TVドラマ鈴木先生「体験は人間性を磨く上での貴重な教材だ。」(今日の名言・その65)
2023/10/11
体験というものは、 人間性を磨く上での貴重な教材だ。 さまざまな体験という名の教材の中から、 確実に身についた内容だけが、 人間にとって真の学びとなる。
※TVドラマ『鈴木先生』第7話 鈴木先生の台詞より
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久しぶりの今日の名言シリーズです。
8月にベートーベンの記事を書いて以来なので
2ヶ月ぶりになりました。
TVドラマ「鈴木先生」の原作は、
文芸漫画家・武富健治さんが描いた、
2005年から2011年まで漫画アクションに
不定期で連載されていた作品です。
武富健治『鈴木先生』@げりみそ【前編】より
11巻の単行本としても出版されました。
『鈴木先生』が2011年の春期ドラマとして
テレビ東京系列で放映されたとき、
10話全体の平均視聴率は2.16%とふるわず、
2001年以降の
ゴールデンタイムに放映されたドラマとしては
ワースト2という低視聴率でした。(^^;)
ところが・・・
第49回ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞(2012年)、
平成23年日本民間放送連盟賞で
テレビドラマ番組部門最優秀賞受賞(2011年)、
第38回放送文化基金賞の
テレビドラマ番組賞(2012年)など、
ドラマに与えられる数々の賞を
総ナメするほどの高い評価を受けたのです。
放送後にはDVD、ブルーレイBOXが発売され、
2013年には劇場映画化もされました。
教育をテーマにしたいわゆる学園ドラマですが、
『3年B組金八先生』や『熱中時代』などの
旧来型学園ドラマとはまったく異なる発想で描かれ、
それまで『相棒』以外、
テレビドラマをほとんど観なかった
わたしのテレビドラマに対する認識を
根本から揺さぶって、変えてくれた作品です。
特に、ドラマとして放映されていた
2011年頃わたしは、
ファシリテーションを学びたい学生や社会人向けの
講座や研修を定期的に開催していた関係で、
先生という立場にモノを言わせて
生徒に上意下達的に伝えようとするのでなく、
知ることよりも自ら考えようとする姿勢と、
対話し続けることの大切さに
スポットが当てられている点に注目しました。
冒頭に挙げた鈴木先生の台詞は、
ドラマ『鈴木先生』第7話の前半部に登場し、
いわゆる「性教育」に属する話題の展開から
語られた言葉なんですが、
セクシュアリティの問題を、
一般論や先生の立場でなく自分事として捉え
自らの生き方の内側に位置づけながら、
一人称として語っているのみならず、
押しつけ、強制としてではなく
学びの原理にまで昇華しながら語るというのは、
従来からある数多な学園ドラマの成し得なかった
画期的なことだったとおもうのです。
旧ブログでこの「鈴木先生」を取りあげながら
性教育のスタンスに触れて書いた記事があるので、
関心のある方はご覧ください。
以下、冒頭取りあげた台詞のみが
ひとり歩きしないように、
どういう文脈で語られたものなのかを
読まれる皆さんに知っていただきたく、
ドラマ中での前後のやりとりをそのままの形で
書き起こしてみました。
(引用ここから・ネタバレ注意!)
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鈴木:河辺、聞いてくれ。女性の過去を気にしたり、
処女にこだわるという考え方はたしかにある。
だがそれは、たくさんある考え方の
たったひとつにすぎないんだ。
鈴木:みんな、今日の課外授業では、
次の公式を胸に刻んでほしい。
ちょっと来てくれ。(地面にチョークで書く)
岬:学習率?
鈴木:体験というものは、
人間性を磨く上での貴重な教材だ
鈴木:さまざまな体験という名の教材の中から、
確実に身についた内容だけが、
人間にとって真の学びとなる。
鈴木:体験を分母に、学びを分子にして、
出た答えの数値を、仮に学習率と呼ぶようにしよう。
鈴木:この数値が高いのは、どのような人間といえる?
竹地、わかるか?
竹地:あらゆることから、多くを学べる人間。
鈴木:そうだ。さまざまな事情から多くを
体験してしまった者はな、
そのぶん頑張って学習率を上げ、
立派ですてきな大人になればいいんだ。
鈴木:河辺。お前はたくさんの教材を手に入れた。
それを放りっぱなしにして、
生きていく上での邪魔な重荷と考えるか、あるいは、
そこから多くを学び、
人間性を磨く上での糧にするか、
すべてはお前次第なんだ。
河辺:先生?
鈴木:うん?
河辺:ありがとう!
鈴木:今日の授業はここまで!
生徒全員:先生さよ〜なら!
鈴木:気をつけてな。
鈴木M:(何かが完全に片付いたわけでもない。
誰かが俺の指導で一瞬にして変わったわけでもない。
だがみんな、どうか折に触れて思い出してくれ。
今日の学びを。)
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(引用ここまで)
寺子屋塾では、
実際にやってみることを何よりも重視しているので
アタマだけで考え、理解することや
夢や希望、目標を持つことを
あまり重視してはいません。
でも、このシーンで鈴木先生に問われて
竹地クンが語っている
「あらゆることから、多くを学べる人間。」を
目標として掲げることについては、
例外中の例外と言ってよいでしょうし、
わたし自身も常にそうありたいと願っています。