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「絶対浮力」と「関係浮力」について

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「絶対浮力」と「関係浮力」について

「絶対浮力」と「関係浮力」について

2023/12/28

昨日投稿した記事の続きです。

 

12/9に名古屋で行われた、二村ヒトシさんの

【性や恋愛の「なぜ」を考える】

哲学対話イベントに参加したことについて、

レポートを4回にわたって書いてきた流れから、

その記事の前に書いていた為末大さんの

『熟達論』をめぐる話との関連性も意識しつつ、

なぜ、セルフラーニングの場を主宰するわたしが

二村ヒトシさんの著書に注目しているのか、

その理由について改めて確認しながら

経緯について書いています。

 

よって、今日の記事で書こうとしている話を

いきなり読まれても、

これまでの文脈がある程度見えないと、

伝わりにくいでしょうから、

記事の最後に過去記事、関連記事の

リンク集をつけておきますので、

未読記事のある方は、

そちらを可能な範囲で適宜アクセス頂いた上で

以下の文章をお読みください。

 

 

さて、12/20に投稿した記事で、

千葉雅也さん、柴田英里さん、二村ヒトシさん

三者による鼎談を収めた

『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』から

二村さんが話されたところを引用しながら、

主知主義と主意主義について書いてきました。

 

この主知主義とは、ざっくり言ってしまえば、

社会が良くなれば人は幸せになるという考えかたを

言うわけですが、

そもそも、日本という国には、

世間は存在しても社会が存在していないので、

その前提から崩れてしまっているわけですね。

 

この「世間と社会の二重構造」については、

これまでにもこのblogでは、

阿部謹也さんの文章などを紹介しながら

繰り返し書いてきました。

教養とは何か(阿部謹也『大学論』より・その3)

 

12/26に投稿した記事で触れたように、

そうした日本社会の特殊性を最も象徴しているのが

昨今表面化している政治家の裏金問題や

ダイハツの不正問題に代表される

企業のコンプライアンス違反です。

 

シェアした東洋経済ONLINEの記事で、

山口周さんは

日本には社会全体が拠って立つような

道徳律がないと指摘されていたんですが、

そうであるが故に、自分の行動を規定する軸足を、

狭い世間の掟に置こうとする人間が

出てきてしまうのでしょう。

 

山口さんは同記事中に、

・労働力の流動性を上げて、狭い世間の掟を

 見抜けるだけの異文化体験を持つ

・教養を身につけ、狭い世間の掟を妄信しない

 人間観や組織のあり方を知る

という解決策を2つ提示されていました。

 

わたしが、主知主義と主意主義の話を

こうして繰り返し書いてきたのも、

為末さんの自己責任論と社会責任論についても

どちらが正しいかが言いたいわけではなく、

考え方の方向性の問題であって、

どちらの考え方を大事にすれば、

人間としての成長、成熟をもたらし、

こうした社会問題の解決にも

つながるのかってことなんですね。

 

そういう意味で今日はもうひとつ、

考え方の枠組みを紹介したいとおもいます。

 

 

大和信春さんが書かれた『和の実学』という本に

書かれている話で、

「絶対浮力」と「関係浮力」という概念なんですが。

 

この世に生息できる能力のことを

このたとえでは「浮力」という言葉で表しています。

 

現代社会のビジネス環境を海にたとえれば、

サーフィンをしているときの

一時も同じ姿を現さない

荒波のようなものと言ってよいでしょう。

 

そんな海をイメージしてみてください。

 

その海にゴムまりとお椀が浮かんでいます。

 

ゴムまりは、自分自身に浮力があるから、

いくら波が荒くても、

平気で浮いていることができますよね?

 

このように、自らに備わったもので成り立つ

生息能力のことを「絶対浮力」といいます。

 

ところが、お椀の場合となると、

最初のうちは水面の上で浮くことができても、

ちょっと大きな波がやってきたら、

すぐに沈んでしまいかねません。

 

このように、失われうる条件に依存して成り立つ

生息能力のことを「関係浮力」といいます。

 

たとえば、企業経営の場合

経営者自身に実力(=絶対浮力)があれば、

どんなに大きな変化が訪れても

簡単には倒れませんが、

下請け会社のように、親会社の経営状態に

依存している状態にある場合は、

親会社が倒れると

大きなダメージを受けてしまいます。

 

人間の場合で言うと、絶対浮力とは、

衣食住の調達能力、ホンモノの人脈、

問題対応力等々・・・

つまり、ひとりで放り出されても

まわりの人からアテにされ、活用され得る力と

言ってよいでしょう。

 

それに対して、関係浮力とは、

所属、役職、学歴、家柄、ルックス、免許、資格、

財産など、

状況が変化してしまえば、それによって簡単に

失ってしまいかねないもののことです。


今日のような変化が大きく

なおかつ激しい時代においては、

関係浮力をあくまで当座のものとして、

絶対浮力の部分を自分自身にできる限り増やし

培おうとする姿勢が

重要であることは言うまでもありません。


だから、目の前の人との関係をどうするかより、

自己受容、つまり自分の中に葛藤がなく、

自分自身との人間関係が円滑であるかどうかが

先であるし、

寺子屋塾で学習テーマとして重視している

セルフラーニング力、つまり

自分でやると決めた1日1枚のプリントが

頑張らず、坦々とやり続けられる状態を

キープできるかどうかがホント重要なんですよ。

 

この続きはまた明日に!

 


【過去投稿記事】

改めて〝セルフラーニング〟とは何か?
為末大「自分を認められるのは自分しかいません」(今日の名言・69)

二村ヒトシさんの「性や恋愛を考える」哲学対話に行ってきました(その1)

人を変えようとするのが教育か?

二村ヒトシさんの「性や恋愛を考える」哲学対話に行ってきました(その2)

(その3)

(その4)

主知主義と主意主義について(『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』より)

『なぜ愛』と『すべモテ』に出会ったきっかけ

「自分の頭で考える」とは「自分の頭だけで考えない」ということ

二村ヒトシさんと初めてお目にかかった時のことなど

読書会つんどくらぶで『なぜ愛』を読んだときのレポート

主知主義と主意主義について(その2)

主知主義と主意主義について(その3)

日本の教育が変わらない原因は?(つぶやき考現学 No.95)

 

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