2022年のふりかえり「年間読書ベスト24」(その5)
2023/01/05
今日も2022年のふりかえり
「年間読書ベスト24」の続きを。
総説とタイトル一覧は(その1)に、
①〜⑥へのコメントは(その2)に
⑦〜⑫へのコメントは(その4)に
⑬〜⑱へのコメントは(その3)に書きました。
今日の記事では⑲〜㉔の6冊へコメントを書きます。
アンラーン、アンラーニングについては、
2/18の記事に詳しく書いたんですが、
本書はその記事内で紹介した1冊でした。
アンラーニングの基礎知識はもとより、
具体的アプローチまで網羅され
全体像をつかむのに適切な研究書といえます。
著者は経験学習に関する研究を多くなされていて、
随所に挿入されている図がとてもわかりやすく、
細かな配慮がなされているように感じました。
⑳井上正保編著『健康不安と過剰医療の時代 医療化社会の正体を問う』
本書の初版は2012年で
編著者の井上正保さんは社会学を専門とする研究者。
コロナ禍で浮き彫りになったのは、
まさに本書が指摘している
煽られた健康不安と過剰医療であり、その背景にある
ムラ社会という強固な政治的利権構造ではないかと。
10年以上前に出版された本書ですが、
いま読んでもまったく古さを感じなかったというのは、
当時より社会状況が変わっていないどころか、
むしろ後退しているからかもしれません。
㉑松尾匡『自由のジレンマを解く グローバル時代に守るべき価値とは何か』
本書を手に取ったきっかけは、
「自己責任、自己決定」という言葉の受け止め方、
解釈が、欧米と日本とではかなり違うと
感じていることからでした。
自由と責任について考えたいときに、
本書で示された指針はきっと役立つことでしょう。
もとになったblog記事はネットでも読めます。
本書の第1章はこちら。
㉒為末大『為末メソッド 自分をコントロールする100の技術』
為末さんは現役時代、日本人のアスリートには珍しい
コーチをつけないセルフコーチングを実践された方。
そういうことからも、彼の発する言葉と
セルフラーニングスタイルの寺子屋塾の考え方とは
とても親和性が高いわけですが、
2021年3月に初版が出された本書は、
著書が多く〝走る哲学者〟とも称される為末さんが
ご自身も「僕の言葉の集大成」と太鼓判を押す1冊。
あなた自身の「メソッド」を見つけてください。
2022年夏から塾生のひとりが
声紋分析のセッションを始めたんですが、
著者の柊木さんはそのソフトを開発した人物。
素粒子や原子核を専門とする物理学者であり、
心理学者でもある著者の言葉は、
科学的視点と文学的、詩的表現が
バランスよく融合しているように感じました。
声紋分析については、
改めてblog記事でご紹介するつもりですが、
行動基準が「自分軸」「相手軸」「社会軸」と
3つに分かれているところなど、
吉本隆明さんの『共同幻想論』の見方にも
つながっているようで面白いです。
科学というと論理的なイメージが強いですが、
あくまでひとつのイメージにすぎず、
科学には「ゆらぎ」「非線形」「複雑系」という
ワードもあることも忘れないようにしたいものです。
世に問題解決を解く本が数多あるなか、
このタイトルに驚く人は少なくないことでしょう。
さて、そもそも〝問題〟とは何なのでしょう?
おそらく、問題にもいろいろあって、
解決することが必要とされる問題が存在する一方で、
放っておいて構わないような問題も
あるはずなんですが、
それなのにわたしたちは、どんな問題に対しても、
それを解決しなければいけないという
ある種の強迫観念に
取り憑かれているのかもしれません。
問題を発見しようとする姿勢は大事であっても
実は、問題を捏造することと
紙一重のようなところがあって、
わたしたちは本来、何でもないところまで、
勝手に問題視して、
新たな問題をつくり出してしまっていないか、
もっと自覚的になる必要があるでしょう。
また、どんな問題であっても
それを解決できると見做す心理の裏側には
人間のおごりが隠れているのではないか・・・。
本書はそんなさまざまなことを
改めて考えさせてくれた貴重な1冊でした。