寺子屋塾

甲野善紀 x 方条遼雨『身体は考える 創造性を育む松聲館スタイル』④

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甲野善紀 x 方条遼雨『身体は考える 創造性を育む松聲館スタイル』④

甲野善紀 x 方条遼雨『身体は考える 創造性を育む松聲館スタイル』④

2023/07/26

昨日投稿した記事の続きです。

 

昨日の記事にわたしは次のように書きました。

 

寺子屋塾では、

自分で決め、自分でプリントをやる体験を通して、

自分を観察し、自分の感覚と対話し、

失われて久しい一人の「個」としての原点を

取り戻すということを

やっている場所なんです。

 

寺子屋塾の開塾は1994年だったんですが、

開塾する前から、わたしが一人ひとりの塾生に

どう関わるかを考えるより以前に、

その場をどうつくるかという

〝場づくり〟に着目していました。

 

ということで、今日のテーマは

この〝場づくり〟なんですが、

昨日まで3回にわたり紹介してきた

方条さんの新刊書127〜130ページに

場についての記述があったので、

まずはその部分を紹介します。

 

(引用ここから)

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場の理論

私は比較型の思考やトップダウン型の組織とは正反対の概念として、「場の理論」というものを提唱しています。
これは、そこにある状況や現場を「宇宙空間」のように捉えることから始めます。
一人ひとりの人間や、存在する様々な要素が、宇宙空間における「惑星」となります。
惑星にはそれぞれ「重力」があります。
場の理論における重力とは、「影響力」です。
たとえば幼児教育の現場では、私は「講師」という立場なので重力=影響力が大きい。
「武術」という特殊技能もあるので、重力は更に加わり、大きな惑星となります。
その場にいる、活発でどんどん暴れる子どもも大きな惑星です。
逆に遊んでいる輪に入れず、隅っこでぽつんとしている子の重力は小さい状態です。
アシスタントの方たちは中くらいの惑星でしょうか。


この時、活発な子ども同士で遊んでいる空間は、大きな「重力」が発生しているので、私は放っておきます。
そのかわり、一人でぽつんとしている子どもと一緒に遊びます。
そうすると、その子と私の惑星が接近し、大きな「重力」が生まれます。

そのうちに、暴れている子供のグループの一人が、「面白そうだな」と近寄って来たとします。 その子も加わり三人で遊んでいると、ぽつんとしていた子と、元気な子の二人で盛り上がり始めます。

そうしたらその二人に「重力」が生まれたので、私はそこを離脱し、新たに低めの重力の場を目指します。
アシスタントの人たちには、自分たちのバランスで、重力の足りない所を探して移動してもらいます。
これは、何をしようとしているのか。
「場」における重力バランスが均一に整うよう、常に「均(なら)し続けている」のです。

 

こうして、変転する状況に合わせてそれぞれが調整・移動をおこなっているうちに、場が「回転」し始めます。
そこから生じる「渦」の勢いが「場の力」であり、方向性が「潮目」です。
私はアシスタントの方々に、「潮目を読んでください」とも言っています。

 

潮目

場の流れは、常に変転しています。
どこかで重力が高まったり弱まったり。
星と星が近寄ったり離れていったり。
常に、留まる事はありません。

その「変化」を捉え、自分の中の情報を次々と更新していく力が「潮目を読む」能力です。
そして、その瞬間ごとに潮目を読みながら適切に振る舞える事が「場を作る力」です。

 

場を作る力が増すほどに潮の流れに上手く乗ることができるので、その人自身の消費エネルギーは減ってゆきます。

つまり、場の力と潮目を読む能力が高まるほどに、その人は「何もしなくても良くなる」のです。

なので、場のエネルギーが充分に高まり、自立的に回転が続きそうな事を確認したならば、私はそこをそっと離脱します。

 

私自身の「重力」が邪魔になるからです。
私の教室で最も理想的なのは、私が遠巻きに眺めていたり、トイレに席を外しても誰も気付かない状況です。
私が作ろうとしているのは、私がいつこの世から消えても、成立し続けるような「場」なので。

 

甲野善紀 x 方条遼雨『身体は考える 創造性を育む松聲館スタイル』より

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(引用ここまで)

 

たとえば、ここに1個のリンゴがあるとします。

あなたがいま見ているこのリンゴは、

パソコンやスマホなどの画面のなかに

あるわけですが、

このリンゴが別の場に置かれている状況を

イメージしてみて下さい。

 

たとえば、このリンゴが

スーパーマーケットに並んでいれば、

「商品」という属性をもつことになり、

お家の食卓に置かれていれば、

「デザート」という属性をもち、

お家のなかでも仏壇の前にあれば、

「お供え」という風になりますね。

 

つまり、目の前にあるリンゴは

誰が見てもリンゴであることには

変わりないのですが、

同じ1個のリンゴであっても、

そこに異なる意味づけが可能になるのは、

リンゴが置かれた〝場の力〟に因ります。

 

こうした、見えない場の力をいち早く感じ取って、

その場にいる人たちに対して、

問題解決を促したり、調整したりして、

さまざまな働きかけを行う人のことを

ファシリテーターと呼ぶことがあるんですが、

寺子屋塾を創業し、

らくだメソッドで指導を始めて10年を経た

2004年頃から、

自ら望んだわけではないのに、

まわりからファシリテーションを学ぶガイド役を

請われるようになり、

気がついたときにはファシリテーターと

呼ばれる存在になっていました。

 

ただ、ファシリテーターというような、

使われるようになって日が浅い言葉は

言葉の意味がまだ定着していないことから、

その使われ方にはかなり幅があり、

とくにビジネス畑の人にとっては、

従来の司会者的役割を果たす人物や

場に対して積極的に介入する人のことを

ファシリテーターだとおもっている人も

少なくありません。

 

でも、わたしは、

ここに方条さんが書かれているように

わたしがその場から存在しなくなっても、

何も問題なくうまく回っていくような

配慮や働きかけができることを

最高のファシリテーションだと考えているので、

積極的に介入する人のことは、

区別して〝シキリテーター〟と

呼ぶようにしているんですが・・・笑

 

それにしてもこの方条さんの「潮目を読む」って

とってもイイ表現ですよね〜

 

この続きはまた明日に!

 

【参考記事】

自分の存在を消すこと(旧ブログ「往来物手習い」より)
ファシリテーション研修で頂いた質問への回答

清水博『場に〈いのち〉がある』(今日の名言・その33)

向谷地生良『どんな種が蒔かれても実る黒土のような場』(今日の名言・その34)

計画的偶発性の場づくり 哲学対話とゲームセンター型コミュニティ

 

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