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「我見」と「離見」の違い

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「我見」と「離見」の違い

「我見」と「離見」の違い

2021/11/09

わたしたち人間は、

自分の心がザワザワっと揺れ動いたときに、

そのことを自覚することができますよね?

 

でも、そもそもそうやって、

心が揺れ動いていると分かるのは

なぜなんでしょう?

 

その理由について、

きちんと考えようとしたことがある人は、

あまりいないかもしれません。

 

ある人が「人間の本体」「心」「思考」の関係を、

「海」と「舟」と「舟に乗った人の行為」にたとえ、

「思考が不安定になるのは、

 心が不安定だからです。

 心が不安定になるのは、

 海が自分の本体であるのに、

 心が自分自身だとおもい込んでいるからです」

と書かれていた記事を読み、

ナルホドとおもったことがありました。

 

今日はそんなことをとっかかりにしながら、

掘り下げて考えてみようかと。

 


1ヶ月程前に投稿した

プリント学習の先にあるものという記事で、

室町時代に能を大成したといわれる

世阿弥の極意「離見の見」を紹介したんですが、

覚えていますか?

 

わたしたちはよく、

「変わる」とか「変わらない」とかいう

言葉を使ってますが、

2ヶ月程前にこのblogで書いた

あるがままに生きるという記事でも触れたように、

そんなときにたいてい自分の意識は、

そのうちの「変わる」か「変わらない」かの

どちらか片方だけにしか向いていません。

 

でも、「変わるもの」と「変わらないもの」が

〝対〟として存在しているという見方ができると、

「揺れ動かないもの」が

別のところに存在しているからこそ、

「揺れ動くもの」を自覚できるとわかるわけだし、

それこそが、自分を含む世界の側から

自分を見ること(=離見の見)

ではないかとおもうのです。

 

わたしたちは日々雑事に追われていて、

自分自身の小さな世界だけに執着し

広い視野から物事を捉えるということが

なかなかできないので、

揺れ動いているこころが

自分自身の本体だ(=我見の見)と

勘違いしてしまうのでしょう。

 

世阿弥とほぼ同時代というか、

ヨーロッパでは、中世ドイツの神学者だった

マイスター・エックハルトという人が、

「神があなたを見る目は、
 あなたが神を見る目と同じである。」

という言葉を残していますし、また、

わたしが20歳の時に出会って大きな衝撃を受けた

インドのJ.クリシュナムルティという人は、

「あなたは世界であり、世界はあなたである。」

と言っています。

 

〝我見〟と〝離見〟の違いを体感し修得することは、

能の世界においても〝極意〟に属することですし、

こういう話は、あまりに抽象的すぎて、

実体験を伴わないと

理解するのは難しいかもしれないんですが。

 


ところで最近、教室でも

この「離見の見」の話をよくしているんですが、

それは、らくだメソッドの学習が、

セルフモニタリングの要素を含んでいて、

継続的で丁寧な自己観察に基づいて

個別課題を発見する姿勢を大切にしているためです。

 

たとえば、昨日の記事に投稿した

ストップウォッチの話も、この話と関連があって、

寺子屋塾では、一般の使い方とは

微妙に違う使い方をしているってことなんですね。

 

今日の記事で書きたいことと繋げて

それがどのように違うかというなら、

ストップウォッチを

「我見の見」から「離見の見」へシフトするツール

位置づけるような使い方をしているわけで。

 

結局、人生のテーマというのは一人ひとり異なり、

たとえば、お金持ちの人にはお金持ちなりの、

貧乏な人には貧乏な人なりの、

個別の自己課題があります。

 

そうした自己課題は、人と自分を比較している間は、

けっして見えてこないし、

お金持ちになることばかりが

万人にとっての幸せを約束しているとは

言えないわけで。

 

わたし自身も30年以上教育の仕事に関わってきて、

ようやくそのことの大切さが、

実感をもってわかってきたことですから、

こんなことを書いているわたし自身も

どこまでそうした生き方を実践できているのかと

人から問われれば、

甚だ心許ないところがありますし、

 

たぶん、ちょっと人の話を聞いたり、

こうした記事を読んだり本を読んだりするだけで

すぐに具現化できるようなことでは
ないでしょうから。
 

でも、だからこそ、

こうしたチャレンジを、非日常的な空間ではなく、

わたし自身をも含め、各自が日常生活の中で、

繰り返し繰り返し、試行錯誤しながら

ともに学び実践できる寺子屋塾のような場を

創出しようとしていることには、

価値があるんじゃないかと考えている次第です。

 

※画像は葛飾北斎『千絵の海』より「総州利根川」

 

 

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