ベートーヴェン「つねに行為の動機のみを重んじて帰着する結果を想うな」（今日の名言・その64）
2023/08/07
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つねに行為の動機のみを重んじて、 帰着する結果を想うな。 報酬への期待を 行為のバネとする人々の一人となるな。
……精励して義務をはたせ。 好かれ悪しかれ、 結果と帰着とについての考えを一切逐い払え。 なぜなら、このような淡泊な沈着だけが、 精神的なるものへの熱中であるから。 ただ叡智のみを避難所とせよ。
……まことの賢者は この世における結果の善悪を顧慮しない。 それ故、お前の理性を そのように訓練することを努めよ。 理性のそういう訓練は、 人生における貴い芸術の一つだ。
※L.V.ベートーヴェン（1770〜1827・ドイツの音楽家）『手記』(1815年)より
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今日の名言は、クラシック音楽の作曲家で
楽聖とも称されているベートーヴェンの言葉を
とりあげてみました。
訳文が戦前1938年に出版された岩波文庫版の
片山敏彦さんの翻訳によるもので
言い回しがやや古めかしい感じはしますが、
使われている言葉はいたって平易なものです。
ひとことで言えば、このblogではしばしば登場する
大脳思考に基づく企図や作為からの
脱却を説くものですから、
言葉についての説明は必要ないでしょう。
いまに意識を集中して最善を尽くせば、
自ずと結果は表れるわけですから、
やる前、やってる途中に
その結果を意識するというのは、
結局のところ必要のない〝余計な思考〟なわけで。
らくだメソッドのプリント学習にたとえるなら、
プリントをやっている最中に
ストップウォッチをチラ見するようなもので、
チラ見すればするほど
時間が遅くなるのは必然の結果です。
方条遼雨さんは2020年に出された著書
『上達論 基本を基本から検討する』のなかで、
変わりかけの信号にたとえて、
「間に合うだろうか」と
信号をチラチラ見ながら向かうのと
「間に合わせる」事に専念して
信号の向こう側を目指すのでは、
「間に合う」可能性が
大きく変わると書かれていたんですが、
ほぼ同じことですね。
ベートーヴェンは20代後半頃から
音楽家としては致命的とも言える耳の病に悩まされ、
32歳のときには、前途を悲観して自殺を考え
遺書まで書いたこともありました。
有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」です。
でも、彼は踏みとどまりました。
冒頭に紹介した言葉が書かれた１８１５年頃には、
聴力をほぼ完全に失ってしまっていたんですが、
彼にとっては、未来において、
自分がつくる音楽を
人々がどのように評価するかとか
音楽家としての名声が
得られるかどうかとかいった問題よりも、
いま、目の前のことに最善を尽くして
自分に納得のいく音楽を創り出すことが
大切だとおもえたからこそ、
この言葉を書けたのだとおもうのです。
ベートーヴェンは、ピアノのためのソナタを
３２曲のこしているんですが、
なかでも「悲愴」「月光」「熱情」「テンペスト」
といった副題をもつ有名な作品は
きっとどこかで聴かれたことがあるでしょう。
ベートーヴェンのピアノソナタのなかでは、
それほど有名ではないのですが、
耳が全く聞こえなくなっていたと言われる
１８２１年に作曲されたピアノソナタ第３１番が
わたしが一番好きなピアノソナタです。
イタリアのピアニスト
マウリツィオ・ポリーニが２０１９年に演奏している
YouTube動画を貼り付けておきますので、
聴いてみて下さい。
Beethoven Piano Sonata No 31 A♭ major Op 110 Maurizio Pollini
※冒頭の画像はトーマス・バイルレの
リトグラフ作品で、
こちらのwebsiteより拝借しました
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