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ルソー「子どもにつけさせてもいい習慣は?」(「今日の名言・その8」)

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ルソー「子どもにつけさせてもいい習慣は?」(「今日の名言・その8」)

ルソー「子どもにつけさせてもいい習慣は?」(「今日の名言・その8」)

2022/03/14

 子どもにつけさせてもいいただ一つの習慣は、
 どんな習慣にもなじまないということだ。

(中略)

 身体に自然な習性をたもたせることによって、

 いつでも自分で自分を支配するように、

 ひとたび意志をもつにいたったなら、

 なにごとも自分の意志でするように

 してやることによって、

 はやくから自由の時代と

 力の使用を準備させることだ。


 ※J.J.ルソー著『エミール・上』

 (岩波文庫・今野一雄訳)より

 

 

一般的に「習慣づけ」は良いこととされていますが、

今日の名言は、そうした考え方を根本から揺さぶる

ルソーのことばです。

 

「躾(しつけ)」という言葉もありますが、

人間を外的要因によってひとつの枠内に

一方的にあてはめようとし、

他律的にコントロールしようとすることを

「しつけ」と呼ぶことには抵抗がありますし、

そのように、他者から無理にしつけられた習慣は、

仮にその時その場は良かったとしても、

後々に様々なトラブルを引き起こすコトにも

なりかねないのではないでしょうか。

 

当塾で行っているらくだメソッドの学習について、

「毎日の習慣づけってとても大事だし、

それが目的なんですね」と言われる方が

ときどきいらっしゃいます。

 

たしかに、学習法、学習の進め方という面において、

〝習慣づけ〟ということ自体が、

大事な要素であることは間違いありません。

 

でも、毎日コツコツできることが

どんな人にとっても、どんな場合においても

すべて良いことで、正しいことだから、

頑張って皆がそういう状態になれるよう目指すべき、

努力すべきだというように

考えているわけではないのです。

 

それだと、自分の外側にあるべき姿、正解を設定し、

そこに無理に自分を合わせ、あてはめていくやり方と

あまり大差がありませんから。

 

〝習慣づけ〟が課題だという人もいれば、

そうでない人もいますし、

また、〝習慣づけ〟が課題だという人にしても、

習慣付け自体がひとつの手段で目的ではないので、

どのようにその〝習慣づけ〟を実現していくのか

プロセスが大事なのではないかと。

 

そもそも、日本の学校制度において、

本来子どもたちは、

日本国憲法に明記されているとおり、

教育を受ける権利者なのです。

 

にもかかわらず、

宿題をちゃんとやっていかなかったり、

テストで悪い点を取ったりすると

先生からこっぴどく叱られるということを

たぶん多くの人が経験しているとおもいますが、

そのように、学習という行為自体を

他者から促され、規定され、一方的に評価され、

強制されないと学べないような環境に

長年にわたって置かれてきた実状があり、

それは、子どもたち自身の責任ではないからです。

 

本来、「義務教育」という言葉は、

教育を受けることができるという

子どもたちの権利を保障するために、

子どもに教育を受けさせる義務を有する

親や先生など、

まわりの大人たちに向けられた言葉なので。

 

そのことを、

子どもたち自身に教育を受ける義務があると

勘違いしている大人や子どもは少なくありません。

 

繰り返しますが、

子どもたちは、教育を受ける権利者なのですから。

 

「受けることができる(can)」と
「受けなければいけない(must)」とが

まったく違う意味だということはわかりますよね?

 

よって、そのような学齢期を長期にわたり過ごせば、

本来は楽しいものであるはずの学習に対して、

積極的に取り組もうという姿勢になかなかなれず、

受け身で消極的、否定的になってしまうことは、

むしろ自然ななりゆきと言ってよいでしょう。

 

そうした学習というものに対して

一人ひとりが内発的動機付けを大切にしながら、

自分自身のものとして取り戻すことができるかが

問われているとおもっているわけです。

 

つまり、コツコツやるのは良いやり方だから、

みんなで頑張ってそうしましょう!と教え諭して

外側からはたらきかけるのではなく、

学習というものを、

自分自身の心の内側から湧き起こってくる

意志の表現として、学習者自身が自ら決め、

自ら実行していけるような環境づくり

指導者とよばれる人々の本来の課題ではないかと

おもっているわけで、このことは、

ルソーのことばの後半に書かれている内容の、

わたしなりの解釈といってもいいでしょう。

 

しつけについて、わたしなりの結論を言うなら、

自分自身がそう望んでいることに限って、

自分で自分をしつけるということしか

意味を成さないのではないかというのが、

長年にわたって教育の仕事に関わり、

たくさんの人を見てきた者としての実感で、
このルソーの
どんな習慣にもなじまないという習慣が大切だ

という言葉に共感するのです。

 

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