世界レベルの知的遺産だとおもっていて、
「言葉とは何か?」「心とは何か?」
「個と集団はどういう関係にあるのか?」などの
問いを原理的かつ本質的に考えたい方に、
宇田さんの解説本は
きっと強い味方になってくれることと
おもいますので、ぜひお買い求め下さい。
(引用ここから)
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本書は吉本隆明の「心の見取り図」について述べたものである。最初に、なぜ私がこの「心の見取り図」と向き合うことになったかという経緯を書いておきたい。
私は三十数年間のサラリーマン生活に区切りをつけたのち、臨床心理士を目指した人間である。「残された人生を臨床心理士として社会とかかわりたい」と志し、大学院へ進学したのである。にもかかわらず、入学後、すぐに困惑することになる。なぜなら心理療法理論があまりにも多すぎるのだ。
精神分析、ユング心理学、アドラー心理学、自己心理学、クライエント中心療法、実存主義的心理療法、ゲシュタルト療法、交流分析、行動療法、認知療法、認知行動療法、イメージ療法、催眠療法、芸術療法、家族療法、ブリーフセラピー、ナラティブ・セラピー、集団療法などなど......。
学びながら私はこれらの理論を本当に理解できるのだろうかと考えざるをえなかった。もっといえば、世の中に、なぜ心理療法が200から300も存在するのか、まったく理解できなかったのだ。 「〝心の世界〟は宇宙空間のように無限の時空から成り立っている。だから〝心の世界〟に関する理論的仮説はたくさんあって当然だ」といういい方はできるかもしれない。また、「自分自身が使いやすい理論をひとつ身につけておけば、それでいいんだよ」といういい方も、あるいは「場面場面で理論をうまく使い分けることが大切なんだ」といういい方もできるかもしれない。しかし、元来、不器用な私には、とてもそのような立ちまわりはできそうもなかった。
実際に私が一番悩んでいたことは、心理臨床の現場にどのような理論的背景を持って臨めばいいのか、あるいは理論的背景など持たずにフリーハンドで臨めばいいのか、ということであった。心に悩みを持つ人にとって本当に役立つことは何なのかということが、私にはわからなかったのである。いいかえれば私は自分の心理臨床の場に確かな〝根拠〟がほしかったのである。
非常に大雑把ないい方をすれば、現在、心理療法の世界には精神分析と認知行動療法という2つの対極的な立場がある。人間の心をとらえるうえで大切なことは無意識なのか、あるいは行動認知なのかという立場の違いである。ひとりの臨床心理士としていえば、精神分析と認知行動療法という対極的な考え方を自分自身がどのように噛み砕き、最終的にどのような構えで臨床現場に臨むのかが問われることになるのである。私は、この課題を自分自身でしっかり噛み砕けない限り、「臨床心理士として自信をもって仕事はできない」とこれまで感じてきたし、今もそう思っている。
こうした私の問題意識に真正面から応えてくれたのが『心的現象論』であった。読み始めて、最初に「ああ、そうか!」と思ったのは、知覚を時間、空間で定義づけるという方法であった。見事だと思った。しかし、何よりもひきこまれたのは、〝ヒトの心〟を対人関係の視点からとらえるという発想であった。
もちろん、〝ヒトの心〟を対人関係から考察することは、めずらしいことではない。精神科医サリヴァンの「精神医学は対人関係論である」という考え方もそうだし、心理療法の対人関係療法もそうした考え方に基づくものだといえる。しかし吉本隆明の〝対人関係論〟には際立った独創がある。それはヒトの対人関係を3つに明確に分けたことである。特筆すべきことは、〝自分自身との関係〟を対人関係に位置づけたことであり、他者との対人関係を〝二者関係〟と〝集団的関係〟に分けたことである。これらの対人関係は吉本の用語にそっていえば「個人幻想」「対幻想」「共同幻想」という概念に対応するのだが、この視点によって、私は〝精神分析〟と〝認知行動療法〟の両方を、自分の中にしっかりと根づかせることができたのである(詳しくは第3章を参照されたい)。
『心的現象論』を読み終えた時、無性に何かを書きたいと思った。当初その衝動が何なのか、よくわからなかったのだが、書き始めてようやく気がついた。私は「個人幻想」「対幻想」「共同幻想」という吉本の〝対人関係論〟をまるで磁石のように使って、心理学の諸概念を引き寄せてみたかったのである。この磁石で引き寄せるとどんなことが起きるのか試してみたかったのである。
いいかえれば〝心理学の世界〟と〝心的現象論の世界〟との間に橋を架けてみたいと思ったのである。私は何かに憑かれたように橋を架けてみた。私が架けた橋はちっぽけな仮設の橋にすぎない。にもかかわらず、橋を往き来することでみえる景色はすばらしかった。私はその景色のすごさに目を見張ったのである。
『心的現象論』は、一部では、すでに過去の遺物のように言われているが、間違いなく〝生きている〟。〝生きている〟どころか、混迷する今だからこそ必要な書物なのだと思う。それが、本当なのかどうか”は、本書を読んでくださる皆さんの判断に委ねたい。
本書を書くうえでひとつだけこだわったことを述べておきたい。それは吉本の考え方を徹底的に噛み砕こうとしたことだ。吉本の考え方を、できればビジネス文書のように簡潔でわかりやすく噛み砕きたいと思ったのである。「うまくやれたのか」と問われれば、心もとない。ただそのことだけは、ずっと手放さずに取り組んだのは本当のことだ。
そのため本書は『心的現象論』を吉本が記した順序にそって説明するという方法を採らなかった。吉本が記した順序にそって『心的現象論』の中を歩けば、広大な荒野をあてどなくさまようことになるからだ。吉本が歩んだ苦難の日々を追体験したいという方には、もちろん、そのやり方をお勧めする。しかし、本書では『心的現象論』の根幹にある「個人幻想」「対幻想」「共同幻想」とは一体何なのか、ということだけに焦点をしぼって『心的現象論』の中を歩くことにした。そのことをお断りしておきたい。
※新版 吉本隆明『心的現象論』の読み方 はじめに
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(引用ここまで)
また、本書は解説本ではあるんですが、
一人だけで読み解いていこうとするのは
易しくない課題ではあるので、
主に対人支援の仕事に関わっている方を対象に
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