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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その94)

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TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その94)

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集(その94)

2026/05/14

2/10からこのブログでは、

TBSドラマ『逃げ恥』名セリフ&名場面集を

お届けしているんですが、

回を重ねてこの記事が94回めとなりました。

 

今日は、第6話の中盤37分過ぎたあたり、

温泉旅館で朝を迎えたみくりの

モノローグと回想を中心としたシーンを。

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〔温泉旅館の客室・洗面所にて(朝)〕

〔みくりが洗面所の鏡に「あたらしき したぎむなしい 秋のあさ」と指で書いている〕

みくり:〔がっくりとうなだれて〕はぁっ……〔とため息〕

みくりM:(わたしはひとりで、何をやっているのか……)

みくりM:(思いかえせば……)

みくりM:〔第1話のシーンインサート〕(結婚しましょうだの……)

みくりM:〔第4話のシーンインサート〕(恋人になりましょうだの……)

みくりM:〔第5話のシーンインサート〕(ハグをしましょうだの……)

みくりM:〔第5話のシーンインサート〕(ハグの前借りだの……)

みくりM:(どれもわたしの一方的な要求で、優しいから受けとめてくれてるんだろうけど)

みくり:……

みくりM:(いつもいつも、わたしから)

みくり:はぁっ……疲れた!〔鏡に書いた文字を手で消す〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第6話より

 

COMMENT:恋愛ドラマで温泉旅館の朝といえば、たいていは「照れ」「後悔」「余韻」といった、主人公の感情の揺れ動きを描写しながら展開するのが王道でしょう。ところが、『逃げ恥』の場合、だいぶ違うものが映っている気がします。みくりが洗面所の鏡に指で文字を書き、がっくりうなだれ、「わたしはひとりで、何をやっているのか……」と自分にツッコミを入れ始める。ここで特徴的なのは、平匡がその場にいないのに、誰かに責められたわけでもないのに、みくりがまるで誰かに見られているように自分を裁いてしまっているところですね。

 

この場面では鏡の存在が効いていて、目の前に鏡があることで、人は勝手に「見ているわたし」と「見られているわたし」を分離させてしまうのでしょう。しかも、その〝裁くわたし(=見ているわたし)〟が、やたら厳しい第三者の顔をして出てくるところが厄介なんです。「一方的であってはいけない」とか「対等であるべき」とか、規範というか世間の目というものを自分で勝手に作り出して、自分で自分を追い詰めてしまっている。

 

で、思いかえせば……の後は回想に入るんだけど、ここで挿入されるのは、ときめきのダイジェストではなく、「結婚しましょうだの」「恋人になりましょうだの」「ハグをしましょうだの」「ハグの前借りだの」と、みくり発の〝提案の履歴〟ばかり。つまりみくりはここで、恋の想い出を反芻しているのでなく、関係を前に進めるために自分が差し出してきた言葉の一覧を、議事録を読み返すみたいに頭の中で再生している。それで、「どれもわたしの一方的な要求で」「いつもいつも、わたしから」という結論に収束していくわけです。

 

みくりの強みだったはずの「境界線を守る力」が、ここではそのまま疲労に変わってしまう瞬間が描かれている気がします。みくりはずっと、相手を怖がらせないように言葉で整え、正論や手順で安全に運用して、踏み込みすぎない距離を作ってきた。けれど、その〝整える力〟が続くほど、「わたしばかりが設計している」という感覚もまた濃くなるわけで。(その49)の記事で触れた沈黙に注目してきた流れで言えば、ハグの直後の沈黙は、言葉が止まった場所に体温だけが残る瞬間でした。でもこの場面は逆で、体温の余韻を受け止める前に、言葉が走り出してしまい、自分を追い詰めてしまう。沈黙が関係を立ち上げることもあれば、言葉が関係を苦しくすることもある、という反転がここにあります。

 

しかも、みくりが鏡に書いた「あたらしき したぎむなしい 秋のあさ」が絶妙ですね。起きた出来事を、そのまま直視するには痛すぎるから、俳句っぽい形に仮装した上で眺めようとしている。心理学用語で言うなら〝外在化〟、いったん自分の外に出して眺める、というやつです。でも、そうしたところで虚しさは消えず、がっくりうなだれる。これまでみくりが得意としてきた、現実を言葉で整える技が、ここではうまく効かなくなるんですよね。

 

そして最後にみくりは、「疲れた!」と吐き出して、その文字を手で消してしまいます。(その20)の記事で紹介したように、第9話の中盤過ぎにはみくりが「つつましい 女だったら よかったの?」と書いた紙を粉々にちぎるシーンがあるんですが、ここも切り替えというより、どこか〝証拠隠滅〟っぽく見えました。見える形にしてしまった本音を、慌てて消したくなる。でも、目の前の文字は消えても、自分の疲れた感じは簡単には消えない。だからこの場面は、「自分の視線で自分を責めてしまう」ことの苦さと、そこからどう抜け出すか、という次の課題を立ち上げる踊り場として、やけに決定的に響くんじゃないかとおもいました。

 



この名セリフ&名場面集で紹介しているセリフは、2020年に放映された『逃げ恥・ムズキュン特別編』を土台に、野木亜紀子さんの『逃げ恥シナリオブック』での記述を参考にしています。なぜTVドラマ『逃げ恥』のシーンを毎日投稿している理由については、この連投記事の初回として書いた(その1)の記事のコメントをお読みください。

ちなみに、4/10に投稿した(その60)の記事と、4/27に投稿した(その77)の記事には、とても重要なことをコメントしましたし、それまでに投稿した記事のINDEXと、逃げ恥関連の投稿記事リンク集を載せています。未読記事がある方は是非そちらから参照ください。

 

ではまた明日に!(^^)/

 

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