TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その46)
2026/03/27
2/10からこのブログでは、
TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集を
お届けしているんですが、
1話につき1シーンずつ
順番に引用する形でランダムに紹介していて、
この記事で46回を数えています。
ドラマ『逃げ恥』は
アマプラなどで手軽に視聴できますから、
観たことがない方も、
この記事にアクセスされたことを契機に
是非ご覧になってみて下さい。
一昨日投稿した記事で四巡目が終了し
昨日から五巡目がスタートしているんですが、
今日は第2話からで、後半35分過ぎたあたり、
平匡のマンションのキッチンで
みくりと風見がやりとりしているシーンを。
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〔平匡のマンション・キッチンにて。みくりがパンケーキをつくっている〕
みくり:じゃあ、風見さんは一生結婚しないんですか?
風見:今のところしたいと思えませんね。面倒で。
みくり:面倒?
風見:自分の時間を誰かと分け合うのが煩わしいんです。要するに、自分勝手なんですよ。
みくり:時間を分け合う…もしかしたら風見さんは、相手の気持ちも大事なんじゃないですか?
風見:えっ?
みくり:相手を尊重してるからこそ、自分だけじゃなく、相手の時間も同じように奪いたくない。自分勝手なようで、実は優しいのかもしれませんね。
風見:……。
みくり:あ、すみません、心理学部の癖で…
風見:いえ、興味深い!奥さんは、気になりませんか? 結婚して自分の時間、減ったでしょう?
みくり:うちは時間についてはきっちりしてるんです。だから余計に、お給料に見合った仕事をちゃんとしないとなーって。
風見:給料!?
みくり:あ~っ…たとえです。
風見:〔うなずきながら〕はぁっ。
みくり:アハハハッ…。うちの場合、お互いの役割を全うすればあとは自由なんです。わたしの役割は家事全般、相手に干渉もしないし邪魔もしません。
風見:ドライだなぁ…
みくり:どちらかと言うと…
風見:みくりさんて、メリットのある相手かも。
みくり:ん?
風見:褒めことばです。
みくり:?…(うなずきながら)ありがとうございます。














※TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第2話より
COMMENT:平匡のマンションのキッチンで、パンケーキを焼くみくりと、それを眺める風見が、世間話めいた会話をしている——一見、どこにでもありそうな場面です。けれどドラマ『逃げ恥』は、こういう何気ないシーンの中にこそ、コミカルさとシリアスさがいい具合に混ざっているんですよね。
連続ドラマとしては序盤にあたる第2話ですが、全話をご覧になっている方なら、この二人のちょっとしたやりとりでも「あ、ちゃんと『逃げ恥』だ!」と感じられるんじゃないでしょうか。それだけじゃなくて、あとから振り返ると「ここ、伏線だったんだな」とおもえる要素も、さらっと置かれていたりします。
そもそも、みくりと平匡は契約結婚を公にはしない方針なので、このドラマは「結婚=ロマン」というより、「時間と役割の配分=契約」という形で立ち上がってきます。でも『逃げ恥』が面白いのは、その特殊な設定や現実的な論点を、理屈で説明してわからせようとするのでなく、軽い掛け合いとズレで転がしながら、互いの本音をちらっと見せてくるところなんですよね。
たとえば風見は「面倒」「煩わしい」「自分勝手」と、冷めた自己分析を口にしながら結婚を遠ざけています。ここまでは、よくあるニヒルな言い方にも見えます。ところがみくりは、「相手の時間も奪いたくない=相手を尊重している=優しいのかも」と、善意で解釈し直してみせる。風見の自己像が一瞬ぐらっとする、あの間がいいんです。しかも、この切り返しには嫌味がなく、すっと入ってくる小気味よさがあります。
さらにみくりは「心理学部の癖で…」と添えて、口説きでも説教でもなく、「分析としてうっかり出ちゃった」感じにしてしまう。だから会話は、恋愛トークというより〝観察・分析トーク〟へ自然にスライドしていきます。結婚観って、話し方次第では重くなったり感情的になったりしがちなのに、学問っぽい言い訳を挟むことで、ふっと軽くなって笑いに変わるんですよね。
そして、風見が「奥さんは…」と聞いた瞬間のみくりも面白い。妻の顔をしつつも、思考の軸が「時間管理」とか「労働の対価」みたいな方向に飛んでしまったのでしょう。そこでうっかり「お給料に見合った仕事」という、結婚の会話には似つかわしくない言葉が出てしまう。風見の「給料!?」には、観ているこちらも一瞬ドキッとするんですが、みくりの「たとえです」という素早いフォローで、おもわずクスッとしつつホッとしてしまいます。
合理主義的な風見は、最後にみくりを「メリットのある相手かも」と評します。「褒め言葉です」と補足しているとはいえ、普通に聞くとかなり失礼ですよね。でもみくりも、その前に「互いの役割を全うすればあとは自由」「家事全般はわたしの担当」「干渉しない」と言っている手前があるからか、慎重な顔をしつつも「ありがとうございます」と受け取ってしまう。
この噛み合い方——つまり、「人を好きになる」より先に「条件が合う/合理的」という物差しが前に出てしまう感じが、『逃げ恥』の結婚観(契約・取引・労働)をぎゅっと凝縮して見せているようにおもいます。そしてそれは、野木亜紀子さんが言う「ディスコミュニケーションのドラマ」という側面にも、じわっとつながっていくんじゃないでしょうか。

この名セリフ&名場面集で紹介しているセリフは、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を土台に、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』を参考にしています。また、さらに詳しく知りたいという物好きなお方(笑)は、次の記事をはじめとしてタグ「逃げ恥」を付している過去記事等(とくに2021~2022年に投稿)を適宜アクセスください。
・ドラマ逃げ恥「平匡さんの自由意志です。どうしますか?」(「今日の名言・その13」)
・TVドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」原作マンガ(全11巻)のこと
この続きはまた明日に。(^^)/

