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現実を見るのが怖いんです

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現実を見るのが怖いんです(つぶやき考現学 No.113)

現実を見るのが怖いんです(つぶやき考現学 No.113)

2022/02/09

「いまの自分を見ることが大事」と話すと、
「自分や現実を見るのが怖いんです。」
という人がいました。
 
その「怖い」という気持ちはわかりますし、
その感情を無くそうとしたり、
まして、そうした恐怖心を持ってしまう自分を
嫌悪したり否定したりする必要はないのです。
 
たぶん、世の中には、
そうした自分や怖い現実から逃げようとして
芸術やスポーツ、お酒やギャンブル、セックス
といったものに走る人も少なくないのでしょう。
 
現象学とか社会学的な視点から見るならば、
そういう人の存在があればこそ
経済の循環や産業が成り立っているとも
いえるでしょうから。
 
でも、自分ひとりの人間から出発して
考えようとするのであれば、
ありのままの現実に対して、
その現実社会からどんなに逃げようとしたところで、
また、自分ひとりがその現実に対して
どのような意味づけをしたところで、
自分が見ている目の前の事実そのものが
瞬時に変わるわけではありません。
 
また、現実をどのように解釈するかは
各々の自由に委ねられているので、
「こう解釈してほしい」という自分の希望を
いちいち相手に押しつけるわけにもいきません。
 
おそらく恐怖心とは、
なくそうとすればするほど
逆にふくれあがってくるものでしょうし、
そうした恐怖心を
ネガティブなものと決めつけることで、
ありのままの現実から
目を反らそうとする自分の姿勢を
正当化しようとしているだけなので。
 
であれば、恐怖心から逃げようとしたり
恐怖心と闘おうとしたり
無理になくそうとしたりする必要はなく、
良し悪しのジャッジメントを手放して、
恐怖心そのものを
ただただ自分で観察する姿勢さえ
あればいいのでしょう。
 
結局、そのようにつぶさに観察することで
見えてくる恐怖心の正体とは、
たんに自分が勝手につくりだした
オバケのようなものでしかないと
気づくでしょうから、
そのように気づけば
恐怖心は自ずと消えてゆくのです。
 
また、ありのままの現実に目を背け、
ありのままの自分を見ようとしないで
日々を生きていくのであれば、
その見えないところや見ていないところが
自分にとっての盲点、ウィークポイントとなり、
それが温存され、固定化されてしまうのは
ごくごく自然ななりゆきなので。
 
ましてや、自分ひとりの力で
地球を回しているわけでも、
目の前の現実としてある世の中を
動かしているわけでもありませんから、
いざ、自分がその現実と関わろうとしたときに、
逆に自分に見えていない盲点に振り回され
コントロールされてしまうのは、
至極あたりまえの話でしょう。
 
つまり、それが必然的帰結であるにもかかわらず、
往々にして人は、そうした状態を
「自分のおもいどおりにならない」とか、
「うまくいかない」とか、「失敗した」などと
言っているのではないでしょうか?
 
このように、いまの自分や目の前の現実を
見ようとしないで生きようとするのは、
たとえるなら、目隠ししたままで
自動車を運転するような
恐ろしい状態だとおもうのですが、
それでもあなたは、
「自分や現実を見るのが怖いんです」
って言いますか?(2018.9.23)

※井上淳之典のつぶやき考現学 No.113

 

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