らくだ教材は他の教材とどう違うのか(平井雷太『らくだ学習法』から)
2022/04/22
金曜は読書関連のカテゴリー記事ということで、
読書会つんどくらぶのご案内や、
中村教室の本・雑誌・資料の紹介などを書いています。
コツコツやるのは良いやり方だから、
みんなで頑張ってそうしましょう!と教え諭して
外側からはたらきかけるのではなく、
学習というものを、
自分自身の心の内側から湧き起こってくる
意志の表現として、学習者自身が自ら決め、
自ら実行していけるような環境づくり
という言葉や、
らくだメソッドで学んでいれば、
学力をつけることを目的に置いて頑張らなくても、
学習プロセスで個別に立ち現れてくる課題と
ちゃんと向き合って、ルールに則ってやりさえすれば
結果として学力は、自ずと身についてしまう
という言葉を読みましたが、
らくだメソッドと他の教材が
具体的にどのように違うのか、
なぜこの教材だと
「自分からすすんで学んでみよう!」という風に
学習者の内発的な動機づけが引き出され、
結果的に学力が自ずと身についてしまうのかが、
今ひとつよくわかりませんと言われる方がありました。
そこで今日は、このテーマで書かれた文章を
2005年3月に実業之日本社より出版された
平井雷太さんの著書
のP.62〜63からご紹介しようとおもいます。
(引用ここから)
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■らくだ教材は、他の教材とどう違うのか
先日、教室を見学にこられたお母さんから、
こんな質問を受けました。
「らくだ教材は、大人が教えなくても子どもが
自分で学習できる、ということですけれど、書店にも
いろいろ教材が出ていますよね。
正直なところ、市販のドリルや問題集とらくだ教材は
どこが違うのか、よく分からないのですが」
私はこう答えました。
「らくだ教材は、市販の問題集とは作り方が
まるで違います。どこが違うかと言えば、
自己管理ができるかできないかでしょうね。
市販の問題集を使っても、確かにセルフラーニング
(自分から進んで学習すること)が
できる子はいるでしょう。
問題集にある解説を読むだけでスッと頭に入る子ども、
そこに載っている問題数をこなすだけで
習熟してしまう子どもも確かにいます。
しかし、市販の問題集で
それができるようになる子どもは、
100人中1人か2人というところでしょう。
らくだ教材は、子どもが自分から進んで
学習しやすいように配慮して作った教材ですから、
年齢・能力と無関係に誰でも、
セルフラーニング(自分のことを自分で決める)
しやすくなっているのです。
らくだ教材では、生徒1人ひとりが
ストップウォッチを持って時間を計りながら、
プリントをやっています。
その結果をプリントの目安時間
(「めやす5分」なら5分台でできれば合格)と
照らし合わせ、
目安の時間でできたら次のプリントに進み、
時間がかかりすぎたら同じプリントを繰り返すか、
もっとやさしいところに戻る。
ストップウォッチを使ったおかげで、
ある単元の内容をマスターしたかどうかを、
子ども自身が自分で判断できるようになったのです。
そのため、なぜ今このプリントをやっているのか、
このプリントを終えたら次は何をしたらいいのか、
その動機が1人ひとりの子どもに
生まれるようになりました。
子どもに学習する動機が起きなければ、
なぜ今この問題をやっているのか
理由が分からないまま、与えられた教材を
ただこなしていくだけになってしまいます。
それでは一斉授業をただ聞いているだけと同じで、
学習が受け身的になり、
子ども自身のものにはなかなかなっていかないんです」
「『動機が起きる』って何ですか?」
「『〜をやろう』という思いが、
外から与えられるのではなく、
自分の内側から起こってくることです。
そのためには情報が必要です。
自分が今、どんな状態にあるのか、
次に何をやればいいのか、それを判断するための
情報(たとえば時間)を持っていれば、
自分の内側から学習動機が起こる。
らくだ教材では、その情報を
提供できるというわけです。
また、らくだ教材は『プリント1枚につき1要素』が
原則になっていますから、
自分がどこでつまずいているかを、
子どもが自分で見つけられるようになっています」
「1枚のプリントに1要素ですか?」
「たとえば、3ケタ×2ケタのかけ算のプリントが
できない子どもがいた場合、
できない原因は一般的には、 筆算をやる過程で必要な
タテ式のたし算が苦手なのか、
九九が身についていないためか、
3ケタ×2ケタができないからなのか、
判断しにくいわけです。
しかし、らくだ教材の場合、その流れが
たし算(ヨコ式)
↓
ひき算(ヨコ式)
↓
たし算(タテ式)
↓
ひき算 (タテ式)
↓
かけ算九九
↓
かけ算(タテ式)
となっているため、各単元を合格してから、
次の単元に進むという形になっています。
ですから、その子が今タテ式のかけ算をやっていれば、
その前にタテ式のたし算、
九九までは完全にできているわけで、
純粋に3ケタ×2ケタのかけ算のみが
できないということになるわけです。
つまり、どこができないのか、
子どもが自分で判断できるようになっているのです。
普通、そういう情報は大人が全部握っているものです。
その子ができない理由を、大人だけが分かっていて、
子どもは言われたことだけをやっていればいいと、
勝手に善意の『押しつけ』をされてしまうのです。
そんなやり方で、子どもにヤル気を出せと言っても
無理ですよ。
子どもが自己決定して学習を進めていくためには、
子どもが判断できるだけの材料・基準が必要です。
らくだ教材では、そのための情報を
簡単に1人ひとりの子どもに提供できますが、
それができにくい市販教材では、
セルフラーニングが難しい結果になってしまいます」
(引用ここまで)
わたしが寺子屋塾を開塾する前のことですが、
小中学生対象の進学塾で7年間、子どもたちに
勉強を教える仕事をしていたことがあります。
そのときに算数、数学については、
教材研究や指導法の研究を自分なりに
していたつもりでしたが、
やり方をどんなにわかりやすく丁寧に教えても、
子どもが自分で問題を解けるようには
なかなかなっていかない現実に突き当たっていたので、
ここに平井さんが書かれていることの意味は
とてもよくわかりました。
ようするに、先生という人間が、
外側から情報を与える形の指導では、
子どもたちはどうしても
学習に対して受け身にならざるを得ません。
まわりの大人の力で引き上げられた学力というものは、
揮発性が高いために、時間が経過すると、
元の木阿弥状態になりやすいだけでなく、
一部の子どもたちは、
「先生から教えてもらわないとわからない」
「塾や学校へ行かないと勉強できない」という風に、
気がつかないうちに、
依存的にもなっていくのでしょう。
つまり、「この問題を解いてやろう!」と
子どもたちの内発的な動機が起こるためには、
ただ、解き方を一方的に教えるだけではなく、
子どもたち自身に、
何ができて、何ができないのかという
自分について知ることができるツールや
自分についての情報も、事実ベースで
きちんと手渡す必要があったのです。
・・・ということで、このテーマについては、
らくだメソッドが他の教材とどう違うのか、
どういう特徴があるのかという
実例などもご紹介しながら
何回か続けて書いてみようとおもいますので、
おたのしみに!
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