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2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その20・最終回)

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2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その20・最終回)

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その20・最終回)

2026/02/08

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」も

今日で20回目を数え、最終回を迎えました。

 

これまでの記事を読んでいないと

今日これから投稿する記事の内容が

わからなくなるということはありませんが、

これまで投稿してきた各々の記事は

相互に微妙に関連性があり、

未読記事が気になる方は、次から先にどうぞ!

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その1)

→全体の概観、選ぶ前提条件についてなど

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その2)

→その1の続き、24冊のリンク集

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その3)

→⑩リットミュージック編『インタビュー:坂本龍一』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その4)

→㉑阿部洋一『それはただの先輩のチンコ』(略称『それチン』)

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その5)

→24冊に漏れた雑誌、ムック本などについて

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その6)

→⑫戸谷洋志『Jポップで考える哲学 自分を問い直すための15曲』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その7)

→⑪エルケ・ヴィス『QUEST 質問の哲学』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その8)

→⑨フェリックス・ファブリック『本当のわたしを見つけにいこう』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その9)

→⑤アルボムッレ・スマナサーラ『ヴィパッサナー瞑想』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その10)

→⑦小室直樹『数学嫌いな人のための数学』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その11)

→⑬崎谷博征『水と命のダンス 生命の根源に迫る水の驚異的メカニズム』

 ⑮星野源『いのちの車窓から2』

 ⑱泉谷閑示『「自分が嫌い」という病』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その12)

→④溝口雅子『Notionなんでも事典』

 ㉒落合陽一、山口周ほか7名『Chat GPTは神か悪魔か』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その13)

→2015~2024年の10年分読書ふりかえりブックリスト

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その14)

→⑭若杉逸平&うちやまともみ『対話について対話しよう』

 ㉓石田光規『自己決定の落とし穴』

 ⑥前野隆司『人はなぜ「死ぬのが怖い」のか』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その15)

→⑧白石正明『ケアと編集』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その16)

→いま読んでいる本12冊と本の読み方について

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その17)

→⑯山野弘樹『独学の思考法 地頭を鍛える「考える技術」』
 ⑰成田悠輔『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり政治家はネコになる』

 ㉔堀田秀吾『科学的に証明された すごい習慣大百科』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その18)

→③苫米地英人『その検索はやめなさい』

 

2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その19)

→②由佐美加子&中村伸也『レゾナント・コミュニケーション』

 

 

さて、最終回の今日は次の3冊に対して
まとめてコメントします。

工藤勇一&苫野一徳『子どもたちに民主主義を教えよう』

西川幹之佑『発達障がい児の僕が自己変革できた理由』

杉田儀作『新しい学力観に立つ学級活動の展開』

 

まず、なぜ工藤さん&苫野さんによる

『子どもたちに民主主義を教えよう』を

読書ふりかえりのトップに選んだかについて。

 

工藤勇一さんについては、

(その13)で10年分紹介した読書ふりかえり

2019年に選んだうちの1冊に、

工藤さんが最初に書かれた

『学校の「当たり前」をやめた。』

入っていました。

東京都千代田区立麹町中学校という

公立の中学校で、定期テストや宿題をなくし、

担任制も校則もなくしてしまった校長として

マスコミでも話題になったので、

たぶんご記憶の方もいらっしゃるでしょう。

 

1989年(平成元年)の学習指導要領改訂は、

日本の教育において

「知識偏重の詰め込み教育」から

「個性を生かすこと」や「自ら学ぶ意欲」を

重視する方向へ、大きく舵を切った

歴史的転換点と言われています。

 

その新しい学習指導要領で示された内容を総称し

〝新しい学力観〟と言われているんですが、

この新しい学力観をふまえ、

1996年に中教審答申

「21世紀を展望した教育の在り方について」で

新たに〝生きる力〟という概念が示されました。

 

もちろん〝生きる力〟と一口で言われても

あまりに抽象的すぎますし、

個別の解釈に違いが大きくなってしまうので、

次のような文言で

具体的に明示されています。

 

・自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力

・自らを律しつつ他者と共に協調し、他人を思いやる心や感動する心をもつ豊かな人間性

・たくましく生きるための健康や体力

 

この〝生きる力〟のなかでも、とくに

自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、

主体的に判断し、行動し、よりよく問題を

解決する資質や能力については、

寺子屋塾の学習においても

開塾以来継続的に大切にしている指針なのですが、

工藤先生の実践を知って、

新しい学力観に基づく〝生きる力〟を育むことを

本気で実現しようとする人物が

学校教育の世界にいらっしゃることがわかって、

とても心強く感じていました。

 

それで、その工藤先生の教育実践に

しばらくぶりに触れたきっかけとなったのは、

2025年1月~3月の冬ドラマとして

TBS系で放映された日曜ドラマ『御上先生』

教育監修に工藤勇一さんが関わっておられることを

知ったことです。

 

日曜劇場『御上先生』から見る“教育” 課外授業 ~教育論と表現論を知る~【TBS】

 

一昨日投稿したふりかえり(その18)の記事に、

苫米地英人さんの著書を

10冊以上読んだことを書きましたが

前記したような経緯から、

2019年当時は少なかった工藤勇一さんの著書が

こんにちでは多数あることがわかり、

工藤勇一さんの著書も少しずつ取り寄せ

昨年は10冊以上読みました。


また、おそらくネット上に

100本以上は公開されているであろう

工藤勇一さん関連のYouTube動画も

その8割以上視聴し、

一番最初に観たのが次の動画です。


「学校教育が主体性を奪ってる」学校で民主主義をどう実践する⁉︎【工藤勇一さん】

ふりかえり(その17)で紹介した成田悠輔さんの本

『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり政治家はネコになる』

は、タイトルにある〝民主主義〟という言葉に

ピンと感じるものがあったと書きました。

 

それで、上の動画を観た流れで、

次の動画を観たんですが、

動画の終わりの方で工藤さんが、

「この本は全精力を使って書いたので、

 ほんとうに多くの皆さんに読んでほしい」

おっしゃっていて、工藤さんが

本書の存在をとりわけ

大切に考えられていることが分かったのです。

 

工藤勇一氏×苫野一徳氏『子どもたちに民主主義を教えよう』対談

工藤さんの数ある著書の中から

本書を選んだ理由は、以上のようなことでした。

 

本書には副題として

「対立から合意に導く力を育む」とあり、

昨日投稿した(その19)の記事

大きなテーマとなっていた

対話的コミュニケーションについて

本書でも言及されています。

 

序章と目次、第1章の冒頭部分(p.43まで)は

アマゾンのサンプルページで読めるので

ぜひご覧になってみて下さい。

 

本書のうちわたしが特に印象に残った箇所を

第1章の後半部分から以下にご紹介。

 

引用ここから

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

学校って「自分の将来のため」にあるの?

 

苫野 工藤さんが民主主義を意識されはじめたのは、教員になられたときからですか? 

工藤 最初からですね。僕がはじめて着任したのは山形県の小さな農村地帯にある中学校で、たしかそこでの最初の授業だったと思うんですけど、子どもたちに「学校って何のためにあるのかな?」と聞いたんです。

苫野 ほう。

工藤 すると子どもたちは「勉強するため」、「自分のため」、「将来のため」などと言うわけですね。そこで僕はこう言ったんです。「たしかに自分のためでもあるし、将来のためでもあるよな。でも、自分のためだけだったら学校っていらないかもよ。だって勉強なら家でもできるじゃん。僕はね、学校は平和のためにあると思うんだ。もし学校がなかったら、絶対に世界に平和はやってこないと思うよ」って。

苫野 素敵だなぁ。

工藤 世界には学校教育で戦争を煽る国があるわけですね。残念ながら、かつての日本もそうだったとも言えるわけです。だから学校とはただ存在していれば価値があるわけではなく、そこで何を学ぶかが肝心。そのことは教員になる前からずっと考えていて、やはり民主主義教育だろうと思っていたんです。

だから感覚的には子どもたちと一緒に言葉探しをしてきた感じですね。毎年、新しい子どもたちに同じことを語るんですけど、言葉がちょっとずつ変わっていくんです。当時、使う言葉としては「平和」が多かったですね。あと「自分のために勉強する」という考え方も僕はずっと気になっていました。僕らの世代がまさにそうで、親からも、先生からも「自分の将来のために勉強するんでしょう」って必ず言われましたからね。 

苫野 日本では、明治5年に発布された「学制」によって近代学校制度が整えられていくんですが、その「学制」の序文の中に、「学問は身を立(たつ)るの財本」であるという言葉があるんです。人びとに教育を受けさせるにあたって、明治政府は、勉強すれば立身出世できるんだよと説いたんですね。学校に行くことや学ぶことは、自分のある種、利己的な目的を叶えるためだという発想は、この頃からの伝統とも言えるかもしれません。でも学校は、同時に社会のためにもあるんです。それがまさに、民主主義社会を成熟させるためという目的ですね。そしてそれはもちろん、最終的には一人ひとりの自由の実現につながるわけです。

工藤 そうそう。

苫野 ちなみに、学校制度が始まって以来、学校は子どものためにあるのか、それとも社会のためにあるのか、という対立は、国内外を問わずずっと続いてきました。

でも私は、これは「問い方のマジック」であるとずっと言ってきました。「AとB、どちらが正しいか」という二項対立的な問いを突きつけられると、人は「どちらかが正しくて、どちらかが間違っている」という思考のマジックに引っかかってしまいやすいんですね。でもよくよく考えたら、学校はどっちのためでもあるに決まっています。

個人からすれば、学校は自由になる、つまり生きたいように生きるための力を育んでくれるものです。他方、社会からすれば、「自由の相互承認」の原理をより実質化するためのもの。工藤さんの言葉を借りれば、一人ひとりの自由と平和な社会のために学校がある、と言ってもいいですね。

 

『子どもたちに民主主義を教えたい』P.58~61より

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

引用ここまで

一番最後にある、苫野さんの

〝「自由の相互承認」の原理〟が、

民主主義の本質のひとつとして欠かせない

大切なものであり、

学校とは、そうした社会が成熟していくための

土台づくりの場だという話が一番響きました。

 

そして、そうした学校を実現していくために、

対話的な関わりという姿勢が

必須になってくるわけですが、

工藤さんは最初の授業のときから、

自身の考え方を一方的に押しつけていなくて、

子どもたちとのやりとりが対話になっていますね。

 

「学校って何のためにあるのかな?」の問いに

あなたならどう答えますか?

 

 

本書の最後に置かれた「終章」は

対談形式でなく、

苫野一徳さん執筆による文章なんですが、

「工藤さんは教育の本質を問い続ける

 哲学者であり、

 それを学校現場で実現してこられた

 実践者である。」

という言葉があり、また、

「工藤さんがなぜ、どのようにして、

 民主主義の土台となるような学校づくりを

 可能にしたのか。本書はその問いに答える

 格好の材料になっている。」

とも書かれていたんですが、

前記したように、

わたしもその通りだなとおもいました。

 

工藤さんは、大学は教育学部出身ではありません。

 

でも、教育について

専門的に学んだ方ではなかったからこそ

学校現場で子どもたちと試行錯誤しながら

一緒につくられてきた教育実践と、

哲学的基盤が重要だと受けとめました。

 

本に書かれている内容も、

動画で語られている内容も、

そのすべてが、

ご自身の体験に裏付けられていることばかりです。

 

次の動画は2時間近くあって長いんですが、

前半1時間が工藤さんが話されていて、

ものすごく濃密な内容なので、

1時間の動画を視聴する余裕のない方は、

終わりの10分強(48:00~ )だけでも

聞いてみて下さい。

 

工藤さんが校長として

横浜創英中学高校に赴任された2020年4月1日は、

コロナ禍が始まり全国休校状態だったときで、

その部分で語られているエピソードは、

そのとき工藤さんが実践されたことなんですが

本当にオドロキ!!の内容ですよ。

 

「“自律”と“共生”を育む教育がより豊かな社会を創造する!」

 

さて、この記事の冒頭で

今日はまとめて3冊コメントすると書いてあるのに、

なぜ工藤先生のことばかりなんだろうと、

疑問におもわれているかもしれません。

 

3冊セットにしてコメントしようとした理由は、

工藤先生が学級経営について実践するうえで、

参考になった本として、

何かの動画で語られていたのが

杉田儀作『新しい学力観に立つ学級活動の展開』

だったためです。

 

この杉田儀作さんの本は、30年も前の出版で、

現在は絶版になっていますが、

子どもたちが能動的、主体的に

クラスを自治していく運営方法が

具体的に書かれている非常に貴重な著作。

 

そして、もう1冊の本、

西川幹之佑『発達障がい児の僕が自己変革できた理由』

の著者・西川さんは、工藤勇一さんが

麹町中学校で校長をされていたときに

在籍していた生徒でした。

 

工藤先生がどのような指導をされたかについて

その指導を受けた生徒の立場から

知ることができます。

 

また、この本が出版された1年後に

西川さんのお母さまが次の本を書かれました。

 

西川裕子『発達障害のわが子が笑顔で自律する育て方』

関心ある方は次の動画もどうぞ!

 

麹町中学校で工藤先生から学んだこと 『死にたかった発達障がい児の僕が 自己変革できた理由』

 

昨日(その19)の記事でも記したので、

これも繰り返しになりますが、
この年間読書ふりかえりに本を選ぶ方針として

・同じ傾向、ジャンル本の重複をなるべく避ける

と明記しているのにもかかわらず、

こうやって工藤勇一さん関連で

3冊も選んだのは、

わたし自身が受けたインパクトが

それだけ大きかった証しと受け止めて頂ければと。

 

さいごに、2025年読書ふりかえり記事で

工藤勇一さん、由佐美加子さん、苫米地英人さんが

上位3名の著者にランクされたことは、

あくまで結果的にそうなっただけで、

あらかじめ理由があって

このお三方を選んだわけではありません。

 

それでも、平和で持続可能な社会の実現という

明確な理念(最上位目標)を持ちながら

日々実践を重ねておられる方ばかりになったのは、

わたし自身もあとから気づいたんですが、

たぶん偶然ではないのでしょう。

 

そして、寺子屋塾ブログで

こういう形で本についての文章を書きながら、

現状をよく観てそのまま受け入れ

その現状の外側に明確な理念を持つことの大事さ

改めて認識させられたことと、

ジャンル問わず

すべての学問の根底に哲学があり

そのことの大事さに気づかされたことを記し、

その1から20まで、長く続いた

読書ふりかえり記事を閉じようとおもいます。

 

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2025年のふりかえり「年間読書ベスト24」

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工藤勇一&苫野一徳『子どもたちに民主主義を教えよう』
由佐美加子&中村伸也『レゾナント・コミュニケーション』
苫米地英人『その検索はやめなさい』
溝口雅子『Notionなんでも事典』
アルボムッレ・スマナサーラ『ヴィパッサナー瞑想』
前野隆司『人はなぜ「死ぬのが怖い」のか』
小室直樹『数学嫌いな人のための数学』
白石正明『ケアと編集』
フェリックス・ファブリック『本当のわたしを見つけにいこう』
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戸谷洋志『Jポップで考える哲学 自分を問い直すための15曲』
崎谷博征『水と命のダンス 生命の根源に迫る水の驚異的メカニズム』
若杉逸平&うちやまともみ『対話について対話しよう』
星野源『いのちの車窓から2』
山野弘樹『独学の思考法 地頭を鍛える「考える技術」』
成田悠輔『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり政治家はネコになる』
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西川幹之佑『発達障がい児の僕が自己変革できた理由』
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