観察力の大事さに気づいた実体験はありますか?
2023/02/13
今日は月曜なので、15:00〜21:00まで
中村教室にいたんですが、
やってきた塾生のひとりから、
TVドラマ『相棒』のblog記事を読み、
こちらの記事で紹介されていた
購入して読み始めているんですが、
井上さんが今までに観察力の大事さに気づいた
実体験としてどんなことがありましたか?」
と問われました。
以下はそのときに話した内容です。
昨日のblog記事に
「自然学習力」って話を書いたんですが、
「自然学習力」が駆動するにはどうすればいいかを
考えるきっかけとなった、
わたしがこの寺子屋塾を開く前、
小中学生対象の進学塾で教えていた時の体験談が
参考になるかもしれません。
ただ、昨日の記事で使った
「自然学習力」という言い回しは、
一般にはあまり馴染みがない言葉で、
「自発性」「内発力」「内発的動機づけ」
と表現されることが多く、
広い意味では「エンパワーメント」という概念に
含まれていると考えて頂ければいいんですが。
当時その塾は、学校の教科書を使って授業をする形で、
日曜祝日は朝から晩まで補習授業をやるなど、
とにかく徹底的に教える、詰め込むという方針の
スパルタ塾でした。
年間100〜200名の卒業生がいたので、7年間で
だいたい1000人近くの子どもたちと接しましたが、
そうした塾に入ってくるのは、それまであまり
家では勉強をしてこなかった子どもたちが大半で、
無理矢理であってもそうした環境に放りこまれれば、
テストの成績が上がるのは当然で、
目標の中学校や高校に概ね合格していきます。
でも、そうした塾にやってくる子どもたちを
観察しているうちに、
熱心に教えれば教えるほど、
子どもたちの姿勢がどんどん受け身になっていく
傾向があることが気になっていました。
その塾の授業は、教科別担任制をとっていて、
基本1つの教科は週1回のインターバルで
時間割が組まれていたんですが、
授業で懇切丁寧に分かりやすく説明をしても、
1週間後に前週の内容を復習したときに
キレイさっぱり忘れてしまっている子どもが
少なくないのです。
また、質問を投げかけたときや、
何かの課題につきあたったときにも、
それを自分のアタマで考えようとせず、
先生が答を教えてくれるのを待っているのです。
目標の高校や中学には合格できたものの、
塾を卒業した後で苦労しているといった
風の便りをチラホラ耳にすることがあって、
前記したようなわたしの懸念を裏づけるものでした。
その塾には小中学生のコースしかなかったので、
中学生の場合は、高校受験が終わると同時に
卒業なのですが、教室に遊びにきた卒業生から
「高校生コースも設けてほしい」と
言われたときは、とても複雑な心境でした。
結局、塾の先生というまわりの大人たちの力で
無理矢理に引き上げられた学力というのは、
一夜漬けの勉強と同じく揮発性が高いわけで、
自分で勉強する力を身に付けたわけではないし、
その子自身の本当の実力には
なっていないんじゃないかと疑問が浮かんだんです。
もうひとつ、たくさんの子どもたちを観察していて
気がついたことがありました。
塾にやってきて成績が伸びる子どもが多いといっても、
その伸び方には当然個別にバラツキがあります。
それなりに伸びる子どもが大半であるなか、
ごく少数、飛躍的に伸びる子どもがいたんですが、
その子どもたちの顔を思い浮かべたとき、
ある共通項を発見したのです。
さっき話したように、
その進学塾はきちんと教えることを大事にしていて、
子どもたちからは「熱血!スパルタ塾」という
レッテルが貼られていました。
よって、そうしたスパルタ塾のような場所には、
だいたい、親が無理矢理に入れさせるか、
友だちが行っているからという理由で
いわば付き合いで入るケースがほとんどで、
子どもが自分の意志で入るケースは少ないんですが、
塾へやって来て飛躍的に伸びる子どもたちは、
ほぼ例外なく、自分の意志で入塾を決めた
子どもだったのです。
この話は、進学塾という場が
受け身人間を増産してしまっているんではないか
という懸念とも合致するので、
自分からすすんでやる自発性というものが、
人間の学び、成長に関与しているのではないか
という仮説をわたしがたてられたのは、
約1000人の小中学生を観察してきたためで、
内発性、自発性というものはどうすれば育つか、
自然学習力がいかにすれば発動するかが
教育における重要課題なのではないかということを
考えるきっかけとなったのです。