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平野啓一郎『私とは何か 「個人」から「分人」へ』(その2)

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平野啓一郎『私とは何か 「個人」から「分人」へ』(その2)

平野啓一郎『私とは何か 「個人」から「分人」へ』(その2)

2024/07/12

昨日投稿した記事の続きです。

 

昨日は、平野啓一郎さんの著書

『私とは何か 「個人」から「分人」へ』

まえがき全文を引用して紹介しました。

 

まえがきとはいえ、本書の概略と

分人という考え方のほぼ大枠が

語られていましたが、

ちょうど本書が出版された直後のタイミングで、

平野さんがTEDで10分間講演されている

YouTube動画がみつかったので、

ご覧になってみてください。

 

分人主義そのものについてではなく、

分人主義のような考え方が生まれた

背景的なお話をされています。

 

Love others to love yourself | Keiichiro Hirano
TEDxKyoto 2012

既定の時間10分ピッタリで終えられていて

素晴らしいお話ですね〜

 

あと、平野啓一郎さんによって、

分人主義をテーマにした

特設サイトがつくられていました。

「分人主義」公式サイト|複数の自分を生きる

 

この分人という考え方については、

このウェブサイト内にある

次の動画が分かりやすかったですよ〜

7分でわかる分人主義

 

平野さんの『私とは何か 「個人」から「分人」へ』

まえがきの冒頭に、

本書の目的は、人間の基本単位を

考え直すことである。とありました。

 

この、人間の基本単位を考える前提となっている

「個人」という考え方が

そもそも日本に存在したんだろうか?

という問いについては、

これまでにもこの寺子屋塾blogでは、

取り上げたことがあったので、

ピンと来た方がいらっしゃるかも知れません。

 

たとえば、阿部謹也『世間とは何か』には、

第5章をまるごと夏目漱石のことに宛てて、

なぜ漱石は読み継がれてきたのか・・・・明治以降の「世間」と「個人」

という章題を付して論じられていました。

 

『私とは何か』のまえがきにも、

個人という言葉の成り立ち、歴史について

触れられていましたが、

江戸幕府が倒れて明治になり、

日本は外国から輸入した

“society” “individual”という言葉に

「社会」「個人」という言葉を宛てたものの、

日本の実状は、外国とは

かけ離れたものだったと言ってよいでしょう。

 

日本と諸外国は、歴史的な背景や

文化が全く異なるので、

アタリマエと言えばアタリマエのことなんですが。

 

そうしたなかで、夏目漱石は、

『世間とは何か』序章に書かれている

・個人はどこまで自分の行動の責任をとる必要があるのか

・世間の中で個人はどのような位置をもっているのか

という問いを考え続けながら

小説を書いてきた人だったのではないかと。

 

つまり、「日本という国で、個として目覚めた人が、

自分なりの生き方をしようとしたときに

どのような障害に見舞われるか」というのが、

漱石が書いた小説に共通しているテーマなのではと

個人的にはおもっているんですが、

「日本には個人がない」と嘆いたところで

何も始まらないので、

「社会」と「個人」のかかわりについて、

どういうあり方が望ましいのか、

真剣に考えた人だったと言ってよいでしょう。

 

ただ、日本においては、世間というものが現実に

はっきりした輪郭を持っていたにもかかわらず、

漱石は、西欧流の社会をイメージしながら

日本の個人を捉えようとしたために、

「世間」と「社会」を

区別して考えられなかったわけですし、

漱石の小説は今日もなお読み継がれているものの、

それを読んだ人々が、そうした日本の

世間と社会の二重構造を改めようとする

行動を起こしたわけではないので、

結果的に「世間」は

そのまま温存されてしまいました。

 

したがって、「本当の自分がどこかに

存在するのではないか」という悩みが生まれたり、

「本当の自分」と「表面的な自分」とを

使い分けて生きていくというような

考え方が生まれたりするのは、

そもそも日本には、

世間というものは存在しても、

社会も個人ももともと存在していなかったのに、

外国からそのような言葉を輸入して、

あたかもそれが

ずっとあったかのような錯覚の中で

この150年を生きてきたためではないかと。

 

次の記事は「対幻想」について

8回にわたって書いたものなので、

「私とは何か?」がメインテーマではありませんが

「私とは何か?」「個人とは何か?」という

問いを考えながら展開しているので、

分量が結構多いんですが、

未読の方は、読んで頂けると有難いです。

なぜ「対幻想」は日本で生まれたのか?(その1)

なぜ「対幻想」は日本で生まれたのか?(その2)

なぜ「対幻想」は日本で生まれたのか?(その3)

なぜ「対幻想」は日本で生まれたのか?(その4)

なぜ「対幻想」は日本で生まれたのか?(その5)
なぜ「対幻想」は日本で生まれたのか?(その6)
なぜ「対幻想」は日本で生まれたのか?(その7)
なぜ「対幻想」は日本で生まれたのか?(その8・最終回)

 

 

この続きはまた明日に!
 

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